【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレー#67】「とら屋食堂」

ひとつの店舗を、異なる飲食店とシェアしてカレー店を営業する「間借りカレー」。本連載でもことあるごとに取り上げてきましたが、その間借りカレーが単独営業に変わるのは、音楽業界で例えるならインディーズバンドがメジャーデビューするようなものであり、喜ば​しいこと。

 

今回ご紹介する、東京・西荻窪の「とら屋食堂」は、そんな中でも特に幸せな形で令和元年6月に単独店として営業開始したお店です。​

何が幸せかというと、元々とら屋食堂が間借りしていたお店が閉店することになり、そのまま移行する形で、同じ場​所がとら屋食堂という独立したお店に変わったということ。これはお店の人気も、店主のお人柄も、どちらもあってこそでしょう。

 

店主は日本各地で南インド料理の食事会を開催してきた方で、言ってみれば全国にファンを持つ、知る人ぞ知る料理人。そんな店主が、遂にご自分の城を構えらえたわけです。
そして​この日は、基本的に予約営業となるディナーの時間帯にうかがいました。
「ディナーミールス」

「ディナーミールス」2,000円は、肉や魚が入っていないベジタリアン仕​様。そもそも南インドのベジミールスは、日本人の舌ではひとつひとつのカレーや副菜の味が薄く感じ、その味を理解しきれないこともしばしばあ​るので、混ぜて完成するおいしさだということを知っておくべきでしょう。

 

しかしこちらのお店のミールスは、ひとつひとつのカレー​や副菜の味が薄味ながら奥深い味わいで、それだけで食べてもおいしいのです。それを混ぜればさらにおいしさが倍増するのだから感​動もの。和の食材を取り入れた独自性あるミールスは日本人シェフだからこそ。

「ワダ」

一緒についてくる「ワダ」(南インドの甘くないドーナツ​的なもの)も揚げたてで、サクっとフワっとした食感は前菜として完璧です。​

 

肉や魚を食べたい人は、オプションで追加するのが良いでしょう。この日は「三元豚のヒレ肉ポークビンダルー」800円と、「茄子のマサ​ラ詰ロースト」400円を追加オーダー。

「三元豚のヒレ肉ポークビンダルー」

「三元豚のヒレ肉ポークビンダルー」(豚肉のカレー)は、ヒレ肉使用だけあって柔らかくて、噛む程に豚の旨味がしっかりと感じ​られる部位。酸味が特徴のカレーは、ミールスと混ぜても最高のおいしさです。

「茄子のマサ​ラ詰ロースト」

そして「茄子のマサラ詰ロースト」。文字通り茄子の中にマ​サラ(スパイス)が詰められており、茄子好きでスパイス好きにはたまらない逸品。本来肉好きの僕が、あえて野菜をオプションで追加する程のおいしさであり、高い満足度。素晴らしい味の世界です。​

 

味が良いだけではなく、こちらは接客の良さも特筆すべき点。常連さんのわがままメニューに気軽に応えたり、それに応えて作ったも​のを他のお客さんにサービスで振る舞ったりと、嬉しいサプライズが巻き起こることもあります。

初対面のお客さん同士を上手に繋げてくれる接客は、おいしさをさらに引き上げてくれるもの。これはこちらのお店が全国各地でカレーイベントを開催し、旅先で出会​った人達との繋がりを大事にしているからこそでしょう。​

 

人との一期一会、そして食の一期一会も堪能できる素晴らしいお店の実店舗営業化。嬉しい限りです。

 

※価格はすべて税抜

取材・文・写真:カレーおじさん\(^o^)/