目次
〈短期集中連載〉紅葉シーズン到来!行楽列車で食べるべき駅弁リスト
Vol.3 中部・近畿編
紅葉シーズン到来中! 意外と短い紅葉シーズンですが、新幹線網が発達した今だからこそできるのが、紅葉の“追っかけ”。数分おきに発車している新幹線にサッと乗って、いざ今まで見たことがなかった紅葉スポットへ。今回は中部・近畿地方のローカル駅弁を駅弁ライター望月さんの解説とともに紹介します。(Vol.1 北海道・東北編とVol.2 関東・甲信越編も要チェック!)
1. 大井川鐵道・新金谷駅「大井川ふるさと弁当」:明治創業の老舗が作る、懐かしさと美味しさを両立したおにぎり弁当
日本で唯一、1年間に300日以上SLが運行されている鉄道、静岡県の大井川鐵道。新金谷から千頭(せんず)まで大井川に沿って、時には渡ったりしながら、国鉄時代の古い蒸気機関車と客車に揺られておよそ1時間20分、のんびりと汽車旅が楽しめます。大井川の中流から上流へ進むにつれ、だんだんと南アルプスの山々が迫ってくるのに合わせて、周囲にはだんだんと色づいた木々が増え、列車に乗りながら秋の深まりを感じられます。
そんな大井川鐵道のSLに乗ったら食べるべき駅弁は、新金谷駅(金谷駅)で販売されている「大井川ふるさと弁当」(1,080円)です。明治時代からの歴史を誇る駅弁屋さん「東海軒」の金谷工場が手掛けているこの駅弁は、手触りのいい和紙の掛け紙に、竹皮をモチーフにした紙容器が包まれています。ふたを開けると、梅おにぎり2つに岩魚の甘露煮・野菜の旨煮・海老の佃煮など、懐かしさいっぱいのおかずが満載で、「大井川鐵道」オリジナルの絵はがきも添えられています。
ただ、紅葉の時期の大井川鐵道は正直言って、SLが前座! 終点・千頭で接続している、アプト式列車で有名な大井川鐵道・井川線(南アルプスあぷとライン)のエリアや、寸又峡温泉のエリアなど、まさに絶景三昧と言っても過言ではありません。駅弁でしっかり腹ごしらえをして、絶景への鉄道旅を楽しみましょう!
2. 富山駅「海鮮美食」:彩り豊かな“押し寿司の海鮮丼”!
東京から北陸・富山までは、北陸新幹線「かがやき」で2時間ちょっと。停車駅の多い「はくたか」号でも2時間台ですので、ずいぶんと近くなりました。そして想像以上に近くなったのが、「黒部峡谷鉄道」のトロッコ列車。東京6:28発の「はくたか」で乗れば、なんと!午前中のうちにトロッコの終着駅・欅平(けやきだいら)に到着できてしまいます。そのためには、富山のお隣・黒部宇奈月温泉駅で北陸新幹線を下車。駅前にある、富山地方鉄道・新黒部駅に乗り継いで宇奈月へ向かいます。
カエデ、ナナカマドなど赤の紅葉とブナなどの黄色の紅葉に、常緑樹の緑が混じって、3つの色が楽しめるという黒部峡谷の紅葉。そんな彩り豊かな紅葉を彷彿とさせる駅弁といえば、富山駅弁の「海鮮美食」(1,100円)! 北陸新幹線の開業に合わせ、“押し寿司の海鮮丼”をキャッチフレーズに誕生した駅弁の1つで、定番「ますのすし」のマスから始まって帆立、甘海老、玉子、マスのはらみ、ブリ、ベニズワイガニと赤や黄色などの海鮮食材がギュッと押されています。実は富山では昔から各家庭でさまざまな魚を「押し寿司」にして食べる文化があったそう。そんなご当地の食文化に思いを馳せることもできる人気の駅弁。見かけたら即購入をおすすめします。
3. 京都駅「京都牛膳」:神戸の人気店が手がける牛肉たっぷりの京駅弁!
紅葉の名所がいっぱいの古都・京都。神社仏閣の紅葉だけでなく、鉄道でも紅葉が楽しめるのが京都のいいところ。京都駅からJR山陰本線の快速列車でおよそ12分、嵯峨嵐山駅に隣接したトロッコ嵯峨駅から発車するのが「嵯峨野観光鉄道」のトロッコ列車。保津峡の風光明媚な景色はもちろん、線路沿いではたくさんのカエデが色づいています。このトロッコ列車が走っているのは、かつて山陰本線だった線路。複線化工事によって使われなくなったため、その線路を観光客向けに活用して生まれました。実は沿線のカエデは、開業に当たって沿線の名物に、という思いを込めて植えられたもの。以来四半世紀以上を経て、すっかり紅葉は嵯峨野観光鉄道の名物となりました。10~12月は、夜間のライトアップも行われていて、鑑賞用の臨時列車も運行されています。
京阪神エリアで駅弁を手がけているのは、神戸が拠点の「淡路屋」。この「淡路屋」が京都向けに作っている駅弁が、「京都牛膳」(1,000円)です。牛肉は十八番といってもいい淡路屋ですが、京都ということで、祇園・原了郭の「黒七味」や、京漬物の「すぐき漬」が添えられています。トロッコ列車の乗車時間は片道25分ほどですので、窓ガラスのない車両で紅葉や車掌さんのおもしろアナウンスを楽しんでいるとあっという間。つい食べるのを忘れてしまったら、天橋立・城崎温泉方面へ毎時1本の特急列車が運行されていますので、思い切って足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
※価格は税込
教えてくれたのは
駅弁ライター 望月崇史さん
1975年静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、ニッポン放送で放送作家に。番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年、およそ4,500個! 放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。 「1日1駅弁」を基本に、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の執筆を行う。