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まずは名物メニューから!
では「創和堂」がなぜ人気なのか、まずは料理から解明していきましょう。
こちらでは気になる料理を組み込むことができるおまかせコースもありますが、多くの客はアラカルトで食べたいものを食べたいだけ食べて楽しんでいます。
酒井さんの出身である福岡をはじめとする九州の食材を主にしたメニューは、つまみから〆のごはんまで全制覇したくなる魅力的なものばかり。
ジューシーな極厚の「ハムカツ」
誰もが何度食べても毎回頼んでしまうという「雲仙ハムカツ」。この雲仙ハムも長崎県島原半島の名産品です。ハムというよりソーセージにも似た味わいで、これだけ厚みがあるのに歯切れがよくとってもジューシー。衣はサクサクで一度でも食べたら間違いなくやみつきです!
一人飲みにおすすめな「わっぱ盛り合わせ」
ちょこちょこつまみたいなら「わっぱ盛り合わせ」がオススメです。小鉢メニューの中からいくつかおまかせで盛り合わせていて、「おばん菜」と「酒肴」の2種類があります。写真は「おばん菜」で、本日は「秋野菜といくらのお浸し」「生ハムと柿、しめじの白和え」「落花生塩茹で」の3品。
お浸しにはいくらと金時草、そしてアミタケ、キクラゲ、シイタケが優しい味わいの出汁と和えてあり、生ハムと柿の白和え、ホクホクの茹でた落花生と、どれも組み合わせの妙がキラリと光る逸品です。
うまみに力強さを感じる「黒岩土鶏のつくね」
こちらのつくねはちょっと変わり種。宮崎県の「黒岩土鶏」を丸鶏から捌いてレバー、モモ、胸肉を挽肉にし、鶏脂と雑穀とネギを混ぜて成形します。放し飼いで育った鶏は歯ごたえがしっかりしている上に、雑穀を加えているのでとにかく食感が楽しい! その後、じんわりと滲み出る肉のうまみを噛みしめるのです。
卵ももちろん「黒岩土鶏」のもの。弾けんばかりの黄身を箸で割ってつくねにつけてみると、育った環境をイメージさせるような力強さを感じます。
これに合わせるのは自然派の白ワイン。早くから和食とヴァン・ナチュールとのペアリングを提案してきた酒井さんだけに、食事に寄り添うワインが揃っています。
ユニークでおいしい創作メニュー
海老出汁と白味噌でつくる、濃厚な「グラタン」
定番メニューのグラタンも、酒井さんの手にかかれば創造性にあふれる忘れがたい料理となります。
海老の香り高いベシャメルソースを纏ったタマネギとパプリカ。トッピングには、上質な雲丹。たった直径10cmほどの器の中に、ささやかな贅沢が詰まっています。
味の要となるベシャメルソース作りは、まず大きな鍋いっぱいのタマネギとパプリカを1/10くらいの嵩になるまでひたすら炒めます。1時間ほどかけてじっくりと火を入れることで香りと甘みが立つそうですが、大量のタマネギとパプリカを焦がさずに炒めるのは、プロの料理人でもなかなか骨が折れる作業です。
そこに海老で取った出汁と白味噌を入れることでさらなる香りと甘みが加わり、コクも出ます。チーズを使わずにこれだけ濃厚なグラタンになるのは、費やした時間と努力の賜物。器の中で和と洋が溶けあっていくような、身も心も骨抜きにされるひと皿です。