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ブームの中で、進化を遂げたかき氷
暑くなると食べたくなるかき氷。古くは『枕草子』に登場するくらい、日本古来のおやつですが、ここ数年ブームの兆しを見せています。専門店が登場したり、昔はなかった見た目や味わいのかき氷が流行したり……。今では、夏に限定せず一年を通して楽しめるお店の数もずいぶん増えました。
ブームの中で、かき氷はどのように進化を遂げたのか? 成熟しつつあるかき氷の世界の中で、特に注目のジャンルとそのおすすめ店を、かき氷マニア・原田麻子さんに解説していただきます。
原田麻子さん
学生時代に京都で食べたかき氷のおいしさに感動し、以来その虜に。今では主食として年間1,500杯をたいらげる、別名「かき氷の女王」。かき氷への探求心はとどまるところを知らず、会社を辞めて、かき氷専門店「氷舎mamatoko」(中野新橋)をオープン。かき氷好きとして「マツコの知らない世界」にも2度出演。2018年夏は、監修したかき氷が「メットライフドーム」(埼玉西武ライオンズ)、「COBI COFFEE AOYAMA」「COBI COFFEE box」「COFFEE VALLEY」「J.S. BURGERS CAFE」にて販売中。
見た目にも、食感にも驚きが。「エスプーマ」のかき氷の魅力
今回ひもとくのは「エスプーマのかき氷」。エスプーマとは、スペイン語で「泡」のこと。食材やソースを専用の器具に入れて泡状にする手法です。もとはスペインで生まれたものですが、近年日本でも、かき氷をはじめ、ラーメンのスープ、チーズフォンデュなどさまざまな料理に取り入れられています。
「2015年頃にかき氷の爆発的なブームがあり、種類も増え、特徴的なかき氷が多くなりました。その頃からよく見られるようになったエスプーマのかき氷ですが、下北沢の『しもきた茶苑大山』さんがエスプーマかき氷の発祥の店と言われています。それまでも、エスプーマがちょこんとのったようなかき氷はあったのですが、氷の全面を泡がしっかりと覆っている『エスプーマのかき氷』は、2013年に大山さんが作ったのが初めてなのではないでしょうか。
エスプーマのかき氷は見た目に華やかですし、氷をあまり“いじめ”ないで済むのがいいところだと思います。クリームをのせるタイプのかき氷も多いですが、クリームの方が、氷が潰れたり、溶けてべちゃっとしやすいので。それにエスプーマはクリームより食感がかるいので、食べたときに驚きがあるのも人気のポイントだと思います。
ちょっとマニアックな話なんですが、エスプーマを作るボンベには『亜酸化窒素ガス』を使うタイプと『二酸化炭素』があって、味が変わります。二酸化炭素のボンベのほうが安価なのですが、作ったエスプーマに炭酸のピリピリした味がつく。例えばレモンのソースがレモンソーダのような味になります。あえてソーダ味にしたいときはそちらを使い、味をつけたくないときは『亜酸化窒素』タイプを使っているお店もあるんですよ!」(原田さん)
原田さんおすすめ・エスプーマのかき氷が食べられるお店
しもきた茶苑大山 喫茶室(下北沢)
全国茶業連合青年団が認定する茶審査技術の最高段位十段(茶師十段)が2名いる、日本茶専門店(茶師十段の認定者は13名/平成30年8月現在)。喫茶室で、お茶を使ったかき氷が食べられます。
「微糖抹茶」(選べる別添え蜜つき) 1,150円 出典:★No.7さん
「ふんわりとしたエスプーマの『微糖抹茶』は、お茶屋さんのかき氷だけあって抹茶の風味がしっかり生きています。初めて食べたときはその食感にも味にも驚きました」(原田さん)
しもきた茶苑大山 喫茶室
住所 東京都世田谷区北沢2-30-2 2F
営業時間 月・金~日 14:00~18:00 木 14:00~19:00
定休日 火・水(その他、臨時休業あり)
※要整理券
銀座のジンジャー(銀座)
しょうがの魅力を発信する「銀座のジンジャー」の本店。数多くのジンジャーシロップを販売するほか、カフェでは、ジンジャードリンク、ジンジャーを使ったかき氷を提供しています。
「こちらのかき氷は、オリジナルの『ジンジャーミルク』がベースのものがほとんど。『しょうがとこの味って合うんだ!』という発見が楽しいお店です。月替わりのかき氷にエスプーマが使われているほか、『杏仁エスプーマ』『カマンベールエスプーマ』などの選べるトッピングも」(原田さん)
8月限定の「杏子杏仁」1,350円 写真/お店より
8月のマンスリー氷「杏子杏仁」は、杏仁シロップをかけた氷に杏仁エスプーマがのっています。中には杏子の実、杏仁豆腐、杏仁シロップが入り、さらに別添えで杏子シロップがついた、オリエンタルな一品。
※「杏子杏仁」はしょうが不使用です。
ブンブンブラウカフェウィズビーハイブ(旗の台)
「体によくておいしい」をテーマに据えたお店。ラーメンとかき氷が絶品です。
「こちらのエスプーマは、サラリとしたタイプ。定番メニューのいちごエスプーマは、見た目も味も間違いなくだれにでも好まれる一品です。ピスタチオエスプーマは、ナッツの味が濃くておいしい。中から赤いベリーが出てくるのも気分が上がります。ちなみに、冬になると、ピスタチオエスプーマは表面にバーナーで焼き目をつけた『冬バージョン』に切り替わります」(原田さん)
「いちごエスプーマソース」864円 写真/お店より
「ピスタチオ(夏バージョン)」1,080円 写真/お店より
茶匠 清水一芳園(京都)
「じつは今、関西で『エスプーマかき氷』が大流行中です。まず東京で流行ったものが関西に流れる、ということもありますが、華やかな見た目が地域柄好まれるのかもしれません」(原田さん)
京都・三十三間堂近くに佇む、茶問屋直営の厳選素材を使った茶スイーツが人気のお店「茶匠 清水一芳園」では、自慢のお茶を使ったかき氷が食べられます。
「清水一芳園さんのかき氷は、波打つように絞り出しているので見た目が美しい! 上品な味わいは、お茶屋さんの、そして京都ならではのかき氷、という感じがします。通年商品の宇治抹茶のほか、期間限定で、『ごま』『塩きなこティラミス』『ブルーベリーヨーグルト』などのエスプーマ氷も作っていらっしゃって、何度行っても楽しめるお店です!」(原田さん)
「宇治抹茶氷エスプーマ仕立て(通称:亀)」1,080円 写真/お店より
食べてみたいかき氷は見つかりましたか? 次回は、「チェーン店のかき氷」「パティスリーのかき氷」を紹介予定。お楽しみに!
※すべてのお店で、かき氷は通年販売です
※価格は税込です
取材・文/斎藤涼子(食べログマガジン編集部)