飄香グループの新店は庶民の郷土料理

この数年、四川料理がブームであり続けている。“麻辣”という、痺れる辛さに、すっかりはまってしまったのであろう。とはいえ、麻婆豆腐によだれ鶏、担々麵、回鍋肉……。それ以上のどんな四川料理を、私たちは知っていると言えるのだろうか。本場の味を理解しているとはとても言い難い。というのも、四川は遠く、なかなか観光で気軽に行けるような場所ではないからだ。

ところが、この11月2日、飄香グループの新店として、四川で地元の人たちが、本当に愛して日々食べている庶民の郷土料理を食べさせてくれる店「竹韻飄香」が代々木上原にオープンした。うれしい限りである。

飄香グループの代表、井桁良樹シェフは、日本の四川料理店を経て、単身中国へ渡り、上海と成都で修業したつわものだ。百の素材があれば百の調理法があると言われる四川料理を究めて帰国。2005年代々木上原に自らの店をオープンした。その後、多彩な店舗を展開しつつも、いつかは、現地で自分が本当に感動し驚いた、郷土料理の店を出したいという夢は温めていたという。

日本人がまだ知らない味や香り、おいしさを伝えたい

今回、念願叶ってのオープンに際し、料理を一任されたのは、廣瀬文彦シェフ。中国から帰省したばかりの井桁氏に厨房で出会い、強烈な憧れを覚え、あとを追うように四川省成都で2年間の修業を積んだ、こちらもつわものだ。

「それなりに四川料理を身に着けて行ったつもりでしたが、現地で見て、触れて、食するのとでは、大違いでした。一番驚いたのは、スパイスの種類の多さと、その使い方ですね。日本では、四川料理というと辛い料理と思われていますが、辛さだけではなく、本当に多種多様なスパイスがあり、それを縦横無尽に使いこなします。だから、辛くないけれど、スパイシーという料理もたくさんあります。そんな日本人がまだ知らない味や香り美味しさを、この店では伝えていきたいと思っています」と、廣瀬さんは言う。

メニューを見ると、よだれ鶏、回鍋肉、麻婆豆腐などもあるが、想像のつかない料理もたくさん記載されている。なかには、辛味のある香料タレで煮た鴨の頭の煮込みを、ビニールの手袋をしてむしゃぶりつくというワイルドな料理や、四川人の大好物という、肉類の米粉蒸しなど、いずれも専門店があるほどの人気料理がずらりと並び、好奇心旺盛なグルマンにはたまらないメニュー構成になっている。選ぶのが難しい向きにも、バランスよく配されたコース料理があるから安心だ。

カウンターでライブ感を味わって

また、代々木上原と言えば、代表の井桁シェフにとって、スタートを切った思い出の地でもある。縁あって、そこへまたオープンできたことも大きな喜びだと言う。四川庶民の味を供する店にふさわしく、飄香始まって以来のカウンタースタイルなのもいい。廣瀬シェフの手元が見えるのも興味深いし、連れ立った友と話すのにも具合がいい。飲み物には幅広くワインを揃え、それぞれの料理と相性のいいワインを選んでもらうこともできる。また、四川省で主に飲まれている蒸留酒の「白酒(パイチュウ)」をベースにしたカクテルも用意されており、郷土料理と言いながら、おしゃれ使いや、デート、女子会にもぴったりな店の造りになっている。