数字で読み解くハンバーガーの今。2018年を代表するハンバーガー店とは?

昨年に続き、今年も新たに発表された「食べログ ハンバーガー 百名店 2018」。ご当地グルメとしての存在感を確立するなど、日々進化するハンバーガーの現在を知るべく、ハンバーガー探求家・研究家の松原好秀さんに、食べログ ハンバーガー 百名店 2018に選出されたハンバーガー専門店を分析&食べに行くべきハンバーガーを教えてもらいました。

松原 好秀:ハンバーガー探求家、評論家。2014年に『ザ・バーガーマップ東京』(幹書房)出版。ウェブ・雑誌の連載のほか、テレビ・ラジオの出演も多数。2017年夏には映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』の公開記念キャンペーンの企画協力も担当した。

point 1 他ジャンルとの比較で見えてくるハンバーガーの実力

アイコウシャの「ブルーチーズバーガー」/出典:YamaNe79さん

 

昨年に続き、2年連続で選出された「食べログ ハンバーガー 百名店」。今年初登場の「うなぎ」や「焼鳥」に先駆けて、「食べログ 百名店」の開始初年からあるカテゴリーということで、その人気ぶりがうかがえる、いま最も注目される食べ物のひとつだ。今年「2018」の最高点は東京・水道橋「アイコウシャ」の3.74。これで同店は2年連続の国内バーガー最高得点の店となった。ただし現在、平日の日中しか営業していないので、ファンとしてはもう少し長い時間楽しみたいところだ。

 

上位100店の平均は「3.5596」。去年2017年が「3.5581」なので、文字通りの微増である。これまでに発表された「食べログ 百名店 2018」の他のジャンルと比べると、「ラーメン TOKYO」が3.7002、「そば」が3.7479、今年初登場の「うなぎ」が3.7681と、少なからぬ開きがある。「グルメとしてのハンバーガー」はまだまだ生まれたての新分野。大先輩である「ラーメン」や「うなぎ」に一日も早く追い着くよう、今後ますますの発展と成熟を期待したい。

 

からつバーガーの「スペシャルバーガー」/出典:楽趣味777さん

point 2 初登場、最古参さらに10年選手店の登場により進化を実感

初登場は8店。100店中の最古参は創業1961年、佐賀の「からつバーガー」。最も若い店は「ヘンリーズ バーガー 秋葉原」で、2017年9月にオープンしたばかりだ。100店の平均営業年数は約11年。「3年で7割の飲食店が潰れる」などという定説がある中、これだけの数の、しかもごく狭い分野に特化したニッチな専門店が、まさか10年も続こうとは……。それこそ10年前には「10年選手」のバーガー店はほとんどなかった。ハンバーガーは確実に進化している。

point 3 日本で一番ハンバーガー専門店が多い東京で最も店舗数が多い街は?

複数の店舗が選ばれた店が12もある。そのうち本店・支店を合わせた「全店」が選ばれたケースが3つ。東京・駒沢と六本木ヒルズに計2店を構える「エーエス クラシックス ダイナー」。代官山と秋葉原に2店の「ヘンリーズ バーガー」。極めつけは、白金・広尾・恵比寿の3店全てがランクインした「バーガーマニア」。どんな立地においても一定の高評価を得る、その力量は素晴らしいの一語だ。

 

都道府県別の最多は東京都の63店……というところまでは予想がつくと思うが、では、どこの区が一番多いかと言うと……答えは「ブラッカウズ」や「GRILL BURGER CLUB SASA」「ザ グレートバーガー」などがある渋谷区の14店。次いで港区12店、目黒区6店。23区内でもやはり西側、および南半分に多いようだ。

 

以上見てきた「食べログ ハンバーガー 百名店 2018」を読み解くポイントの中から、今年2018年を代表する名店・3店をご紹介しよう。

プロが選ぶハンバーガー 百名店 2018でまず押さえるべきはここ!

全3店が堂々のランクイン。その人気の秘密は意外なギャップにあり「バーガーマニア」

出典:emitakeさん

 

昨年に続いて今年も3店すべてがランクインした「バーガーマニア」。白金・広尾・恵比寿という狭いエリアに集中しつつも、3店それぞれがその街・その地域に根差し、愛されている。その人気の秘密は何だろう。

 

出典:ジュリアスさん

 

オシャレな店のイメージとは裏腹に、バーガーマニアは実は案外ワイルドな、武骨なバーガーを出す店だ。グリドルで強く焼いた国産牛110gパティを名店「峰屋」の酒種バンズで挟み込む。そのゴツッと骨のある食べ口は3店どこで食べても一切変わらず。1号店がオープンした2008年当時の印象とも変わらず、10年経った今でも同じままだ。オーナー守口さんが作り出したスタイルを、崩さずそのまま守り続け、そして拡大させてきた……バーガーマニアが愛される理由がまさにそこにある。

 

その根底には、武骨で荒っぽい「マニア魂」が脈打っている——それがバーガーマニアのハンバーガー!

初登場店代表!焼肉屋が仕掛ける肉が決め手の注目店「ヘンリーズ バーガー 秋葉原」

2015年12月に代官山にオープンした「ヘンリーズ バーガー」は、2017年には秋葉原に2号店をオープンし、瞬く間に都内の注目店になった。

 

出典:ymhroさん

 

市ヶ谷の「炭火焼肉なかはら」が始めたバーガー店である同店最大の売りは「肉」。一頭買いしたA5ランク黒毛和牛処女牛のうち、焼肉には適さないが旨味が強い“スネ肉”を中心に、ハンバーガーのパティに使っている。つなぎ無し、ゴリッと粗め・硬めな肉感で、ギュギュッ!と鉄板に押し付けて焼く「スマッシュグリル」によって出来た焦げ目がプンと芳ばしい。バンズは高田馬場「馬場FLAT」特注。

 

写真:お店から

 

バーガーメニューは3品のみ。どれもチーズバーガーで、違いはパティとチーズの枚数というめずらしいスタイルだ。秋葉原店は席数30以上で3階まであり、週末は多少並ぶものの、行けば大体座れるという、観光客・買い物客には心強い休憩スポットでもある。秋葉原店限定の「チーズメンチカツバーガー」も好評販売中。

ハンバーガー専門店最多の街で最も“東京的バーガー”が食べられる「レッグオン ダイナー」

写真:お店から

 

ハンバーガー百名店最多の渋谷区の店にして、この夏、創業10周年を迎えた渋谷の「レッグオンダイナー」。渋谷といってもハチ公前から歩けば15分はかかる、國學院大學手前の住宅街に店はある。そんな“僻地”にありながら、これだけ評価されるのにはもちろん理由がある。

 

出典:YamaNe79さん

 

店主の横溝さんは、ハンバーガーを積ませたら右に出る者なきハンバーガー作りの名手。15cmは超えるであろう背高のバーガーを、串も楊枝も使わずに直立させることが出来る。トマトの赤、チーズの黄、アボカドの緑……カラフルに美しく積み重ねられたその立ち姿は、これぞCool Japan! 日本の建築技術の粋だ。

 

パティはオージービーフ115g。甘味の強いクラシカルなバンズは「新橋ベーカリー」製。ソースはオリジナルのBBQソース。きれいに折り畳まれたレタスは人形町「ブラザーズ」仕込み。それらが織り成すハーモニーの妙。

 

創業以来10年の経験が積み重ねられ、ますます磨きがかかる都内屈指の実力店。“東京的”バーガーを代表する一店だ。

取材・文:松原好秀

 

※点数は2018年8月17日時点