〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
インバウンドや食材の高騰で、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで、「おいしいものを食べたい時」につかえるハイコスパなお店とは?

オーナーシェフ自らが「通いたい」と思える店を実現

恵比寿ガーデンプレイスから徒歩3分。イタリアンレストラン「Osteria del Ciao.(オステリア デル チャオ)」は、商業店舗が集う恵比寿において、驚くほど閑静な住宅街の入口に佇んでいる。

 

2018年5月にオープンした同店は、手打ちパスタとイタリア全20州のワインがグラスで楽しめると、舌の肥えた周辺の住民たちが足繁く通っている店だ。

 

夕食前後に軽く1杯のワインとつまみを楽しむような利用の仕方もできるが、まず試してみたいのが、パスタやメイン料理がグランドメニューから選べる手ごろなコース料理だ。なかでも、4種類の手打ちパスタが楽しめる「4種のパスタコース」と、パスタ2種類にメイン料理が加わった「メイン料理付きフルコース」が人気。いろいろな味が楽しめる前菜に手打ちパスタ、肉料理などイタリア料理の多彩さを味わうことができる。

オステリア デル チャオ外観
2階に位置するオステリア デル チャオ。昼と夜とでは雰囲気も異なる。

地下1階から3階まであるフロアのうち、3階を除いてすべて個人オーナーが営む飲食店が入っているビルは、個人宅を訪れるかのようなつくり。実は鍵がかかっていない暗証番号式のドアを開けて、打ちっぱなしのコンクリートのモダンな階段を上がって2階に進むと、白壁と木目の温かなインテリアが出迎えてくれる。

オステリア デル チャオ店内
昼は陽光が差し込む明るい店内。夜はシックな雰囲気となる。

パスタも肉料理も、グランドメニューから料理が選べる楽しさ

コース料理でありながらも、パスタやメインをアラカルトのグランドメニューから選べる同店。その理由は、オーナーシェフでソムリエでもある吉川さんの「自分が客なら、食べたいものを選びたい」というもの。それは、吉川さんが企業に勤めていた時代に、毎年ヨーロッパ各地の名店を食べ歩いていた経験からきている。

 

コースで提供するパスタは9種類前後あるグランドメニューのほか、季節のメニューからも選べる。店内でつくる、味わいや太さ、食感がそれぞれ異なる手打ちパスタを使用しているため、「4種のパスタコース」であっても飽きることがなく、パスタの奥深さに触れることができる。

前菜5種盛り合わせ
「前菜5種盛り合わせ」

前菜はアンティパスト5種の盛り合わせ。基本は、カルパッチョとカプレーゼ、フリットなど。そこにその日のおすすめが加わる。驚くのは、この量で一人前という点だ。この後に提供されるパスタも比較的量があり、たくさん食べたい男性でも満足できる。

グアンチャーレと龍の卵の濃厚カルボナーラ手打ちのタヤリン
「グアンチャーレと龍の卵の濃厚カルボナーラ手打ちのタヤリン」

手打ちパスタで人気なのは、やはりロングパスタ。なかでも卵黄でつくるパスタ「タヤリン(タリエリーニ)」をつかった「グアンチャーレと龍の卵の濃厚カルボナーラ手打ちのタヤリン」は、多くの女性客が注文する一品。ほかのパスタに比べて、サクサクとした食感がタヤリンならでは。

パンチェッタと生黒胡椒 ピリ辛アマトリチャーナ
「パンチェッタと生黒胡椒 ピリ辛アマトリチャーナ」

専用の工具を用いて四角い形状となるキタッラはソースがよく絡むため、濃厚なソースが合う。「オステリア デル チャオ」では、「パンチェッタと生黒胡椒 ピリ辛アマトリチャーナ」で提供している。

 

吉川さんが手打ちにこだわるのは、乾麺とは異なる生麺独特の味わいと、機械打ちでは出せない食感を出すため。古代小麦や石臼挽きのオーガニック小麦に、素材のうまみを引き出す水素水、古代ローマ時代から塩の町として知られるラヴェンナ県チェルビア産の塩、香り高いプーリア産オリーブオイルを独自に配合。試行錯誤を重ねたレシピで、丁寧に捏ね上げている。

 

また、パスタ専用の工具が好きだそうで、店内にはイタリアから持ち帰ってきたキタッラの工具をはじめ10種類ほどの工具が飾られているので、気軽に見ることもできる。

国内産のジビエが通年で楽しめるメイン料理

メイン料理も、グランドメニューから選ぶことができる。岩中豚や佐賀牛などのブランド肉をはじめ、仔羊や鴨肉(ブルターニュ産)、馬肉(青森産霜降り馬肉)といった比較的なじみのある食材に加えて、蝦夷鹿や猪といったジビエも揃えている。ジビエは、北海道や愛媛など信頼のおける猟師から仕入れた国内産を、天然の溶岩石でじっくりとグリルした逸品だ。

肉料理はすべて天然の溶岩石で焼き上げる
肉料理はすべて天然の溶岩石で焼き上げる
天然の溶岩石で焼き上げた「蝦夷鹿のグリル」
天然の溶岩石で焼き上げた「蝦夷鹿のグリル」

個性豊かなイタリアワインをグラスで味わい、料理とのペアリングを堪能

吉川さんはイタリアンやフレンチ、スペイン料理などを扱う飲食企業に18年勤めたのちにこの店をオープンした。そのきっかけとなったのが、ソムリエの勉強をしているときに出会ったイタリアワインだそうだ。特にその土地の特徴を色濃く受け継ぎ、つくり手のセンスとこだわりがハッキリと表現される土着のワインに惹かれたという。

イタリア土着のワインをグラスで

個性的なイタリアのワインをたくさん味わってほしいと、ワインはすべてグラスでの提供。スパークリングは3種類前後、白ワインは10種類前後、赤ワインにいたっては15種類前後をその日のおすすめとして用意している。1杯700円からと値段も手ごろで、「フルボトル1本は飲みきれない」という人でも、食前酒や前菜、パスタ、メインに進むごとにワインを替えて、料理とワインのペアリングが楽しめる。

 

今回の自腹飯では、5,800円の「メイン料理付きフルコース」をチョイス。手打ちパスタを食べ比べできる5,600円の「4種のパスタコース」も魅力的だが、わずか200円の差額でジビエなどの肉料理が堪能できるのは嬉しいメニュー構成だ。

5,800円の「メイン料理付きフルコース」
5,800円の「メイン料理付きフルコース」

ここでは写真の紹介はできなかったが、コース料理には前菜の前につきだしが提供されている。発酵バターをたっぷりと使い、香り高い黒トリュフを練り込んだクロワッサンは、店内で焼き上げる自家製。そこに24ヶ月熟成のサンダニエーレの生ハムが添えられており、食事のスタートのテンションを上げてくれるつきだしとなっている。コースではこれに、ドルチェとコーヒーがつく。

 

ちなみに「なぜ、イタリアンなのにクロワッサン?」という問いには、「フレンチに携わっていたから。それに、クロワッサンが嫌いな人ってあまりいないなと思って」とのこと。

 

様々な業態の飲食店に関わっていた吉川さんならではのこだわりと工夫が細部に生きている店だ。

吉川さん
「オステリア デル チャオ」のオーナーシェフ&ソムリエの吉川さん
【今日のお会計】

■食事
・メイン料理付きフルコース 5,800円

 

■ドリンク
・白ワイン(グラス) 700円
合計 6,500円

※価格はすべて税込

 

取材・文:岡崎たかこ(grooo)
写真:松村宇洋