〈短期集中連載〉紅葉シーズン到来!行楽列車で食べるべき駅弁リスト

Vol.4 中国・四国・九州編

鉄道と紅葉を一緒に楽しめる路線を求めて、日本列島を北から南へ下ってきましたが、いよいよ今回は中国・四国・九州地方の駅弁&紅葉旅! まだまだこれからが本番の“南の紅葉”です。最終回となる今回は、中国・四国・九州地方のローカル駅弁を駅弁ライター望月崇史さんが紹介します!(Vol.1 北海道・東北編Vol.2 関東・甲信越編Vol.3中部・近畿編も要チェック!)

1.  鳥取駅「元祖かに寿し」:ベニズワイガニたっぷりのカニ寿司駅弁の元祖!

山陰海岸沿いをのんびりと走るローカル線・山陰本線。沿線には鳥取、米子、松江など、少し大きな街はあっても、車窓はのどかな景色が続きます。特に兵庫から鳥取にかけて日本海を望める余部橋梁(あまるべきょうりょう)の辺りは、美しい海と色づいた木々を一緒に楽しめる区間です。さらに11月に入って山陰海岸にもカニの季節がやってきました。

山陰を代表する食べるべきカニ駅弁といえば、鳥取駅の「元祖かに寿し」(1,200円)。昭和27年に販売が始まった、全国の“かに寿し駅弁”の元祖とされる駅弁です。酢の香りと共にいっぱいのったカニは、余部橋梁がある兵庫県北部〜鳥取県東部の港で水揚げされたベニズワイガニを使用し、カニの甲羅に似せた八角形の折、錦糸玉子には地元産の卵を使い、塩昆布と奈良漬のつけ合わせも食欲をそそります。カニの季節に合わせて山陰本線の列車でいただくもよし、山陰本線から分岐する因美線、伯備線、木次線など、中国山地越えのローカル線で食べても味わい深いことでしょう。

2. 高松駅「丸亀名物 骨付鳥弁当」:アツアツがうれしい丸亀名物の鶏肉料理がメイン!

岡山から瀬戸大橋を渡り、こんぴらさんで有名な琴平を経て四国山地に挑むのは、高知へ向かう特急列車の「南風(なんぷう)」号。阿波池田を出て、高校野球で有名な池田高校の野球練習場を過ぎると、いよいよ列車は四国随一の景勝地「大歩危・小歩危(おおぼけ・こぼけ)」に差しかかります。「大歩危・小歩危」は、吉野川の激流によってつくられたおよそ8kmにわたる溪谷。まるでアートのような奇岩がそそり立つ景色の中に赤や黄色の木々が映えています。もっと四国の紅葉を楽しみたければ「南風」も停車する大歩危駅で途中下車。大歩危駅は紅葉の美しい祖谷渓への玄関口でもあります。

そんな美しい景色を眺めながら食べるべき駅弁は、高松駅や丸亀駅で販売されている高松駅弁の「丸亀名物 骨付鳥弁当」(1,350円)でしょう。「骨付鳥」は、香川県丸亀市が発祥とされる名物料理。駅弁では若鶏の骨付きもも肉を丸々1本、特製スパイスで味付けして焼き上げています。加熱式容器に入っているので、まずは紐を引き抜いて5~6分待っているとほどなく、香ばしい匂いが漂ってきます。お好みで鶏油(チーユ)をかけていただきます。かぶりつけばジュワっと溢れてくる肉汁! なお加熱式容器は航空機に持ち込むことができません。紐を引き抜いて温かい駅弁を食べられるのも、実は鉄道旅の醍醐味なんです。

3. 人吉駅「栗めし」:ホームでの立ち売りで買いたい!この季節、より美味しくなる栗ご飯弁当

九州の中でも観光列車が目白押しなのは、熊本・八代と鹿児島・隼人の間を結ぶ「肥薩線」。この時期、紅葉が美しい球磨川に沿って走る八代~人吉間は“川線”、“矢岳越え”ともいわれる人吉~吉松間は“山線”と呼ばれています。この“川線・山線”の結節点・人吉駅は、“駅弁を買うべき”駅です。それというのも、今や全国的にも数えるほどとなった「駅弁の立ち売り」が行われているからなんです。

この立ち売りを務める菖蒲さんから、秋に買うべき駅弁といえば、何と言っても「栗めし」(1,100円)!  誕生から半世紀以上というロングセラー駅弁です。栗の絵が描かれた掛け紙を外し、栗形容器のふたを開けると大きめの栗が栗ご飯の上にゴロゴロッとのっています。栗ごはんには一緒にかんぴょうが炊き込まれていて、甘めの栗といいバランス。通年販売の駅弁ではありますが、やっぱり秋にいただくのは格別! しかも立ち売りの方とお金をやり取りして買うと、より美味しく感じられるはずです。

人吉駅の駅弁の立ち売りだけでなく、築100年をえる駅舎やスイッチバックなど、懐かしい鉄道風景がいっぱいの肥薩線。そんな風景と一緒に眺める紅葉もまた、郷愁を誘うことでしょう。ご紹介したエリア以外にも、全国各地にはまだまだきれいな紅葉や美味しい駅弁があります。この秋は、美しく色づいた木々と美味しい駅弁を心ゆくまで満喫してみてはいかがでしょうか?

 

※価格は税込

 

教えてくれたのは

駅弁ライター 望月崇史さん

 

1975年静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、ニッポン放送で放送作家に。番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年、およそ4,500個! 放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。「1日1駅弁」を基本に、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の執筆を行う。