【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレー#97】「ラッフルズ カリー」

スパイスカレーの大流行により、見た目が華やかなカレーが全国的にどんどん増えています。色とりどりの副菜、カレーの色味のコントラスト、SNS映えを狙った立体的な盛り付け……確かにそのようなカレーは見て楽しいですしおいしそうにも思えるでしょう。しかし、最近は見た目だけで味がともなっていないカレー​が増えてきてしまっているように感じますし、ある人気店のカレーに似ていると思えるカレーも増えています。​

そもそもスパイスカレーとは既存のカレーに対するカウンターカルチャー的存在であり、元々はメジャーに対するオルタネイティブな​存在だったわけです。しかしオルタネイティブの流行によってむしろオルタネイティブがメジャーになってしまったのは音楽業界の歴​史を見ても繰り返し起こっていること。​ちょうど昨今のカレー業界においても共通して言えると思います。そんな今だからこそ、メジャーでもなければオルタネイティブでもないカレーが重要なのではないかと思うのです。​

 

もう少し音楽の話をしましょうか。例えば、大ヒットを飛ばして国民的スターになったわけではなくとも、固定客をしっかりと掴んで一定の​人気を長年保ち続け、評価され続けているアーティストがいます。オリコンチャートの上位には出てこないものの、定期的に中規模の​会場のコンサートが満員となり、グッズもしっかり売れるような。​

そしてカレーにおいてもそのようなお店があるのです。TVに出ることや行列ができることは少ないかもしれませんが、お店に行ってみ​ればいつも盛況で、そのお客さんのかなりの割合が常連さんというような。​今回ご紹介する仲御徒町の「ラッフルズカリー」は、まさにそのような、メジャーでもオルタネイティブでもないお店です。​

 

店内はカウンターのみ。いつ行っても程良くお客さんが入っています。その客層がまた幅広いのがこのお店の特徴と言えるでしょう。​昔ながらのカレーライスが好きそうなサラリーマンから、今どきのカレーが好きそうな若い女性まで、真逆と思えるどちらの層にも確​固たるファンを掴んでいるのです。

マトンカリーとクリーム野菜チキンカリーの「2種盛りカリー」

この日は「2種盛りカリー」1,150円をいただきました。カレーはマトンカリーとクリーム野菜チキンカリーをセレクト。ご飯は通常が​かなり多めなので少な目でオーダー。ご飯少な目にすると50円引きとなるのもうれしいサービスです。​

 

マトンはしっかりとスパイスの利いたパンチのあるカレー。スッキリとした辛さと香りでマトンの旨味が引き立ち、ご飯との相性が抜​群です。また、卓上に高菜があるのですが、このマトンと高菜の相性が非常に良いので合わせて食べるのがおすすめです。​

 

クリーム野菜チキンはクリーミーでありながらもしつこくないサラっとしたカレー。大きくカットされたチキンと様々な野菜がまろや​かなクリームに包まれつつも、程良いスパイスの刺激でしっかりと輪郭のあるおいしさに仕上がっています。​両者は真逆とも思える魅力。カレーの振り幅が広いからこそ、様々な層に人気があるのでしょう。​

基本は玉葱、生姜、ニンニクをベースに10種類に満たない厳選されたスパイスを使用したカレーです。よくTVなどで「何十種類のスパ​イスを使用した〜」という惹句を見かけますが、基本的にスパイスは種類が多くなるほど味がぼやけてくるもの。インドカレーも多く​は10種類以内のスパイスでできあがっているものばかりで、こちらも同様にシンプルだからこそ味が立っているのです。

 

マスターから、こちらのカレーはバングラデシュ人のシェフに作り方を教わったカレーがベースになっていると聞いて納得しました。​バングラデシュカレーは南インドカレーやスリランカカレーと比べると見た目は地味なのですが、毎日食べても飽きない素朴な​おいしさと滋味に溢れています。​

 

こちらのカレーもスパイスカレーと比べたら見た目はいささか地味かもしれません。しかし、スパイスカレーに負けない滋味溢れたお​いしさを持つ、質実剛健なカレーライスなのです。そしてさらに、ここにしかないオリジナルのおいしさだというのが素晴らしいじゃ​ないですか。​カレーにはサラダと紅茶もついてくるのがうれしいところ。食事のバランスもしっかりと考えられています。

「チャイのムース」

​食後の紅茶と合わせて、デザートに「チャイのムース」280円もいただきました。​ほのかに甘い紅茶に、シナモンが香るフワっとしたくちどけのミルキーなムース。チャイも紅茶ですから相性が悪いわけはありません。​おいしいカレーの後のおいしいスイーツほど幸せを感じるものはありませんね。​

 

​スパイスカレーが流行するより前の2006年から続いているお店。流行にとらわれない安定感あるおいしさですから、特別な日に行くお​店というよりは、普段使いをしてこそ真の魅力が伝わるお店と言えるかもしれません。​

 

この先10年も20年も、行く度に「あぁ、やっぱりおいしいなぁ……」としみじみと感じさせてくれることでしょう。​流行を追いかけて見た目の上っ面をなぞるようなカレーではなく、一番重要な部分である魂を持ったカレーですから。

 

 

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/