<極上のうま辛グルメ>

食通が愛してやまない“うま辛”な逸品を紹介する「極上のうま辛グルメ」。刺激的な辛さのその先にある旨みが食通の心を虜にする秘訣なのかもしれない。

今回はグルメライターの武智 新平さんがおすすめする、人気の韓国焼肉店の隠れた名物をご紹介!

教えてくれる人

武智 新平

1970年生まれ。食雑誌をメインにフリーの編集&ライターとして活動中。食事では寿司、そば、カレー、洋食全般など、お酒は特に日本酒が好きで、仕事でもそれらを担当することが多い。一見でも心地よく、かつリーズナブルに楽しめる店を中心に紹介していきたい。

月島駅から出てすぐに位置する、韓国料理の名店

再開発で高層ビルも建ち、下町の面影も薄らいできている街・月島。駅からほど近い住宅地が並ぶエリアの一角に休日、平日問わず多くの人が足を運び、料理を頬張り、笑みを浮かべている店がある。ここ「韓灯」だ。

地下鉄月島駅9番出口を出てすぐ。大きく赤い看板が目印で、大きくて重い入口を開けると伝統的かつ、時に辛うまの韓国料理が待っている

北九州で17年間営業した後、19年前に東京に移転してきた。3歳の時に来日したオモニ・金 順貞(スンジョン)さんが母や祖母に教えてもらった家庭の味をベースに、和食店で腕を磨いた息子の金 英徳(ヨンドク)さんが洗練させた韓国料理……タッカンマリ、チヂミ、スンドゥブ、ポッサムといった伝統的な料理に加え、黒毛和牛を使った焼肉などを提供する。肉、魚介はもちろん、ふんだんに使用する野菜など素材の味わいを楽しませてくれると評判になっている。

半地下の店内は清潔感あふれる空間で、テーブル席、掘り炬燵の小上がり、カウンターまであり、数人での利用のほか、ひとりで訪れることができるのもうれしい限り
 

武智さん

駅からすぐで、もんじゃ店が集まるエリアとは反対のブロックにあり喧騒から離れてもいるので、家族連れ、デートだけでなく、カジュアルな接待に使えるのも◎です。韓国料理はボリュームのあるものが多いので、ひとりで出かける際は注文しすぎないようにご注意を。

オモニの味を引き継ぐ、店主の思い

九州の和食店で研鑽を重ねていたが、やはり韓国料理が作りたいと、母と力を合わせ「韓灯」で腕を振るうことに。香り用、辛味用など韓国産の唐辛子数種を使いつつも、砂糖の使用は最小限。韓国のソウルや新大久保では唐辛子や砂糖を大量に加えることで濃厚な味わいかつ、辛さ抜群の料理を出す店が多い。ソウルから訪れる人には「パンチが弱いかも」と言われることもあるそうだが、韓国の田舎などから足を運ぶ人からは「すごくおいしい」と評判。

金 英徳さん(57歳)

「キムチやコチュジャンは昔ながらの作り方にこだわった母の手作りなんです。そういう点も含め、パンチよりも素材の味を生かした料理、辛さを心がけているのが理由だと思います」(英徳さん)。さらに「自分たちが食べ慣れた美味をベースにしているので、その評価でいいんですよ」とも。

 

武智さん

キムチを食べれば辛味、酸味の奥に野菜の甘みがあり、焼肉に添えられるコチュジャンは甘ったるくなく肉の旨みをググッと引き立ててくれます。ともに手作りならではの爽快な余韻がたまりません。また、辛うまな料理にも繋がるのですが、野菜がたっぷり食べられる、ニンニクと唐辛子で代謝が上がる、などヘルシーな理由からもこの店を推したいです。