〈短期集中連載〉紅葉シーズン到来!行楽列車で食べるべき駅弁リスト

Vol.2 関東・甲信越編

本格的な紅葉シーズンが到来! 紅葉が楽しめるエリアを走る列車とともに、食べるべき駅弁を駅弁ライターの望月崇史さんに解説していただく短期集中連載。今回は関東・甲信越エリアのおすすめ紅葉スポットと駅弁を紹介します。(Vol.1 北海道・東北編はこちら!)

1. 下今市駅・鬼怒川温泉駅「SL大樹 日光埋蔵金弁当」:SLで楽しむ紅葉と駅弁!

鬼怒川を渡る「SL大樹」

 

関東地方を代表する紅葉スポットといえば、栃木県の日光・鬼怒川。このエリアで、東武鉄道が昨年から運行を始めたのが「SL大樹」です。「SL大樹」は週末を中心に下今市~鬼怒川温泉間を1日3往復。乗車時間は30分ほどと短めですが、本数が多く明るい時間から夜汽車まで楽しめます。日程に合わせてお好みの時間を選ぶことができるぶん、旅の自由度が高いのもうれしいですね。

そんなSL大樹に始発の下今市や鬼怒川温泉で買って乗り込むべき駅弁は、SLの運行開始に合わせて誕生した「SL大樹 日光埋蔵金弁当」(1,350円・税込)! 日光鱒鮨本舗が作る10万円を超える超高額駅弁として有名な「日光埋蔵金弁当」のお手頃価格のSLバージョンがこちら。黄金の掛け紙を外すとますの塩焼きや日光高原牛、湯葉などを使った日光らしいおかずのほか、目を引くのは蒸気機関車にちなんだ「スコップ」! 昔ながらの蒸気機関車が引く青い客車に揺られながら、駅弁と一緒に鬼怒川周辺の紅葉を楽しめるのはもちろん、鬼怒川温泉の先、龍王峡や川治温泉方面へ足を伸ばしても楽しいはず。練りに練った鉄道旅の計画を立てなくても、日光・鬼怒川エリアなら、SL・紅葉・温泉の最強トリオが、掘り出し物の駅弁旅を演出してくれます。

2. 小淵沢駅「甲州Wワイン弁当(しあわせ甲斐)」:新型特急でいただく新駅弁!

E353系電車

 

新宿から日本の屋根ともいわれる南アルプス、中央アルプス、北アルプスのふもとを目指すのは、中央線の特急「あずさ・かいじ」号。中央線の特急列車には、去年デビューしたE353系電車が続々投入されており、より快適な旅を楽しめるように。なかでも下りの「スーパーあずさ、あずさ」号(松本方面行)はおよそ2時間半をかけて標高35mあまりの新宿から、最高地点・955mの富士見まで、何度も山登りを繰り返す“登山電車”です。最初は高尾からの小仏峠、続いて大月からの笹子峠と来て、甲府からの南アルプス・八ヶ岳。車窓の色づいた木々を眺めれば、「あずさ」が時速100km以上の高速でグイグイと山を登っていく様子も感じられ、紅葉とワクワク感がダブルで楽しめる列車でもあります。

せっかく新しい特急車両に乗るなら、新しい駅弁を揃えてみるべきでしょう。その名も「甲州Wワイン弁当(しあわせ甲斐)」(1,100円・税込)。今年で創業100周年を迎えた小淵沢駅弁の「丸政」がこの秋発売した新作です。レトロモダンな雰囲気のボックスを開けると、赤ワインソースのハンバーグと白ワインソースの炭火焼肉がダブルで楽しめる甲州らしい駅弁です。なお小淵沢駅からは、JRの最高地点を通るローカル線・小海線が分岐。「あずさ」で食べてもローカル列車で食べても楽しめる逸品です。

3. 新潟駅「鮭の焼漬弁当」:秋の旅にもぴったりなロングセラー駅弁!

新潟の鉄道で行く紅葉旅といえば、例年なら、磐越西線の「SLばんえつ物語」号ですが、今シーズンは蒸気機関車が修理中のため残念ながらお休み。その中で乗っておくべき列車といえば、週末を中心に新潟~酒田間で運行されている快速列車の「きらきらうえつ」。というのも先頃、来年秋に同じ区間を走る新しい観光列車のデビューが報じられ、「きらきらうえつ」の去就が大いに注目されています。

「きらきらうえつ」が走る羽越本線の旅で食べておくべき駅弁が、新潟を代表する駅弁のひとつ、三新軒が製造する「鮭の焼漬弁当」(1100円・税込)です。昭和27年発売で65年以上のロングセラー駅弁! 新潟の郷土料理として知られる「鮭の焼漬」ですが、三新軒では焼いた鮭を一晩、秘伝のたれに漬け込んで作っているそうで、箸がスッと入って身離れもよく風味も豊か。これが新潟産コシヒカリとよく合いご飯が進みます。

 

新潟へ行くならぜひチャレンジしていただきたいのが、羽越本線・坂町駅から分岐して、山形・米沢へのんびりと向かう「米坂線(よねさかせん)」の紅葉旅。新潟・山形県境にある荒川峡の紅葉を存分に満喫することができます。なお、坂町駅を発車する米坂線の列車は、1日6本。しかも明るい時間帯に走る米沢行の列車は7:42、9:34、13:33発の3本のみとなります(※2018年11月時点)。ハードルは高いですが、乗り越えた時の充実感はすばらしいもの。鮭も遡上するという荒川を列車でさかのぼりながら、旬の食材を使った郷土料理に舌鼓を打ち、美しい景色を楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

教えてくれたのは

駅弁ライター 望月崇史さん

 

1975年静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、ニッポン放送で放送作家に。番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年、およそ4,500個! 放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。 「1日1駅弁」を基本に、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の執筆を行う。