今年も各所から、いちごの新メニューやフェアの情報がわんさかと飛び交ったが、いちごスポットは数あれど、あまり知られていないいちごスポットにこそ新しい発見があるのではないか!? そんな期待を抱きつつ、向かった先は静岡県静岡市。
実は、静岡県静岡市久能エリアは“いちご狩り発祥の地”と言われ、中でも“いちご海岸通り”と銘打たれた国道150号線沿いは、約40のいちご農園が並ぶ一大いちごスポットなのだ。
しかも、ここで栽培されるいちごは「石垣いちご」と呼ばれ、他のエリアではお目にかかれない独特の風景が広がっている。なぜ静岡のいちごは美味しいのか!? その謎を、絶品いちごスイーツとともにご紹介!
静岡は、いちご狩り発祥の地だった!
徳川家康公が晩年を過ごした静岡市。駿河湾に面する国道150号線沿いの久能山は、家康公を祀る久能山東照宮があり、古くから参拝者で賑わっていた背景を持つ。
昭和41年、麓付近を中心に参拝者にいちごを食べてもらおうといちご農園ができ、それが観光いちご狩りの始まりと伝えられている。それゆえ、静岡市は“いちご狩り発祥の地”と言われているのである。
作物統計調査(2016年)によると静岡県は、栃木、福岡、熊本に次ぐ、全国4位のいちごの出荷量を誇る。現在、静岡市では主に章姫(あきひめ)と紅ほっぺの2種類のいちごを栽培しているのだが、他県ではお目にかかれない独特の栽培方法であることは、あまり知られていない。
オリジナル栽培「石垣いちご」を使ったふわふわかき氷
静岡市で栽培されているいちごは「石垣いちご」と呼ばれ、山の斜面に石垣を積み上げ、その間に苗を植えて育てている。静岡県は日照時間が全国トップクラスの言われるほど温暖な地域。より長く太陽の光を浴びられるように斜面にいちごを栽培し、陽の光を浴びた石垣がまるでコタツのようにポカポカと温まり、日没後も保温効果が続くのだという。
いちごは寒暖の差があればあるほど甘くなる。そのため石垣いちごは、他の栽培方法に比べ、甘さが際立って成長するというわけだ。いちご界屈指の上品な甘さを誇る章姫は、石垣で栽培されるからこその甘さなのである。そんなあま~い章姫をふんだんに使ったいちごスイーツをお目当てに、多くの人がいちご海岸通りを目指す。
こちらは久能屋の「ふわふわいちご」(600円)。いちごを凍らせ、そのままスライス! シャリシャリのいちごと練乳の組み合わせたるや……。一世を風靡した台湾のマンゴーかき氷を、「もしも超絶に美味しいいちごで作ったらどうなる?」というクエスチョンに、120%のアンサーで答えてくれる。これで600円は安すぎる。
そして、こちらは「石垣いちご餅」。いちご史上、こんなに愛らしいいちご大福があっただろうか! その姿は、まるでポケモンのよう。勝手に歩き出しそうな雰囲気すらある。甘さ控えめのつぶあんと、あんに鎮座したいちごの甘さが◎。お持ち帰りもできるので帰りの車中で食べるのも良いだろう。
参道に面する久能屋からは、頂上付近に位置する久能山東照宮を確認することができる。霊験あらたかなパワースポットといちごがコラボ……それもまた多くの女性を虜にする静岡市の魅力になるはずだ。
あのヘレンケラーも来園!ストロベリーフィールドの絶品スイーツ
ストロベリーフィールドの「苺パフェ」(950円)もこの一帯の名物。まばゆいほどの紅ほっぺと章姫の量! 紅ほっぺは、酸味と甘みのバランスがちょうどよい品種。章姫に比べて甘さは控えめで、口の中に広がる清涼感は章姫にはない特長だ。
異なる品種のいちごが、ひとつのパフェの中で共演し、口の中で融和する。なかなか底までたどり着かない贅沢な量といい、ぜひとも食べておきたい逸品だろう。
なお、こちらのストロベリーフィールド。昭和初期には(いちごが)皇室へ献上され、ヘレン・ケラー、与謝野晶子など多くの著名人が訪れた歴史深い農園でもある。
聖女と謳われたヘレンケラー(上写真中央)が食べた石垣いちごを、同じ場所で食べる。先ほどの久能山東照宮の麓で食べるいちごとはまた違うご利益(!?)がありそうだ! 歴史好きはテンション上がります!
テイクアウトもできる「いちごのワッフル」(650円)もオススメ。盛られている自家製ジャム(お土産として購入も可能)が良いアクセントになっていてみずみずしい!
山の斜面に石垣を積み上げて育てられる石垣いちご。すなわち眺望が素晴らしく、目の前に広がる駿河湾を見ながら外でワッフルを食べると、びっくりするくらい心地がよい。
このエリアは、世界遺産にも登録された「三保松原」と目と鼻の先。駿河湾、三保松原、そして富士山。美しい風景を感じながら、いちごスイーツを楽しむことができるのは、静岡市ならでは。もちろん、今回紹介した2店舗を含め、約40の農園ではいちご狩り体験も期間内であれば可能だ。
周辺にパワースポットもたくさんある久能エリアは、他のいちご狩りスポットでは真似できないスペシャルないちご体験ができる。いちごをメインディッシュに、パワースポットや絶景といったサイドメニューも楽しむ……いや、どちらもメインディッシュ級の魅力に溢れている静岡市の石垣いちご。食べて、ご利益授かっちゃいませんか!?
取材・文・写真:我妻弘崇(アジョンス・ドゥ・原生林)