内食も、外食も。マッキー牧元氏が「おいしい」を追求した一冊

“タベアルキスト”マッキー牧元氏の新刊、『超一流のサッポロ一番の作り方』が9月19日に発売されました。マッキー氏がこれまでTV番組『誰だって波瀾爆笑』(日本テレビ系)をはじめ、さまざまなメディアで紹介してきた“アレンジ術”や、“食べ方”に関するエッセイなどがギュッと濃縮された一冊です。

無限の可能性を秘める「サッポロ一番」。そのまま食べるだけじゃもったいない!

本の目玉となっているのは、タイトルからもわかるように「サッポロ一番 塩らーめん」のアレンジ方法。マッキー氏いわく「無限のアレンジが広がる懐の深さが魅力」とのことで、目次には「ホーチミン風」「ナポリ風」「カルボナーラ風」など、一見味の予想がつかないアレンジもズラリ。しかも全て「スーパーで手に入る材料」で「簡単に作れる」ものばかりです。

 

取材時は、マッキー氏自ら紹介したレシピで料理してくれました! まずは、「タンメン風」。インスタントラーメンって、野菜を入れたくなりますよね。そんな定番アレンジも、マッキー氏の手にかかればひと味もふた味も違う結果に。

野菜をサッと炒めるひと手間で、「サッポロ一番」がお店の味に

 

フライパンでまずは豚肉を炒め、にんじん、キャベツ、玉ねぎ、ピーマン、きのこ類の順番に具材を加えて炒めていきます。この順番は、火の通りにくい具材順。そこにお湯を加えてしばらく煮立て、もやしと長ネギを投入。粉末スープを入れた丼に別茹でした麺を入れ、フライパンの中身を入れればあっという間に完成。

 

マッキー流のポイントは「麺は別茹ですること」。通常の作り方だと麺を煮たお湯がスープとなりますが、それだとどうしても味が濁ってしまうそう。茹で時間も袋にあるレシピだと3分ですが、トッピングなどで伸びてしまう時間を考慮して2分半にするんだとか!

「タンメン風」

 

さっそくいただくと……「あれ? サッポロ一番ってこんな味だったっけ?」という奥深い味わいにびっくり。「野菜を煮ることで、スープに旨味が出るんですよ」とマッキー氏。なるほど。

 

ちなみにこのアレンジで理想としたタンメンの味は、東中野の「十番」、それから浅草にある中華料理の名店「龍圓」がかつてメニューで出していたタンメンの味、だそうです。

 

さてアレンジをもう一つ。こちらは中野にかつてあったラーメン店「平凡」の味を意識した「中野駅前平凡風」。筆者もかつて食べたことがあるのですが、シンプルながらも「繰り返し通いたい」奥深い味わいで人気を博していた店だったのです。

「中野駅前平凡風」

 

こちらは麺を別茹でする以外はオーソドックスに作り、トッピングで個性を出すスタイル。チャーシュー、メンマ、ごま、長ネギ、万能ねぎ、そして「平凡」といえば、の柚子(ただこの日は残念ながら柚子がなかったため、スダチで代用)。

 

シンプルな塩らーめんの美味しさと、2種類のネギの風味が絶妙! そして、柑橘の香りが効いています。いやはや、「サッポロ一番 塩らーめん」、恐るべし。

 

「『サッポロ一番』には“しょうゆ”や“みそ”など他にもいろいろあるけど、アレンジのしやすさは“塩”が一番! ほかはどうしても醤油味、味噌味から脱却しづらいから。味噌にナンプラーとか合わなそうでしょ?(笑)。でも“塩”だったら、世界中の味に飛べるんですよ」とマッキー氏。

 

レシピはこの「サッポロ一番 塩らーめん」以外にも、「焼きそば」「卵料理」「卵かけご飯」を収録しています。ちなみにこの本で紹介した以外にもまだまだアレンジ法はあるらしく、マッキー氏によれば「サッポロ一番は80種類くらい、焼きそばは100種類くらいありますよ」。

料理は難しく考えたらダメ!

そういった数多のアレンジ法を生み出すコツは?と伺ってみると。

 

「トライアンドエラーを繰り返そう、と。小難しく考えるより、楽しく考えたほうがいいですよ」

 

とのこと。例えば焼きそばの場合、「あんかけ焼きそば」のアレンジとして考えたら中華料理のメニューはたいてい焼きそばになるそう。例えば、焼きそばにカニ玉をかけてもいいし、麻婆豆腐をかけてもいい。なるほど、そう考えていけばいいんですね。

「餃子の王将」の超一流の食べ方。たれ、焼き方は自分好みに

また、この本にはマッキー氏のお家芸ともいえる「超一流の食べ方」も収録。ナポリタンやアップルパイ、鰻重といった一般的なメニューから、「吉野家」「餃子の王将」といったチェーン店を堪能する方法まで、幅広く紹介されています。特に「餃子の王将」は、餃子をより楽しむためのオリジナルの「たれ」の作り方、歯ごたえを感じられる餃子の向きなど、王将好きにはたまらない情報が満載。

 

「『餃子の王将』のいいところは、小皿がいっぱい置いてあってタレを自分で作れるところなんだよね。普通なかなかないでしょ? あと焼き加減もリクエストできるし。通常の焼きは最大公約数に合わせてるから、実は焼きがちょっと甘めなんだよね」

 

マッキー氏曰く「王将の餃子は、ギリギリまで焼いたほうが美味い」。なので「よく焼き」と「両面焼き」を頼むのがマッキー氏の流儀。

 

ちなみに店舗によっても技術、メニューに微妙に差があり、マッキー氏のお気に入りは神戸・御影店だとか。

御影店の餃子 出典:ジプシーくんさん

 

「餃子の焼き方が上手なんだよね。あと、焼きそばとかも全然味が違うし。神戸では餃子を味噌ダレで食べる文化があるんだけど、その神戸ならではのタレも置いてある。王将マニアの間では有名な一店ですよ(笑)」

 

というわけで、レシピ集として使うもよし、マッキー氏のエッセイを堪能するもよしのお得な1冊。食欲が増していくこれからの季節にオススメです!

 

『超一流のサッポロ一番の作り方』(ぴあ) 著:マッキー牧元

マッキー牧元

(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチ、エスニック、スイーツ、居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演。「味の手帖」「料理王国」「食楽」他、連載多数。鍋奉行協会会長。著書に「東京 ・食のお作法」(文藝春秋)、「出世酒場 ビジネスの極意は酒場で盗め」(集英社刊)。グルメ著名人ページは以下のURLからチェック。
https://tabelog.com/rvwr/mackeymakimoto

取材・文・撮影/川口有紀