目次
四川料理との出会いが、やがてライフワークに
「四川フェス」をご存じでしょうか? その名の通り、唐辛子や花椒など香辛料がたっぷり効いた中国四川省の郷土料理「四川料理」の名店を集めたフェスティバル。これまで2017年、2018年と2回開催され、累計10万人以上の来場者を記録しました。そしていよいよ3回目の「四川フェス」が2019年4月20・21日に新宿中央公園で開催されます!
コンビニなどでも“麻辣”の文字が目立ち、「しびれ」ブームが到来中のこのタイミング。しかも今年参加する25店は本格四川料理の名店や、他では食べられないスペシャルなメニューを出す注目店ばかり。ますます期待が高まります。
四川フェス2018の様子
この四川フェスの実行委員長は、四川料理を愛し、その魅力を日本で広める活動をしている団体「麻辣連盟」の総裁・中川正道さん。23歳のときに四川省・成都に留学した中川さんは、そこで出会った四川料理の美味しさ、奥深さに衝撃を受けます。中川さんに輪をかけて美味しい物好きだったという中国人のルームメイトとともに、滞在中の4年間、とにかく四川料理を食べ歩いたのだとか。
四川省・成都/Getty Images
しかし帰国したところ、日本で食べられるのは本場の四川料理とは程遠いものばかり。そこで中川さんは四川料理を自作するように。また、30歳のときにワーキングホリデーで渡ったアイルランドでたまたま留学生たちに四川料理を振る舞ったところ、各国から来た留学生たちが大喜び。
「四川料理は、もっと世界に広まっていくんじゃないか?」
それは、四川料理の可能性を中川さんが感じた瞬間でした。同時に、自身の“ライフワークとなるもの”を探していた中川さんにとって、「四川料理を広めていく」というテーマが生まれていったのです。
代表的な四川料理の一つである、「宮保鶏丁」(鶏肉とピーナッツの唐辛子炒め)
しかし、どうやったら四川料理を広めることができるのだろう……? その方法について試行錯誤していた中川さんに、ブログという形での発信を薦めたのは奥様のチカさん。実はチカさん自身も四川省への留学経験があり、大の四川料理好き。そうして中川さんは2008年からブログを通して、四川料理の知識やレシピを発信し始めました。
やがて覚悟を決めてサラリーマンを辞め、フリーのWEBデザイナーに。同時に四川省じゅうの飲食店を200店舗取材した本を出版したり、WEBメディアを立ち上げたりと、活動を続けていきます。しかし、あくまでもそれらは、本業のWEBデザイナーの仕事の“傍ら”。やがて「好きなこと、ライフワークを仕事にしたい」……その思いもつのり、趣味で発信をするだけでなく、きちんと“仕事”にしていくためにプロジェクトを仕切り直すことに。
中川正道さんと、奥様のチカさん
そこで加わったのが、毎年11月に開催されている羊肉料理のイベント「羊フェスタ」を主催している、羊齧協会の主席・菊池一弘さん。北京への留学経験がある菊池さんとは以前から「何かやりたいね」と話していた仲ということもあり、四川料理を知ってもらうためのイベントを開催することに。そうして、2017年の「四川フェス」が開催されることになったのでした。
“好きなもの”だからこそ、熱を入れられる
この「四川フェス」が他のフード系イベントと大きく違うのは、広告代理店やイベント運営会社などはかかわらず、全て中川さんご夫妻と菊池さんが中心となって手がけているということ。「めちゃくちゃ大変です」と笑う中川さんご夫妻ですが、だからこそ集まる店は他のイベントではまず食べられないような店ばかり!
「2日間のイベントのために、4ヶ月間かけて準備してます(笑)。すごく非効率的なんですけど、やっぱり“好きなこと”だと熱の入り方も違いますから。私が四川省にいたのは1年間でしたが、すごく現地の方に良くしてもらった思い出が多いんですね。四川料理を広めることで、あの時の現地の友人たちが喜んでくれるんじゃないか……そんな思いもあるんです」(チカさん)
四川フェス2018の様子
「四川フェス」のサイトには「大人の文化祭」という言葉がうたわれています。自分たちの思いを、自分たちの手で形にする。そんな手作り感もまた、このイベントの魅力なのかもしれません。
中川さんご夫妻推薦! 今年の四川フェスで必ず食べて欲しいオススメ料理3点
そんなわけで、2019年の四川フェスで注目の料理を3点、ご紹介してもらいました。
中国で大ブームになった絶品・山椒油を使った一品
幺麻子・藤椒油「藤椒鉢鉢鶏」(税込700円)
実は麻辣ブームが起きているのは日本だけではなく、本場中国全土でもそうなのだとか。「この幺麻子食品有限公司の山椒油『藤椒油(タンジャオユ)』はもともと小さなレストランで出していたものが口コミで広まり、今では中国一の山椒油メーカーに。本当に香り高くて美味しいので、ぜひ食べてほしいです。私個人のイチオシ店です!」(チカさん)
鉢鉢鶏は茹でた鶏肉などを串に刺し、山椒油などと和えた四川省ではおなじみのメニュー。山椒油のクオリティの高さをダイレクトに実感できるはず!
日本ではまだ馴染みのない、四川風の肉まん
中國菜 老四川 飄香「四川包子」(税込500円)
いわゆる“四川風肉まん”ですが、昨年もかなり好評を博したメニューの一つ。実はこちら、中国の「松雲門派」という料理人一門に所属する証である「中国川菜松雲門派技藝傳承人」の称号を有する井桁良樹シェフのお店です。なんと去年は井桁氏をはじめ有名シェフたちが徹夜で肉まんを成形していたという裏話もあり、美味しいはずと納得……。「日本のコンビニで売ってる肉まんは広東風に近くて、筍が入ってて少し甘めですよね。四川風のものはもっと肉肉しく、甘みがない。花椒が入ってて痺れたりと、一度食べるとやみつきになりますよ」(中川さん)