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お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第24回は、横浜市営地下鉄グリーンライン沿線のスイーツスポットを紹介します。前編は、日吉駅、北山田駅、センター北駅のお店をチェック!
【猫井登のスイーツ探訪24・前編】〜横浜市営地下鉄グリーンライン沿線のスイーツショップ巡り(日吉駅、北山田駅、センター北駅)〜


食べログマガジン編集部
今日はひとつの街ではなく、横浜市営地下鉄グリーンライン沿線のお店を巡るということですが、この沿線はどんな感じのお店が多いのでしょうか?

猫井先生
有名店で修行された方々が独立して開かれたお店が多いですね。今、まさしく旬を迎えているシェフたちのお店が集結! といった感じでしょうか。

食べログマガジン編集部
つまりスイーツ界の“いま”が知れるということですね! ワクワクしちゃいます!

猫井先生
では、早速1軒めから行ってみましょう!
【1軒め】「ルメルシエ」


猫井先生
こちらは、三本陽平シェフが2017年に開かれたお店です。元々お父様が洋食屋さんを開かれていたこともあって食に興味を持ち、ケーキやチョコレートがお好きだったことから、パティシエになるのが子どもの頃からの夢だったそうです。

食べログマガジン編集部
子どもの頃からの夢を実現されているなんて素敵ですね! ということは、お店全体としては、THEケーキ屋さんという雰囲気なのでしょうか?

猫井先生
ケーキも揃っていますが、大学卒業後にフランス料理店「パリの朝市」でお菓子作りやパン作りの基礎を学ばれた後、「テオブロマ」「ショコラベルアメール」「ミッシェル・ブラン」などで修行されたので、こちらもチョコレートが主体のお店となっています。ケーキのショーケースとは別に、ボンボンショコラのショーケースが設けられているんですよ。


食べログマガジン編集部
チョコレート屋さんによるケーキ屋さんという感じですね! となると、先生のおすすめはやはりチョコレートですか?

猫井先生
そうですね。やはり、チョコレート系のケーキとボンボンショコラが特におすすめです。例えば、ビターチョコ系のものが良ければ「エクアトゥール」はいかがでしょう? エクアドル産のビターチョコとコーヒーのミルクチョコムースを合わせたもので、かなり濃厚な味わいです。


食べログマガジン編集部
わぁ〜、トップのテリっとした輝きが美しいですね。これはしっかりとチョコレートを味わいたいときに食べたくなりそうです! 逆に少しあっさりめのチョコレートケーキが食べたいときのおすすめはありますか?

猫井先生
そうですね。ミルクチョコ系のケーキで、ナッツとキャラメルを合わせた「プレタンチーヌ」がいいのではないでしょうか。珍しいという点では、ルビーチョコレートを使った「モン・リュビ」もありますよ。


食べログマガジン編集部
ルビーチョコレートって数年前からジワジワ話題になっているチョコレートですよね?


猫井先生
ダーク、ミルク、ホワイトに続く第4のチョコレートとして話題になっている、天然のチョコレートでありながら、ピンク色でベリーのような風味があるチョコレートです。スイスの業務用チョコレート会社バリーカレボー社が2017年9月に発表した商品で、日本では2018年の1月くらいから、ルビーチョコレートを使用した商品が流通し始めました。


食べログマガジン編集部
ピンク色のモンブランって珍しいですし、見た目も可愛いから手土産としても喜ばれそうですね。
※価格はすべて税込

猫井先生
さて、次のお店はグリーンラインで「北山田駅」に移動します。
【2軒め】「スイーツガーデン ユウジアジキ」


食べログマガジン編集部
有名な安食シェフのお店ですね!

猫井先生
すでにご存じの方も多いかと思いますが、改めてご紹介しますね。安食シェフは1967年生まれで、当初は料理人を目指して調理師の専門学校に入学されますが、製菓実習で作ったシュークリームのおいしさに感動し、製菓の道に進まれます。東京・大泉学園の洋菓子店「ら・利す帆ん」、「横浜ロイヤルパークホテル」などで修業され、1996年にはベルギーで開催された「マンダリン・ナポレオンインターナショナル」で日本人初の優勝を果たされます。1998年から自由が丘「モンサンクレール」のスーシェフ、2001年から約7年間、たまプラーザ「デフェール」のシェフパティシエを務められ、2010年にこちらのお店を開業されました。


食べログマガジン編集部
お店も広々として風格がありますね。左側に生菓子のショーケース、右側が焼き菓子などの売場になっているんですね。どれにしようか悩みますねぇ〜。


猫井先生
まずは、有名な「安食ロール」はマストでしょう!

食べログマガジン編集部
そうでした! せっかく来たなら「安食ロール」を買って帰らないと! どこにあるのでしょう??


猫井先生
生菓子のショーケースの右側、レジ横にありますよ。生クリームとカスタードを巻いた、いわゆる「安食ロール」のほかに、毎月のロールケーキがあります。7・8月は「栗とほうじ茶のロール」でした!(9月は「ピュアメープルロールケーキ」)


食べログマガジン編集部
これは最高のお土産になりそうです! ほかにはどんなケーキがおすすめですか?

猫井先生
まだ暑さを感じる日も多い時期には「レモンのショートケーキ」はいかがでしょうか。イタリアンメレンゲと酸味のあるレモンカスタードで、タルトシトロンのショートケーキ版という感じですね。


食べログマガジン編集部
聞くだけで爽やかなテイストが口内に広がるようです!

猫井先生
あとは、味わいの異なる「アールグレイ」、抹茶とピスタチオの「ミラネーゼ」などはいかがでしょうか。


食べログマガジン編集部
お茶系のケーキ、いいですね! 秋になると無性に食べたくなるんですよね。


猫井先生
「アールグレイ」は、サブレの上にショコラのムースを組み合わせた紅茶の香り豊かな一品です。「ミラネーゼ」は、抹茶が香るピスタチオ生地にチョコレートムースを合わせたもので、中からベリーのクリームソースがとろーりと流れ出します。
※価格はすべて税込

食べログマガジン編集部
ん〜、どれもおいしそうです! 猫井先生がグリーンライン沿線がアツいと仰る意味がだんだんと分かってきました。

猫井先生
次のお店はグリーンラインで「センター北駅」に移動するのですが、安食シェフが前にいらっしゃった「デフェール」も、これから行く「ベッカライ徳多朗 Yotsubako」も、元々東急線「たまプラーザ駅」近くにあって、安食シェフのお店に行った後に徳多朗でパンを買って帰るというのが当時のパターンだったのですが、奇しくも今日も同じ順番になりました。さぁ、着きましたよ!
【3軒め】「ベッカライ徳多朗 Yotsubako」


食べログマガジン編集部
カフェスペースも広々として、大きくて明るいお店ですね! こちらのオーナーの徳永久美子さんは、本も出されていて有名ですよね。

猫井先生
こちらのお店は、徳永淳さん、久美子さんご夫妻で営まれているお店です。ご主人の淳さんは、元々製油会社にお勤めになっていましたが、28歳のときに退職され、「青山アンデルセン」などで修行されています。一方、奥様の久美子さんは、大阪の辻調理師専門学校で日本料理を専攻され、日本料理部門で大阪代表に選ばれ、農林水産大臣賞を受賞されるほどの腕前だったそうですよ。

食べログマガジン編集部
奥様は日本料理がご専門だったのに、なぜパン屋さんに?

猫井先生
卒業旅行でヨーロッパを巡られ、ヨーロッパのパン文化、パンのおいしさに大きな感銘を受けられたそうです。学校卒業後、料理教室の助手を経て青山アンデルセンに入社され、今のご主人と意気投合し、1990年にお二人でたまプラーザにお店をオープンされたわけです。パンのフィリングは、主に奥様が担当されているようですね。

食べログマガジン編集部
なるほど! ご経歴を知ると、こちらの「あんぱん」や調理パンがおいしい理由が分かりますね。先生のおすすめはどんなパンですか?


猫井先生
お菓子系でいくと、やっぱり、北海道有機小豆を丁寧に練り上げたつぶ餡を入れた「あんぱん」でしょうね。甘さもちょうど良く、パン生地ともよく馴染んでいて、こちらに寄ったら必ず買うパンですね。


食べログマガジン編集部
実は私もこちらのあんぱんのファンです! あんこのしっとり感がたまりません。

猫井先生
ほかにも、デニッシュ系では「シンプルクリームチーズ」が好きですね。ベイクドクリームチーズケーキのような感じで、昔からあるロングセラーです。あとは、「アメリカンチェリー」のデニッシュは、フォレノワール(黒い森)という、サクランボとチョコレートのケーキを彷彿とさせるパンです。


食べログマガジン編集部
クリームチーズもチェリーも、デニッシュと相性抜群ですもんね!

猫井先生
そして、「チャイロール」はあられ糖を上にのせた、ちょっとスパイシーなパンで面白いですよ。
※価格はすべて税込
後編もスイーツ名店が続々!

食べログマガジン編集部
前編は、この沿線のスイーツの実力をひしひしと感じるお店ばかりでしたが、後編ではどんなお店を教えてもらえるのでしょうか?

猫井先生
後編では、「センター北駅」「センター南駅」「中山駅」のスイーツの名店をご案内する予定です。こちらもお楽しみに!
※時節柄、メニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※本記事は取材日(2020年8月17日)時点の情報をもとに作成しています。
撮影・文:猫井登