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【噂の新店】PER TE
千葉県稲毛で数多のフーディーたちに“日本一のマルゲリータ”と言わしめた「PER TE」が赤坂に移転しました。タッグを組んだのがイタリア20州の伝統料理を学んだ料理人、さらにトレンドの薪を使うとあってオープン前にして1ヶ月半先まで取れる予約は一瞬にして埋まったと聞けば、きっとすごい店に違いない!
あのピッツェリア「PER TE」が薪イタリアンとなって赤坂へ進出!

赤坂駅から徒歩5分。喧騒から街が落ち着きはじめたあたりに「PER TE」はオープンしました。入口には薪が積まれ、その堂々とした佇まいはおいしそうな雰囲気が漂い、ただものではない空気感を醸しています。

中へ入ると一際目を引くのが大きな変型テーブル。聞けば椅子の向きを変えることで一人でも向かいを気にせず居心地良く過ごせ、10人で貸切のように一体感を作ることもできるそう。その先には3席のシェフズテーブルがあり、そちらも楽しそう。

店を見渡すと奥にはテーブル席があり、扉を閉めずとも個室の雰囲気を感じられます。どの席も一貫しているのは“薪窯が見える”こと。そう、この店の主役は薪窯なのです。

その窯を操るのはピッツァイオーロの鈴川充高さん。勤めていたイタリア料理店のイタリア人シェフと食べに行った「サヴォイ(現 聖林館)」のピッツァに感動し、ピッツァにのめり込みます。「パルテノペ 広尾店」(現在閉店)ででピッツァを焼くまでになったところで本格的にピッツァを学びに渡伊。イスキア島のレストランで1年修業し帰国すると今度は勤めていたレストランでパンにハマり勉強するために渡仏。リヨンの薪窯ベーカリーで修業し半年ほど経つと「トラットリア・エ・ピッツェリア アミーチ」の創立メンバーとして呼ばれ、真のナポリピッツァ協会認定店にした立役者となりました。2018年、ナポリピッツァ職人世界選手権(カプートカップ)日本大会で、マルゲリータかマリナーラで技術を競う部門で優勝という栄誉を手にして独立、千葉県の稲毛区に自身の店をオープン。思わず「どうやって行くの?」と聞いてしまう場所でしたが、近隣だけでなく遠方からもそのおいしさに惚れ込み多くの人が足繁く通い続けたのです。

人気絶頂の中、諸事情で2024年3月に閉店、休業に入った鈴川さんを再起させたのはこの窯でした。ピッツェリアで働いていたというデザイナーと作り上げた厨房にはピッツァ窯に加え、熾火焼きの窯があります。“2つの薪窯と動線を考え抜いた最高の厨房”で18時からはおまかせのピッツァコース(10品19,800円・税込)を、21時以降はアラカルトで提供します。
一度食べたら絶対に忘れないピッツァ!

ピッツァコースはスペシャリテの「マルゲリータ500」から始まり、薪焼きの野菜、魚、スープ、肉、ピッツァ2種、パスタ、口直しのアイス、デザートという流れ。パン屋で働いていた時に100種類以上の粉で試作し開発した鈴川さんの生地。気温と湿度によって練り方と水の温度を変え、きっちり焼いて粉の甘さを引き出します。パンの代わりに提供する世界最古のピッツァと呼ばれる「マストゥニコーラ」で生地のおいしさを味わえます。トマトソースは2種類のトマト缶をブレンドし、モッツァレラはイタリア・カンパーニャ州のものを使用しています。

窯に入れてから約90秒。「窯が良い状態なので置くだけです。ほとんど動かすことなく窯に任せて焼き上げるのが職人」と、最後に高温の上方にピッツァを浮かせて焼きの微調整をし、薪の香りをまとわせます。

「マルゲリータ500」の500はカプートカップで獲得した満点の数字。その時のように最高のマルゲリータを作る!という思いを込めて名付けたそう。トマトソースの赤、バジルの緑、モッツァレラの白、そして生地の焼き色が作る色のバランスが美しい!「使っている無添加のモッツァレラは質が良いので焼き色がつかないんです」と鈴川さん。

モッツァレラはトロトロ、バジルの香りに次いで、トマトの甘みと酸味が順番に口中に広がります。やはり白眉は生地! 粉のほのかな甘みが口福の余韻となります。生地の配合は企業秘密ですが、どうしてもこの甘みの正体が知りたいと懇願したら「フランスパンの粉が入っています」と教えてくれました。

こちらは「マルゲリータ500」とともに定番メニューとなる「黄金のトマトソースのマリナーラ」はイタリアのイエローダッテリーニミニトマト缶2種類を混ぜたソースに大阪「キノシタファーム」のミニトマト「アマメイド」とスライスしたニンニクとオレガノをのせています。

味付けは塩のみ、なのにとっても甘い、未だかつて味わったことのないソースです。「トマトは皮を外し、潰し方にもこだわりがあります」と鈴川さん。マルゲリータには酸味が、マリナーラには甘みが強調され、「トマトソース」という名称で一括りにしてはいけないと実感させられます。

フワッとしてトロッとして断然軽く、粉の甘さが最後まで心地よく残る鈴川さんの生地。その生地との味のバランスを徹底的に考えたソース、そして厳選した食材。ピッツァの代名詞であるマルゲリータとマリナーラをどれだけおいしくできるかを追求してきた鈴川さんのそれらは圧倒的です。
イタリアを知り尽くしたシェフによる一品料理

パスタやスープなどの料理を担うのは小池教之さん。中学生の頃には料理をしはじめ、将来は料理人と決めていた小池さんは大学3年生の時から修業をスタート。国内数店に勤めたのち渡伊。帰国後は「インカント」で10年間シェフを務め独立。「オステリア・デッロ・スクード」をオープンしました。パスタだけでも50種類ほどのレパートリーを持ち、イタリア全州の伝統料理をそのままの味で作れるシェフは、日本はおろか、イタリアにもいないでしょう。まるでイタリア料理本のような凄腕シェフです。

国産のトリッパとギアラを混ぜて煮込み、自家製のサルサソースとマスタードを添えています。シンプルな料理だから食材が肝心。灰汁が一切出ないほど新鮮ゆえビアンコに。自家製マスタードのやわらかな酸味とプチプチした粒の食感がいいアクセントになっています。

パスタは“おばあちゃんの手法”で麺棒を使って生地を延ばしています。このタリアテッレはもっちりとして食後感はとても軽い仕上がりです。

「ソースはボローニャ地方の伝統的なレシピですが、この店ならではと挽き肉は塊のまま熾火で燻して香りをつけています」と小池さん。大小さまざまな形の挽き肉はうまみも十分。至福の味わいに身震いします。
ミッションは“ピッツァで星を獲る”!

強力なパートナーの小池さんとは20年ほど前の同僚という間柄。その後、それぞれ別の店に移り自分の店を持ちましたが、タイミングが合って再びこちらで集結しました。薪窯を担当する北村ジョン正寛さんとの3人で、“ピッツァをハイエンドに”というコンセプトのもと美食の世界へ導きます。

1枚のサイズが大きいピッツァはシェアするのが通常なので大衆料理と思われがち。「こだわりの空間で上質な食材を使ったコース料理を提供することでカジュアルというイメージを払拭したい。ピッツァで星を獲りにいきます!」と笑顔で意気込みを語ってくれました。

とはいえみんなでワイワイ食べるのはイタリアンの醍醐味。それは21時以降のアラカルト営業で存分に楽しめます。変型テーブルで偶然向かい合わせになった人とシェアするなんてこともあるかも。コースorアラカルト、好みのスタイルで来店時間を選ぶのもイマドキな感じ。予約受付開始数分で満席になったのも頷けます。次回は6月1日0時から予約サイト「OMAKASE」で7月の予約(コース料理17時半、アラカルト20時半〜に変更)受付が開始されます。これは何としても席をGETしたい!