【噂の新店】天麩羅さだむ

2025年7月に浅草で毎週木曜の夜だけ間借り営業しグルメ界で大絶賛、予約解禁日には瞬時に1カ月の席が埋まる超人気店の「天麩羅さだむ」が東新宿に移転し、全日営業となりました。行きたくても行けないと嘆いていた食いしん坊たち、チャンス到来です!

あの週1営業の幻の店がついに本格始動!

路地裏で一際目立つ佇まい
路地裏で一際目立つ佇まい

東新宿駅から徒歩5分ほどの路地裏にゆるりとオープンしたのが「天麩羅さだむ」です。間口は狭いですが、黄色の壁がいい目印となります。こちらは週に1度、浅草での間借り営業で人気を博したグルメ界の注目店。予約できたら奇跡!と言われるほどの予約困難店でしたが、このたび東新宿に移転し、月〜日曜(不定休)のランチ&ディナー営業となりました。

トトロ、たこ焼き、プーさんなど、箸置きが可愛い!
トトロ、たこ焼き、プーさんなど、箸置きが可愛い!

「やっと毎日揚げられる店ができました」と話すのは店主の大友庄太さん。映像会社でADとして働いていましたが、伊豆大島の漁師である父が取った魚を知ってもらいたいという思いから25歳で料理人の道へ進みました。はじめは寿司店に勤めますが、扱う魚種が伊豆大島で取れるものとは違うと、天ぷら職人を目指します。

大友庄太さん
大友庄太さん

2年間、都内の天ぷら店で働きながら休日の1日を間借り営業して実力をつけました。衣や油、揚げ方は働いていた店で学んだだけでなく、食べ歩きして「ここだ!」と思った店に事情を話して教えを乞い、独自の天ぷらを創りあげました。

泡立てて気泡を含ませます
泡立てて気泡を含ませます

大友さんが目指すのは“伊豆大島の食材をおいしくする天ぷら”です。粉と水を手早く混ぜ冷蔵庫でしっかり冷やした衣に、「太香胡麻油」に「綿実油」を独自の配合でブレンドした油を使い、羽衣のように軽やかに仕上げます。

慣れ親しんだ食材をおいしくしたい、その思いが導き出した新しい天ぷらの形

油の温度は180°C前後をキープします
油の温度は180°C前後をキープします

ランチ5,500円、ディナー11,000円、13,200円、16,500円のおまかせコースの他、9月4日から新たにおこのみ天ぷらが始まりました。季節の突き出し3品(1,500円)をオーダーすれば天ぷらは1品(400円〜)から。軽くつまみたい、好きな種だけ食べたいというニーズに応えてくれます。

「ブダイ」
「ブダイ」

本日は11,000円のおまかせコースから大友さんおすすめの品をご紹介します。「以前は天ぷらの花形、車海老を1品目に出していたのですが、自分らしさをどう表現するかを考えて、やはり大島の魚を出すことにしました」と、はじめに供されたのは「アカブダイ」。断面を見ればわかるようにほぼレアに仕上げていますが、これだけの厚切り、弾力も強い! 一切れはあっさりしていますがうまみたっぷりの大島の塩「海の精」で、もう一切れは鰹と昆布と干し椎茸の出汁に醤油と味醂で味をつけた自家製の天つゆで。

「ピーマン」
「ピーマン」

丸ごと揚げたピーマンを口にして何より驚かされたのは種の存在。普段捨ててしまう種が熱を帯びることでプチプチとした心地よい食感と、きゅうりを思わせる味わいとなり衝撃的なおいしさ。薄衣の中でじんわり蒸されたピーマンの肉質はしっとりとして甘みが強く、特有の苦みや渋みはどこへやら。ピーマン嫌いな人さえも虜にします。

「アカイカ」
「アカイカ」

アカイカは中にゲソを詰め込んでいます。胴にはワタも入っているので塩辛に似た味わいです。胴のねっとりとやわらかい食感とゲソのコリコリした食感が時間差で押し寄せ、その食感のコントラストがおもしろい! 胴にゲソを入れる大友さんのセンスが見事!

「明日葉」
「明日葉」

衣から透ける美しい緑色に目を奪われながらかぶりつくと、サクッといい音の後に新鮮だから味わえるいい苦みが口中を楽しませます。伊豆諸島を代表する食材である明日葉、この野生味は大友さんの衣だから調和するのだと思わせます。

伊豆大島への愛が炸裂する“島天ぷら”に感動!

捌くのが速い!
捌くのが速い!

大友さんが穴子を捌きはじめました。目打ちしてから数十秒、あっという間に開いていきます。

「穴子」
「穴子」

パチパチと弾ける音を聞きながら待つこと数分。捌きたて、揚げたての穴子は上品な香りが立ち上がります。透明感のある身はホワッホワ、皮はしっとりとして食すとスッとほどけていく極上の食感です。

「穴子の肝」
「穴子の肝」

「信頼している豊洲の仲買さんの選ぶ穴子の管理やその後の処理が素晴らしいので出せるんです」と供されたのは穴子の肝。嫌な臭いが出やすいそうですが、そのようなことは一切なく、コリッとした食感の後から肝特有のいい苦みが喉を通ります。当然ながら1匹から1つしか取れない超一級の希少品。もし3人で来てしまったら争奪戦勃発間違いなし!

〆はウツボです
〆はウツボです

こちらで絶対に外せないのが伊豆大島産のウツボです。島ではポピュラーな食材ですが天ぷらの種としては極めて珍しい。

「ウツボ」
「ウツボ」

皮と身の間にあるゼラチン質が溶け、コラーゲンたっぷり。「ウツボはタコや伊勢海老を好んで食べるので身は甘みとうまみがあっておいしいんですよ」と大友さんが言うように、獰猛な見た目からは想像できないほど味わいは繊細です。

炊き立てご飯
炊き立てご飯

〆ご飯は天丼か天茶を選べます。土鍋で炊いたご飯は粒立ちがよく、ふっくらとしてやわらかい。天ぷらの油分やタレを受け止めます。

「天丼」
「天丼」

これまでの種が見えるような薄衣とは一線を画した厚衣のかき揚げです。ふわふわっとした衣の中からは白海老と三つ葉が顔を出します。衣は厚めですが油っぽさはまったく感じないのは絶妙な火入れによるもの。タレは衣に染み込みすぎないよう2、3度くぐらせる程度にとどめ、ご飯の上に。なぜ衣が厚めなのか、なぜこのタレなのか、なぜこのご飯なのか、大友さんの意図が伝わる完全調和の天丼です。

注ぐのは鰹と昆布で取り、濃口醤油で味を調えた出汁
注ぐのは鰹と昆布で取り、濃口醤油で味を調えた出汁
「天茶」
「天茶」

茶碗にご飯を盛り、出汁を注いだところに揚げたてのかき揚げをのせます。ジュジュッと鳴った“おいしい音”は聞き逃しません! ふわっとしたかき揚げが少しずつ出汁と馴染んだところをご飯と出汁と共にかきこむ。3つが渾然一体となれば至福の瞬間が訪れます。天丼、天茶、どちらにするか悩むところ。どちらも食べたい!

邪道と言われても自分らしい天ぷらを揚げていきたい!
邪道と言われても自分らしい天ぷらを揚げていきたい!

店名に掲げたのは父の名前。父と兄が命懸けで取った海の恵みを、多くの人に食べてもらい、そのおいしさを知ってもらいたい、この気持ちだけで天ぷら職人となり、店を開いた大友さん。「ピーマンもアカイカもウツボも好みが分かれるかもしれませんが、いいなと思ってもらえたらうれしいです」と語ります。

草履海老や団扇海老、とこぶしもオンメニューする予定
草履海老や団扇海老、とこぶしもオンメニューする予定

次は何が出てくるのだろうと、カウンター越しに見ていてワクワクする、“町天ぷら”ならぬ“島天ぷら”。幾度となく食べたはずの天ぷらなのに、その記憶の“最高”を上塗りしてくれる出会いがここにあります。

教えてくれた人

高橋 綾子
フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人生そのものに。その間に培った食のデータと人脈を武器に“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ日々。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

※価格は税込

文・高橋綾子 写真・溝口智彦