希少な静岡素材を香りとともに軽やかに味わえる料理の数々

「下田ブルーのウフマヨ」600円

ビストロでは定番の前菜として知られる「ウフマヨ」も、静岡県下田市の認定ブランド卵「下田ブルー」を使用し、独自の感性で仕上げている。

半熟にした卵に炭の香りをつけたマヨネーズソースをかけ、下には食感のアクセントとしてフライドオニオンと春巻きの皮を。さらに外側には卵黄の塩漬けを削って散らしてある。共にいただけば、下田ブルーの優しい甘みにカリカリとした食感、塩気と旨みが加わり、奥深い味わいのスターターとして楽しめる。

青い殻が特徴的な「下田ブルー」。都内で使用しているレストランはほぼない

「下田ブルー」は、24時間放牧養鶏で飼われている南米チリ原産のアローカナという鶏の卵。静岡県産の無添加にこだわった自家製発酵飼料で育てられ、下田の海の幸や山の幸を沢山食べていることによりオメガ3が通常の卵の約4倍含まれている。クセや臭みがなく、やわらかな甘みがある味わいが特徴だが、普通の鶏に比べて産卵率が低く量産化が難しいため、県外ではなかなかお目にかかれない希少な卵だ。

中はとろっと半熟状。フードロス削減のため、殻の色がきれいな青にならなかったものや大きさが不揃いのものも仕入れ、その日入荷した卵の大きさに合わせて火入れ時間を微調整している
「駿河湾産 本えびととうもろこしのムース コンソメジュレ」2,200円。ムースは季節ごとに旬の素材に変更し、通年提供予定
「駿河湾産 本えびととうもろこしのムース コンソメジュレ」2,200円。ムースは季節ごとに旬の素材に変更し、通年提供予定   写真:お店から

静岡ブランドに認定されている「本えび」(ヒゲナガエビ)のおいしさを存分に味わえる「駿河湾産 本えびと とうもろこしのムース コンソメジュレ」もオーダーしたい一品。

本えびは、甘エビを超える甘みと旨みに加え、サイマキエビ(車海老の幼魚)のようなプリッとした食感を併せ持つ味わいが特徴。しかし、足が早いため地元のごく一部のみで消費され、一般の市場には出回らない。そんな“幻のエビ”の仕入れを、同店では特別なルートで実現。−60℃で急速冷凍し、新鮮な状態で届けられている。

本えびは4本使用。2人でシェアしても食べられる

本えびはわずか1秒、湯がいてプリッとした食感を際立たせ、旬のとうもろこしのムースと、鶏出汁ベースのコンソメに本えびの頭の香りを移したジュレを添えている。上にのせたディルやセルフィーユ、エストラゴンなどハーブのサラダで清涼感もプラス。
口に入れた時の旨みが弾け広がる本えびの味わいにまず驚き、ムースやジュレの優しく広がる余韻にも魅了される。

「豚足のバロティーヌ 焦がし玉ねぎとバルサミコのソース」2,000円

フレンチではクラシカルなメニューながら、豚足=煮込みのイメージが強い人には新鮮な出会いとなるのが「豚足のバロティーヌ 焦がし玉ねぎとバルサミコのソース」。

豚足を5、6時間炊いて骨を外しシート状に。豚のファルス(パテ状の詰め物)を包み、さらにじっくり火を入れておき、オーダーが入ってから輪切りにして表面に粉を付けカリカリに焼き上げて提供。ソースは焦がし玉ねぎのソースと、バルサミコのレディクション(煮詰めて凝縮させたソース)の2種類を添えている。

中のファルスはしっとり軟らかで、表面と豚足は“カリぷる”。食感のコントラストも楽しい

豚足のゼラチン質のぷるっとした食感と味わいを感じつつ、ソースの焦がし玉ねぎの香ばしい旨みやバルサミコの酸味が味の輪郭を際立たせる。炭の香りを移したヴィネグレットソースをかけて上に添えたセルバチコ(ワイルドルッコラとも呼ばれる辛みのあるハーブ)も爽やかなアクセントに。

オーダー後にカリカリに焼き上げる
「金目鯛の鱗焼き ソースデュグレレ」4,600円

魚料理は、静岡の下田港が全国一の水揚げ量を誇ることでも知られる金目鯛を使用した一皿。
金目鯛は鱗を逆立てず、あえて寝かせながらじっくり焼くことで表面に焼き色が付き、鱗がミルフィーユ状に重なった部分の蓄熱によりカリカリした食感が持続。一口ごとに香ばしい風味が広がる。
こうしてカリカリに焼き上げた金目鯛を、魚のあらから引いた出汁を煮詰めたグラス・ド・ポワソン、煮詰めた白ワインと白ワインビネガー、バター、フレッシュトマト、エシャロット、パセリを合わせたクラシカルなデュグレレソース、削ったレモンピールの爽やかな香りとともにいただく。

付け合わせには浜名湖産の青のりを混ぜたマッシュポテトと、万願寺とうがらしやオクラなど季節の焼き野菜を。常時5種類以上盛り付けるというボリューム感もうれしい。

こだわりの焼き方でカリッと香ばしい風味に。常に理想の仕上がりにするために、金目鯛はサイズを指定して仕入れ、冷蔵庫内の風で鱗を少し乾燥させてから調理している
「牛フィレ肉のロースト ソースポワブル」5,800円。付け合わせの旬の野菜も、牛肉とともに藁焼きして香ばしく仕上げてある

肉のメイン料理は、オープン記念として贅沢に牛フィレ肉を使用(10月以降はサーロインに変更予定)。
まずは鉄板でじっくりと火入れし、中はしっとりジューシーに。仕上げに藁焼きにすることで、藁の香ばしい香りを纏わせている。ソースは牛すじから引いた出汁・ジュドブフをベースに、ピリッとした辛みのある緑胡椒と黒胡椒を合わせたポワブルソース。
牛肉の断面には、シェフ自ら静岡の山に入って摘んだ山椒の実を塩漬けにしたものを添えている。山椒の清涼感ある香りと辛み、藁焼きの香ばしさが牛肉の旨みを引き立て、暑い日でも最後までもたれずにあっさりと味わえる。

牛肉と付け合わせの野菜を藁焼きに。オープンキッチンのため、炎を上げて焼きあげる様子をカウンターから見られるライブ感も魅力

このメニューで藁焼きを選択したのは自らのストーリーがあると山田さん。
「祖父母が昔米農業を営んでいたため、藁がある風景は子どもの頃の自分にとって身近なものでした。その情景を何かで紡いでいきたいという思いがあり、料理に落とし込んでいます」

また、付け合わせにたっぷり使用している野菜類は、取材時は各地から仕入れていたが、9月から自然豊かな箱根の山間部で年間300品種を超える固定種・在来種野菜を自然農法で栽培している「フードカルチャー・ルネサンス」という農家からの仕入れをスタート。野菜自体の味が濃厚でおいしいので、今後は付け合わせだけでなく、その時々に入荷した野菜を主役としたメニューも差し込みで展開していくそうなので、野菜好きはぜひチェックを。

食を通し、人や素材とのつながりができる体験を

店名は「Nodo=結び目、つながり」 と「Arc=弧」 を組み合わせた名前。人と人との交流や素材との出会いなど、さまざまなつながりができる場所でありたいとの思いが込められている

リラックスできる空間で、静岡を中心としたすべての素材に敬意を持ち、ストーリー性のあるメニューを展開している「Bistro Norc」。
今後は、ペットフレンドリーな屋上テラス席のオープンやコースメニューの展開も考えているとのことで、さらに利用シーンが広がりそうだ。
まずは都内ではなかなか味わえない希少な静岡食材との出会いを体験しに、足を運んでみて。

※価格はすべて税込

文:當間優子、食べログマガジン編集部 撮影:ジェイムス・オザワ