〈ゆるやかなヴィーガン食の始め方〉
肉や魚、さらに卵、乳製品、はちみつも口にしない「ヴィーガン(完全菜食主義者)」。なんとなく知っているけど、自分とは関係ないと思っている方も多いのでは? しかし、日本でもヴィーガン料理を提供するお店が増えてきたことで、「日本の外食産業における新時代が到来している」と語るのは、タベアルキストのマッキー牧元さん。
さあ、どんどん身近になってきたヴィーガンについて、マッキーさんと一緒においしく学びましょう!
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Vol.2「FARO(ファロ)」|東京・銀座
ヴィーガン料理は、もはや動物を食べないという主義や選択ではないのかもしれない。ヌーベルキュイジーヌや分子ガストロノミーと同じように、食材に新たな息吹を吹き込み、おいしくさせる考え方なのである。
簡単にいえば、ヴィーガンというおいしい料理法が育ち、選択できる時代がやってきた。その機運を実感したのは、銀座「FARO」で能田耕太郎シェフのヴィーガンコースを食べてからである。
今まで数多くのおいしいヴィーガン料理を食べた。だが、こんなにもエレガントさに満ちた料理には出合ったことがない。
玉ねぎやレンコン、菊芋やジャガイモといった野菜の、今まで気がつかなかった魅力に迫り、気分が健やかになると同時に、ときめきがあるのである。
例えば、玉ねぎの料理を食べてみよう。まるごとの玉ねぎをオーブンで3時間焼き、取り出したら一枚一枚剥がして人参のペーストを詰め、ヘーゼルナッツとパン粉を振ってさらに天火で焼いて、ヘーゼルナッツのソースと玉ねぎの葉から抽出した緑のオイルをかけた皿がある。
甘いが、よくあるような玉ねぎを長い時間加熱して生まれる、濃密な甘みではない。穏やかな、まるで人間の手がかかっていないかのような伸びやかな甘みが、自然な玉ねぎの甘みと響き合うのである。ソースと合わせれば、その甘みがヘーゼルナッツの甘い香りと共鳴して優美な気分となる。玉ねぎ、人参、ヘーゼルナッツだけなのに、このエレガントさは素晴らしい。
こうして能田シェフの才が、野菜やナッツ、キノコ、穀物類に輝きを与えて、胸をざわつかせる料理が次々と出される。
それでは、ランチのヴィーガン料理コースの詳細をご紹介したい。