ランチコース「ヴィーガン」
ランチコースの「ヴィーガン」8,000円。まずは、3種の「アミューズ ブーシュ」から。
「レンズ豆野菜ブイヨン アマランサス ペンタス」は、豆の優しい甘みに心が安らぐスープで、ケイパーのアクセントが心憎い。
「野菜のピューレとバジルのムース」は、野菜とバジルをムース状にして固めたもの。バジルの爽やかな香りが食欲を目覚めさせる。
「ビーツとポルチーニのタルト」は、ビーツのジュースとポルチーニを発酵させ、刻んだ大根などを入れ込んだ料理。生地はトマトなどを混ぜ込んだもので、野菜の淡い旨味があり、発酵させた上の赤い具材は、発酵ならではの奥深い味わいがする。その濃淡がいい。
冒頭で紹介した「能登玉葱のオーブン焼き ヘーゼルナッツソース」。素晴らしいが、玉ねぎを玉ねぎ以上のうまさにはしないという、正しい意思がある。
「しろいし蓮根のラヴィオリ 野菜のコンソメ仕立て」。レンコンをニンニクと炒めて、ピューレにし、細かく刻んだものと粗く刻んだものを有明海苔とともに混ぜ込んだラヴィオリと、水を使わない野菜のコンソメによる料理。
レンコンが持つふくよかで慈愛を感じる甘さがあり、そこへ海苔がかすかに香る。里と海のつながりを感じさせる料理である。コンソメは太い甘みがあって、ラヴィオリと一緒に食べると、不思議なことにレンコンの穏やかな甘味がさらに引き立つ。
「大根もちのソテー 野菜のデミグラスソース」は、5種類の大根をあわせ、タピオカ粉と蒸した餅のソテー。もっちりとした食感に静かな甘さが広がる。
野菜のデミグラスソースは、コーヒー醤油がアクセントで微かに香る。普通のデミグラスソースのように圧倒的でなく、ゆっくりとうまみが花開いて、大根の甘さに寄り添う。周囲はごぼうのパウダー。
「ペルー産カカオとそのフルーツのソルベ」。カカオと炭酸水のみのアイスというが、クリームを使ったように、濃厚で香り豊か。カカオの白い綿を搾った酸味のあるアイスと、栗をチョコレートでコーティングしたものや栗のクリームが添えられる。
以上、食べているうちに、もうヴィーガンという意識が薄れていく。ただただおいしく、美しく、どの料理にもときめきと華やぎ、そして新しい発見がある。
そして思う、おいしい料理とは精神を充足させるものだということを。
スペシャリテやノンアルコールペアリングも魅力的
銀座8丁目の東京銀座資生堂ビル10階にある、イノベーティブ・イタリアン「FARO」。地中海をイメージしたというブルーを基調にし、高い天井の下でゆったりと間隔を取られた客席で、優雅な時間を過ごすことができる。「ミシュランガイド東京 2021」にて一つ星を獲得。
2017年アブダビで開かれた「テイスト・ザ・ワールド」の最終コンペティションに、当時ローマの一つ星レストラン「bistrot64」のヘッドシェフだった能田氏は、ローマ代表として参加。スペシャリテの「じゃがいものスパゲッティ」で優勝した経歴を持つ。
白桃をベースに紅葉・蝋梅花(ろうばいか)・梨・昆布茶を混ぜたドリンクや、微発酵させた山葡萄と大葉を混ぜた飲み物などによるノンアルコールペアリング(昼3,000円)も素晴らしい。
また、昼のコースには含まれないが、スペシャリテの「じゃがいものスパゲッティ」や「自家製ヴィーガンチーズ」の驚愕の味も試していただきたい。
※価格はすべて税込・サービス料別