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〈食べログ3.5以下のうまい店〉

グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、京都在住のライター・中井シノブさんが薦める、料理も抜群の隠れ家ワインバーを紹介します。
安心感あるワイン選びで話題のバー
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

「いつ行っても飲み頃のおいしいワインが開いている」とワイン好きの間で話題になっているのが、堺町四条に2025年7月開業した「BRUN」です。シックで落ち着いた雰囲気、大人が集うバーそのものといった趣。深夜2時まで開いていることもあって、グラスでもボトルでも好みのワインをじっくり味わえます。

デパートやハイブランドのショップが並ぶ四条通から、堺町通を少し南に進んだ商業ビルの2階。1階の飲食店の横にある細い階段脇に、小さな看板が出ています。気をつけていなければ通り過ぎてしまうのでご用心。

ドアを開けると高い天井に太い梁、ゆったりとしたL字形のカウンターのある落ち着いた空間。造りこまないナチュラルな雰囲気に、すっと心も静まります。以前も飲食店だったという造りを生かし、奥のくぼみにワインセラーを設えました。「格式高いバーのような、ピシッとして背筋を伸ばすイメージではなく、フラッと立ち寄っていただける、ラフで落ち着く空間を目指しました」と店主の大山達也さんは言います。
経験豊富なソムリエ・大山さんの無駄のない所作、的確なアドバイスが心地よい

京都市左京区で生まれ、幼い頃は転勤族の父の仕事に合わせ、大阪や埼玉など各地を転々としたそうです。高校卒業後は、料理人を目指して京都の調理師専門学校に通い、卒業後は神戸で一人暮らしをしながら料理の仕事についていました。そんななか、よく通うようになったワインバーでマスターと親しくなり、それがワインにハマる原点になったそう。
「アカデミー・デュ・ヴァン大阪校」に通い、仕事終わりにもワインバーで勉強を重ねて24歳でソムリエ資格を取得。その後、大阪の名イタリアン「ポンテベッキオ」に4年
勤め、ハイエンドなワインに触れました。また、神戸の老舗フレンチ「オー・ベック・ファン」では、クラシックなサービスを学んだそうです。

その後、日本を代表するモダンスパニッシュレストラン、神戸の「カセント」でマネージャー兼ソムリエとして5年間勤務。さらに、京都でオープンするイノベーティブレストラン「KOKE(コケ)」立ち上げとともに、京都へ。けれど、将来への思いもこの時期にかたまり、「レストランでのソムリエ業務は、『KOKE』を最後にし、その後は自分がワインにのめりこむきっかけになったワインバーというスタイルで独立したい」という思いが深まりました。
ワインは、フランス産を中心に、世界各国のワインをセレクト。軸にしているのはクリーンナチュラルからクラシックまで。「ナチュラル専門、クラシック専門に縛らないのが私のスタイルです」と言います。
アペロもディナーもバータイムも。自在に使えるのがありがたい

大山さんのワインセレクトの基準は、必ず自身の舌でしっかりと見極めること。個性的過ぎるナチュラルワインは避け、綺麗で芯のある味わいのものを厳選していると言います。「そのためにも、信頼できるワインショップやインポーターさんとの情報共有を密にし、常に新しい生産者やトレンドを意識してセレクトしています」と大山さん。

清見オレンジなど、その時期のおいしい柑橘の果汁、粒マスタード、蜂蜜を加えたキャロットラぺはワインと好相性の一品。爽やかな柑橘の香りに添う、アリス・エ・オリヴィエ・ド・ムールが造る「サンブリュイ(Sans Bruit)」を合わせます。「ブルゴーニュでは珍しくソーヴィニヨン・ブランを使用した、現代的で綺麗な造りのワインです」と大山さん。合わせるワインに迷ったら、気軽に相談してほしいと言います。

しっかりとキャラメルの苦みを利かせた、硬めでビターなクラシックプリン(1日約5個の限定仕込み)には、メルロー主体のドメーヌ・デュ・ペッシュ(Domaine du Pech)の赤ワイン「トテム(Totum)2016」を。手摘みで丁寧に造られたワインは、熟成感と奥深いうまみ。出汁のような果実味とシルキーなタンニンが、ビターなキャラメルのコクとよく合います。

ほかにも「ウフマヨ 西京味噌」や「スペイン産パプリカ入りオリーブ」といったワインに合うおつまみや、「牛ホホ赤ワイン煮込み」やオープンサンドなどしっかりお腹を満たしてくれる料理も用意されています。ゆっくり夕食をという日に立ち寄れるのもうれしいですね。

トレンドにはアンテナを張る大山さん。最近のおすすめは、日本人醸造家・斎藤政一さんが造るワイン。ナチュラルワイン愛好家やブルゴーニュファンから絶大な人気を集めるワインです。生産量の少ない貴重な一本です。ほかにも、日本ワインやカリフォルニアワインなども厳選してストックし、料理や好みに合わせて薦めてくれます。

「バッジもつけず、カジュアルでラフな服装でお客様をお迎えすることで、ワインバーをもっと日常的に捉えてもらえる空間づくりを目指しています」と自然体。
ワンオペにこだわるのは、自分の目の届く範囲で丁寧に、一人ひとりのゲストと向き合うことを最優先にしているからだと言います。

店名「BRUN(ブラン)」はフランス語で「茶色」で、経年変化を連想させる色。ワインのように、そしてお店自体も、去年より今年、今年より来年と、年数を重ねるごとに味わい深い経年変化を嗜んでいきたいという思いが込められています。
教えてくれた人

中井シノブ
京都在住ライター。京都を中心に関西の飲食店を取材紹介する。取材店は1.5万軒以上。趣味は外飯、外酒、猫とまったり。「本願寺新報」でコラムを連載中。



