朝ごはんだっておいしいものを!

相も変わらず、働き者の日本人。休憩も取らず、お昼はコンビニで済ませているという方たちが多いのでは? 忙しくて食事内容が疎かになってしまう気持ちは痛いほど分かるけれど、それじゃ頑張っている“自分”が報われない。時間に余裕がないときこそ、少し早起きして朝ごはんに気合を入れたらいいじゃない! ということで、素敵な朝ごはんが食べられるお店を紹介していきます。

 

第1回:根津「ディブレダイニングASAGAO」

“朝からフレンチ”。意外とありそうでなかった選択ではないだろうか。ホテルの朝食バイキングなどを除けば、朝から美食をするというのはなかなか難しい。午前中にしっかり食べようと思うと、結局ファミレスや某コーヒーチェーンに落ち着いたりなんてことになっていたりしないだろうか。この常識を破ったのが、「ディブレダイニングASAGAO」。この店では早朝からフレンチのフルコースが食べられる。営業時間は朝7時から午後3時まで。その気になれば、出社する前にフルコースを食べることも可能なのだ。

客席のカウンターからはシェフの調理風景を見ることができる。メニューに目を落としてみると、3,000円(税別・以下同)と4,000円のコースが用意されていた。後者は前菜が盛り合わせではなく単品になり、さらにスープがついてくる。3,000円のコースでも十分だけれど、思い切って4,000円のコースをチョイス。朝食としては高いけれど、フレンチのフルコースとしてはリーズナブルだ。朝食に時間を掛けられない人向けのワンプレートメニュー(1,200円・パン、コーヒー付き。 +300円でデザート付き)もあったが、それはまたの機会にしよう。最初にテーブルに置かれたのはクロワッサン。パリっと焼き上げられた外側は、まるでパイのよう。サクサクとした食感ながら口溶けが良く、やわらかな甘みで食欲が全開に。

料理長に「週末は朝から飲むお客様も多いですよ」と聞き、すかさずスパークリングワインを注文。

前菜は「白アスパラガスのポワレ」「三種大根とお米のサラダ」「白身魚のテリーヌ」が次々とプレートで提供される。さすがに朝であることを意識して、ポーションは小さめ。

なかでも特筆すべきは上にバジルを練り込んだマカロンがのせられているテリーヌ。ソテーしたテリーヌと一緒に口に入れると、やわらかな甘みと、魚の旨味のバランスが絶妙。

続いて登場したスープにビックリ。小ぶりの蓋付き容器で供され、開けてみるとコンソメスープの上に淡いピンクのバラの花が! 実はASAGAOのオーナーである慎次大氏はパティシエ。根津にある洋菓子店「セレネー」のオーナーでもあり、その技術を生かして完成させたのがマッシュポテトでできたバラの花。この技術はパティシエならではの技。料理人には中々再現できないのだとか。

いよいよメイン2品が続けて登場。魚は「スズキのポワレ アメリケーヌソース」で、肉が「日向鶏のポワレ ソース ド ジュードプーレ」。魚料理のアメリケーヌソースは、クリームを使わず、あっさりとしているがオマールエビの出汁がしっかり効いていて食べ飽きることがない。フルコースを食べているのに、どこか朝を意識させる演出が続く。

日向鶏のポワレも同じく、肉汁から作られるソースはしつこくない。ディナーだったら物足りなく感じる客もいるだろうけど、朝ならちょうどいい。

さらにデザート、コーヒーが続いてフルコースを完食。急げば1時間で食べ終えられただろうが、あえて朝を意識せず、ゆっくりと味わうのが贅沢な時間の過ごし方かも。朝食フレンチ、なんだかブームの予感がする。

 

※メニュー内容は季節によって変更あり。

写真・文:寺尾 豊(フリーライター、映像作家)