【食を制す者、ビジネスを制す】

第4回 社長は健啖家である。

 

社長の定番食は何か

 

皆さんは社長という地位についている人ほど食欲旺盛であることをご存じだろうか。社長はとにかくよく食べる。それに早食いだ。しゃべりながらでも、どんどん食べていく。これは多くの社長を取材してきて発見した、特徴的な共通点の一つだ。

 

もしかしたら少食の社長もいるかもしれないが、私はほとんど見たことがない。これは若手の社長に限らず、年齢を重ねた社長たちにも共通して言えることである。

 

ある40代後半の社長とランチをすることになったときのこと、鉄板焼き店に同行したことがある。その場にいたのは社長を合わせて4人。ランチメニューを見ると、価格帯はほぼ1,000円台となっている。社長以外の私を含めた3人は、1,000円のハンバーグ定食を注文し、社長だけが2,000円のステーキ定食を選んだ。

 

別に社長に遠慮していたわけではない。当時、私は30代半ばだったから、食欲は大いにあったし、どうしても好物のハンバーグを食べたかったのである。

 

料理が出てくると、その社長は話をしながら、おいしそうに次々とステーキの肉片を口に運んでいった。気持ちいい食べ方をする人だなと思った。

そのときはあまり気にしなかったのだが、それ以降、様々な社長とランチやディナーで食事を共にするたびに、和食や中国料理、フレンチやイタリアンを食べようが、とにかく精のつくものを好んで食べていることがわかってきた。社長という人種と接する際に注意深く食の好みを観察していくと、彼らのほとんどが定番のように肉や鰻、カツなど精のつくものを好み、こちらが舌を巻くほどよく食べ、よく話し、しかも早く食べていることに気づいたのである。

 

 

社長がパワフルである理由と

彼らが放つオーラの秘密

 

例えば、50代の社長と夜の会合で食事を共にしたときのことだ。次々と出てくるフレンチのコース料理を前に、私は緊張しつつ話に夢中になって料理に口をつけるも、半分以上は残したまま。ところが、その社長は、あっという間に料理を片づけ、私の話に耳を傾けつつ、自分の話も丁寧に披露していくのである。

その社長は連日、会合をハシゴしている。こちらも連日ではないが会合が続き、体調はそれほど良くない。その社長は自分より年上だし、少しくらい体調を気にして少食になってもおかしくないと思っていたが、結局、すべての皿をきれいに平らげ、足早にその店を後にしていった。

 

ちなみに社長が出席する会合は、ほとんどが一軒目で終わる。もし二軒目に流れることはあっても、行きつけのバーで1、2杯片づけて終わりだ(ちなみにクラブやスナックに流れるのは、担当者レベルでの会合のときくらいである)。

 

ときに小腹が空いて、ラーメン屋に行くこともあったが、60代後半の社長が一気にラーメンを片づけたときには本当に驚いた。健康を気にする年齢である70歳前の社長がここまで食べるとは思わなかったのである。しかも、その翌朝、御礼のメールを打とうと思ったら、先方からすでに御礼のメールが入っていたのである。

 

社長の朝は早い。だいたい5時か6時には目を覚ます。起床後、精力的な社長は、自宅近くの公園などでジョギングやウォーキングを始める。または、室内で簡単なトレーニングをしたあと、シャワーを浴びて、朝食を平らげ、仕事に行く準備をする。

 

そうやって社長たちは朝から仕事のために、エンジンをフル回転させる準備をしているのである。それは社長という職業が責任の重い仕事であるからだ。よく社長にはオーラがあるというが、その正体は「緊張感」だ。緊張感を持続させるには、体力がいる。

 

一日中パワフルに動きまわる、そのリズムを毎日保つためには、誰にも邪魔されない朝の時間が最も大切なのである。自宅で整えたリズムのまま、午前中から精力的に動けば、昼も夜も腹が減る。昨夜酒を飲み過ぎて今日は二日酔い、昼も夜も食事はちょっと軽めで、というわけにはいかないのだ。

 

石坂泰三が2人前を平らげた
赤坂「
重箱」の鰻

本格的な夏である。この季節、『土用丑の日』といえば、鰻だ。精がつくものを食べて、暑い夏をしのぐのは言うまでもないが、季節を問わず、精力的に仕事をした後には、鰻が食べたくなるものだ。

 

かつて「財界総理」として、その名をとどろかせた第二代経団連会長の石坂泰三氏は、80歳を過ぎても、好きだった赤坂「重箱」の鰻を、いつも2人前食べたという。

それでも「まだ物足らん」と言った。石坂氏の持論は「人間にも燃料がいる。たくさん食え、うまいものを食え、おいしく食え」。作家の城山三郎は、評伝『もう、きみには頼まない』で、そう紹介している。

 

朝から一所懸命仕事をすれば、昼も夜もお腹が空く。精のつくものを食べたい。そんなとき、店から吹き出てくる蒲焼きの煙のにおいは本当に食欲をそそられる。

 

ときには自分へのご褒美を兼ねて、鰻の名店に足を向けてみてはいかがだろうか。贅沢な気分を満喫した翌日はず仕事のやる気も“鰻上り”のはずだ。

 

出典:itaga31さん
出典:romai343さん