ハンバーガーをこよなく愛し、そのおいしさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介してもらうこの連載。第13回は、国内最高気温の街として知られる埼玉・熊谷にある「ハンバーガーショップスズキ」のハンバーガーの魅力をじっくり教えてもらいます!
【じっくり食べたいハンバーガー】第13回「ハンバーガーショップスズキ」
前回、前々回と有名店が続いたので、今回は元に戻って、隠れた実力店をご紹介します。場所は埼玉県。去年「ラグビーワールドカップ2019」で盛り上がったラグビータウンにして、2018年7月23日に41.1℃を観測した国内最高気温の街でもあります。映画『翔んで埼玉』の舞台にもなった……そう、熊谷!
熊谷まで来たからには、テレビニュースで有名な「八木橋百貨店」を見ないワケにはいきません。私が訪ねたこの日、この時間帯の気温は34.7℃。十分高温ですが、熊谷の暑さはこんなもんじゃありません。つい先日、静岡・浜松も41.1℃で歴代最高気温に並んだとのことですが、本気の熊谷は「肌が痛くなるぐらいの暑さ」だとの噂です。そんな国内最高気温の街にもハンバーガー専門店があります。2018年8月のオープン、今年で3年目の「ハンバーガーショップスズキ」です。
今年の1月まで200mほど離れた別の場所で営業していました。が、急遽移転することになり、一時閉店。新たな物件を探していたところ、「いつ再開するんだ」との声があまりに多かったことから、「とりあえずハンバーガーが焼ける環境さえ確保できれば」と、現在の場所に今年4月にリニューアルオープンしました。
飲食店の居抜きでない物件を急遽借りたため、店内は急ごしらえで、ガランとしていますが、ソーシャルディスタンスが叫ばれるこのご時世にはむしろちょうどいい距離感でしょう。5月の1カ月間はテイクアウト専門店として営業。開店と同時に2時間先まで予約で埋まるほどの大忙しだったそうです。
店主の鈴木さんは東京・人形町の名店「BROZERS’」に6年勤めた職人です。大学生の頃から働き始めて、24歳から3年間、新富町店の店長を務めました。まだ勤務経験が浅いうちから「店長をやりたい!」と訴え続け、念願叶ってその座に就いてからは「自分の店だと思って働いた」という鈴木さん。27歳で独立し、ハンバーガーショップスズキを始めました。
バーガーメニューは「ハンバーガー」と「テリヤキバーガー」の2品のみ。あとはお好きにトッピングを……というシンプルなシステムです。テーマは「こだわるのやめよう」。1個800円でハンバーガーを提供することをまず決めて、その中で「どこまで本格的なグルメバーガーに迫れるか」というチャレンジを鈴木さんは日夜続けています。
では、「ハンバーガー」からいってみましょう。スズキオリジナルのBBQソースが入ったバーガーです。パティはオージービーフ100g。肉屋より挽肉の状態で仕入れて店内で成形。バンズは市内のパン店作。ふんわり甘めのバンズで、生地はきめ細か。パティもソフトな結着で、ややしっとりとした食べ口のバーガーです。ブラザーズ式にレタスを折り畳み、その上にトマト、オニオンは生。そこへマヨネーズ味とバンズのゴマの味。さらにソースの味がググッと利いてきます。さて、このバーガーをベースにトッピングしてみましょう……。
鈴木さんおすすめのトッピング例がメニューに4つほど載っています。その中の一番人気が「エッグチーズタルタル」。両面焼きのフライドエッグに加えて、タルタルソースも卵たっぷり。どろ~りたんぱく質だらけのバーガーですが、コレがちょうどバランスがよくて、しっとり系のバンズも白ゴマの味も、この“どろ~り”に上手くハマり込んでいます。“点”だったそれぞれの味わいが“線”になった感じ。途中でエッグの黄身も流れ出して、味わいますますねっとり。お腹の張る一品です。
「テリヤキバーガー」もアレンジしてみました。よく焼いた薄手のベーコン2枚とみずみずしいグリルドパイナップルをトッピング。もりもりサクサクのレタスとマヨネーズの活躍もめざましく、味わいにぎやか。バーガー全体としてはやはり“しっとり”とした仕上がりです。
おまけにもう一品、「オレオバーガー」という名のデザートメニューがあります。ディッシャー3すくい分のバニラアイスがゴーン! とのった冷たいスイーツです。オレオクッキーとバンズの白ゴマの味が重なった瞬間が思いがけないおいしさ!
ということで、今回食べた中では「エッグチーズタルタル」が、スズキのパティとバンズに最もよく合っていました。そこは評判通りのおいしさと食べごたえです。トッピングをのせるほどに、食材と食材の間の「隙」が上手く埋まっていくような、そんな作用を覚えました。
東京都心から60km離れると、ハンバーガー作りのノウハウのあるパン屋・肉屋も少ないと思います。鈴木さんにはぜひ名門「BROZERS’」での店長経験を活かして、業者をも上手く束ね、引っ張り、ひとつの“チーム”となって、さらにおいしいハンバーガーを“アツく”目指していってほしいと思います。無から有を生み出すプロデュース力でぜひ! 以上、今月は日本一暑い街よりお送りしました!
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