〈サク呑み酒場〉

今夜どう? 軽〜く、一杯。もう一杯。

イマドキの酒場事情がオモシロイ。居酒屋を現代解釈したネオ居酒屋にはじまり、進化系カフェに日本酒バー。どこも気の利いたツマミに、こだわりのドリンクが揃うのが共通点だ。ふらっと寄れるアフター5のパラダイスを、食べログマガジン編集部が厳選してお届け!

老舗ホルモン焼店に思いを馳せて

年季の入った店内で煙をもくもく上げながら、ホルモンをふっくら、こんがり焼き上げて、ハフハフ、ホフホフ、満面の笑顔で食らう。うん、旨い! さらに、ハイボールをグイッと喉に流し込めば、これ以上の幸せはあるだろうかと感じてしまう。そんな至福のひとときだ。

老舗ホルモン焼店で見られるこうした光景に憧れながらも、どこかハードルの高さを感じてなかなか足を運べない人は、けっこう多いのではないだろうか? だがどんな老舗も、最初はあくまで普通の新店。そう考えると昨今、新しく誕生した店も、将来どんな老舗に成長するかわからない。イマドキの若者客が、イマドキのホルモン焼店で年輪を重ね、気づけば老舗と呼ばれる店に……。そんな思いを馳せるのも悪くない。

どんな老舗も最初は新店。長く親しまれれば、やがて老舗と呼ばれる店に。

高級焼肉店が手がけたカジュアル業態の店

2019年11月29日。「いい肉の日」に開業した東京・四谷の「四谷ホルモン 大貫」は、まさにイマドキの若者がサク呑みするのにぴったりなホルモン焼店だ。同店は新宿の「焼肉 大貫」の2号店である。「焼肉 大貫」のメニューは10,000円~15,000円の3種のコースのみで、高めのボトルワインも充実。客席は6人がけ席が4卓のみと、開業4年で早くも予約必須の人気店に成長している。

 

店の歴史は浅いが、その根底にあるのは静岡・浜松の老舗焼肉店の味。そこに修業に入って味を受け継ぎ、東京でも楽しめるようにしたのが「焼肉 大貫」である。メニューは正肉メインで、客単価は15,000円ほど。2号店を出すにあたり、次はホルモンを売り物にしたカジュアルな店にしたいと、「四谷ホルモン 大貫」を開いた。客単価も4,000~5,000円と、約1/3の手軽さだ。

1号店ほど少なくないが、それでも客席は6人がけテーブルが7卓のみ。予約が確実!?

そのままで、つけダレで、“味変”で2度楽しむ

コースオンリーの「焼肉 大貫」とは逆に、「四谷ホルモン 大貫」はアラカルトのみでメニューを構成。「焼肉 大貫」では扱わない豚ホルモンも提供し、牛ホルモンは「ハツ(心臓)」や「ハラミ(横隔膜)」など計10種。豚ホルモンは「カシラ(こめかみ)」や「トントロ(首)」など計6種。そして盛り合わせの「秘密肉盛り(数量限定)」、「ホルモンMIX(3種類)」の小と大が、同店の焼肉メニューである。

単品メニューは1人前100~120gの分量で、老舗ホルモン焼店のように気どりのないステンレス皿に盛りつける。例えば、牛の「レバー(肝臓)」はゴマベースのもみダレでよくもんで味をなじませ、皿に盛ってもみダレをかけ、彩りに万能ネギをちらす。レバーがひたひたになるほど、たっぷりかけたもみダレはビジュアル的にも美しく、焼く前から大いに食欲をそそられる。

タレ焼きのもみダレは、ゴマベースのもの。よくもんで味をなじませる。

火を通しすぎないように気をつけて、いいあんばいに焼き上げた「レバー(肝臓)」は、何もつけずにそのまま食べてもおいしいが、醤油ベースのさっぱりしたつけダレで食べても、これまたうまい。もみダレが甘めのため、つけダレにつけることで味の変化が楽しめて、2度おいしい。そのため、ちょっと得した気分になれる。

「レバー(肝臓)」590円は、もみダレをかけてひたひたに。何とも食欲をそそられるビジュアルだ。

ネギ塩ダレのホルモンもうまい!

牛の「シマ腸(大腸)」はネギ塩ダレでもんでいる。ネギ塩ダレとは、長ネギとゴマ油などを攪拌して乳化させたタレである。「シマ腸(大腸)」も何もつけずそのまま食べてもおいしいが、塩と各種香辛料を合わせたミックスソルトと、辛味噌が付くため、お好みでこれらをつけて味の変化を楽しみたい。どろっとしたネギ塩ダレがシマ腸を覆い、その存在感のある見ばえが実によく映える。こちらもビジュアル的にそそられるものがあり、おいしさへの期待感がいやが上にも高まっていく。

「シマ腸(大腸)」590円。乳化させたネギ塩ダレが、何ともいえないおいしさを感じさせる。

高級店の正肉をお手頃価格で楽しめる

「四谷ホルモン 大貫」の売り物はホルモンだが、正肉の焼肉メニューもしっかり押さえている。それが、「秘密肉盛り(数量限定)」だ。なぜ、「秘密」なのかというと、盛り込む内容が固定でなく、どの肉が入るかわからないため。盛り込むのは牛の小分割部位で、ザブトン、ランプ、マルカワのときもあれば、イチボやクリミなどのときもあり、常時3~4種の正肉が入る。

実はこの正肉、「焼肉 大貫」で使用する肉の端材を上手に活用したもの。どんなにきちんとカットしても肉ごとに若干形が異なるため、どうしても形が揃わない部分は出てくる。だが、味は同じである。そこで端材を盛り合わせ、「四谷ホルモン 大貫」でも手頃に楽しめるようにしたのだから、これはうれしい。数量限定のため当日のメニューにあったなら、ぜひとも注文したい商品だ。

「秘密肉盛り(数量限定)」2,400円。牛の小分割部位を3~4種盛り込む。

肉がおいしいと、ご飯もすすむ、酒もすすむ

おいしい肉を引き立てるのは、おいしいご飯。同店ではご飯に用いる米も厳選し、こだわりの米づくりを行なう新潟の「かやもり農園」からコシヒカリを仕入れ、ふっくら、つやつやに炊き上げて提供する。サク呑み利用とはいえ、タレのうまい焼肉を注文したなら、やっぱり「ライス」も頼んで、“焼肉オンザライス”といきたいもの。

こだわりの米を用いた「ライス」大250円も頼んで、“焼肉オンザライス”を楽しみたい。

そして、ご飯がすすめば肉もすすむ。肉がすすめば酒もすすむ。アルコールは焼肉と相性がよく、口の中をさっぱりできるビール、ハイボール、サワーが特に人気で、肉をジュ―ジュー焼きながら、グビグビ喉をうるおしたい。また、肉を使った一品料理で、「タンシチュー」「ハチノス蒸し」「カレーもつ煮」などもあり、焼肉の合間につまむのもオススメだ。

「メガ角ハイボール」750円を片手に焼肉を楽しむ客も多い。

同店ではサラダも立派な酒のつまみとなる

ガッツリ肉を食べたなら、体がどうしても同じくらい野菜を欲してしまう。そんなときに重宝するのが「きゃべつ盛り」。豪快にキャベツ1/4個をせん切りにし、塩ドレッシングをかけて韓国海苔をちらしたメニューである。韓国海苔はゴマ油と塩がきいており、全体によく混ぜるとトッピングというより、キャベツに味をプラスする調味料的な役割を果たす。ついつい箸がすすむクセになる味で、サラダなのに酒が飲みたくなる、何とも罪作りな一品だ。

「きゃべつ盛り」300円。塩味がきいて、思わず酒が飲みたくなる。

同じくサラダの立ち位置ながら、つまみの役割も担うのが「ミミガーサラダ」だ。これは、オニオンスライスと水菜をこんもり盛った上に、ミミガーのスライスを被せるように盛りつけ、ゴマドレッシングをかけたもの。コリコリした食感のミミガーで野菜を巻いて食べれば、サラダなのになぜか酒が欲しくなる。なんだこの、何を食べても酒がすすむ、まるでマジックのような商品構成は。「四谷ホルモン 大貫」はイマドキの若者客も気後れすることなく楽しめる、いまという時代の魅力を捉えた、何とも“ニクい”サク呑み酒場である。

「ミミガーサラダ」600円。オニオンスライスと水菜に、ミミガーのスライスを被せたもの。これまた酒がすすんで仕方ない、つまみにもなる魅力のサラダ。
写真左から、副店長の植松郷さん、店長の鈴木大悟さん。
【本日のお会計】
■食事
・レバー(肝臓) 590円
・シマ腸(大腸) 590円
・秘密肉盛り(数量限定) 2,400円
・きゃべつ盛り 300円
・ミミガーサラダ 600円
・ライス 大 250円

■ドリンク
・メガ角ハイボール 750円

合計 5,480円

※価格はすべて税抜

 

取材・文:印束義則(grooo)
撮影:松村宇洋