本格的な中国料理の味を堪能できるファストフード店

ラフォーレ原宿といえば、ファッション、カルチャー、トレンドの発信基地であり、客も多く訪れるファッションビル。2階のフードエリアも「ヘルシー」「トレンド」をキーワードにしているだけあって、ここに来れば、食のトレンドを感じることができる。

美味すぎるスープが店誕生のきっかけ

2018年12月にオープンしたチャイニーズスタンド「Chipoon(チプーン)」もその一つだ。ピンクを基調とした店内で、フラミンゴのオブジェが目印。カウンター席はラフォーレ原宿らしく女性客が多いものの、男性客もちらほら。

実はこの店、銀座にある中国料理の名店「Renge equriosity(レンゲ・エキュリオシティ)」のオーナーシェフ・西岡英俊氏がプロデュースしている。西岡氏は新宿御苑の中国料理の名店「シェフス」の故・王恵仁氏に師事し、イタリア料理、スペイン料理なども経験。素材本来の旨味を最大限に引き出し、シンプルでありながら、既存の枠にとらわれない大胆さも持ち合わせた料理を創り出している。

壁面に描かれたフラミンゴのくちばしはレンゲ。店名の「Chipoon」は、「チャイニーズスプーン(=レンゲ)」から来ている

 

同店誕生のきっかけは、西岡氏が作った、野菜の旨味がたっぷりと詰まったラーメンのスープ。同店を運営する株式会社ドロムの齋藤悠氏が、このスープのあまりの美味しさに感動したことから、西岡氏とタッグを組み、素材本来の味を軸に、従来のファストフードのイメージを覆す、“中国料理の新ファストフード”を創り出すことになった。

 

ファストフードといえば、安くて早いものの、本格的な味を求めるのは難しいと思っている人が多いかもしれない。しかし、西岡氏の根底にある思いは、「美味しいものをつくりたい」というもの。

 

そんな熱い気持ちから生まれたのが、ヴィーガン対応のものを含む全4品のフードメニューだ。かつては健康への意識が高い人たちが食べていたヴィーガンフードだが、近年はその裾野が広がっている。肉や魚はもちろんのこと、乳製品も使わず、野菜のみということで、「美味しくなさそう」「物足りないんじゃないか」と思う人がまだまだ多いのも事実。だが、この店のメニューには、そうした考えを吹き飛ばすだけの驚きがある。

口に入れた瞬間に広がる風味豊かな味わいに悶絶

そのことが一番よく分かるのは、「ヴィーガンヌードル」(648円)。鮮やかな色の旬の野菜がトッピングされた、シンプルなラーメンだが、スープを口に含むと、その豊かで深みのある味が染み渡り、「もう一口!」とレンゲをすすりたくなること間違いなし!

「十数種類の野菜に加え、昆布やしいたけといった食材から旨味を引き出しているんです。もちろん化学調味料は一切使っておらず、自然の風味なんです」

 

そう話すのは店長の川畑直之さん。店はファストフードという形態ではあるものの、オリジナルレシピの香辛料やトッピングの食材など、極力店頭で作るようにしているという。注文して数分で料理が出てくるのに、そのクオリティの高さは目を見張るものがある。

同店のヌードルは、卵を使用していない麺と、動物性の食材を一切利用していないスープを組み合わせたヴィーガン対応が最大の特徴。もう一品の「ベジタブルタンタンヌードル」(756円)は、ベースとなる野菜のスープに、漢源花椒、朝天唐辛子、ラー油などの香辛料をふんだんに加え、ピリッとしびれる重層的な辛さが特徴のマーラー風タンタンヌードル。豆乳を原料としたチーズがたっぷりとかかっており、しっかり混ぜて食べることでコクとまろやかさが増し、やさしい味わいになる。

 

「この店に立つようになり、メニューを食べているうちに体の調子がよくなって、体重も減ったんです! カロリー控えめで栄養も豊富だからじゃないかと思っています。世界初の“痩せるラーメン”だと思っています(笑)」(川畑さん)

同店のもう一つの看板メニューがバーガー。中華まん風の白くてふわっとした食感が楽しめる生地をバンズにし、あふれんばかりの野菜と具材が入っている。卵を一切使わない豆腐マヨネーズと、自家製の中華甘みそ「甜麺醤(テンメンジャン)」をミックスした、コクのあるオリジナルソースが、味に深みを加えている。ここでぜひ味わいたいのはヴィーガン対応の「湯葉チャーシューバーガー」(486円)だ。

 

「湯葉はブロック状のものを薄くスライスして重ね合わせることで、鶏肉らしさと食感を高めています。バンズも注文が入ってから軽く蒸してオーブンで表面だけ焼くことで、香ばしさとふんわりした柔らかさを同時に楽しめます」(川畑さん)

梅シロップウォーターの「星子水」(378円)。右は、プーアール茶に紅茶と練乳を加えた「香港式ミルクティー」(540円)

 

「少し手間をかけると美味しくなる」と語る西岡氏の想いは、同店にもしっかりと息づいている。限られた調理時間の中で、最大限の手間をかけていることは、それぞれのメニューを味わえば自明のことだ。

 

「ファストフード」や「ヴィーガン」に対する先入観を一蹴し、「美味しいからまた食べたい!」と思わせる、新感覚の“チャイニーズファストフード”。テイクアウトも可能だが、できたての美味しさをぜひ自分の舌で確かめてほしい。

写真:原 務

取材・文:吉川明子