出世ごはん
デキるビジネスパーソンはこんなお店で食べている! 元銀座のホステス&開運アドバイザーの藤島佑雪が、かつての同伴その他の経験から見極めた「出世する店」を「おいしい理由」とともにご紹介!
No.10 とんかつ史上、イノベーションを起こす!とんかつ with メープルシロップ
とんかつ 都
今回ご紹介するのは麻布十番にできた「とんかつ 都」さんなんですが、その前に麻布十番とはどのようなキャラをもつ街なのか、ご説明申し上げたく存じます。
麻布十番、ひと呼んで「ジュウバン」は家賃も高いイメージがありますが、最寄りの駅が麻布十番でも、実際の住所が麻布十番という1〜4丁目にはそんなにすごいマンションや豪邸のある一角ってないんですよね。むしろ、庶民的な商店街があり、昔から住んでいる方も多い下町の雰囲気。なんですけれども、広尾、元麻布といった高級住宅地に隣接しているのと、ゴールドマンサックスなど、いわゆる外資系の企業が入っている六本木ヒルズのお膝元であり、慶應、聖心、麻布といった名門校やインターナショナルスクールおよび各国大使館が付近にあるため、独特の華やかさをもつエリアになっています。
そんなこんなで、夜は外資系のビジネスパーソンや芸能人を含むみなさんがガンガン飲み歩き、日中はそんな方々の奥さまやホステスや愛人なんかが、お買い物したり歯医者に行ったりしているわけですよ。
その道すがら、ジュウバンから広尾に向かう道の途中にできたのが「とんかつ 都」さんなのです。なにしろ、いくつかのスーパーを使いこなす港区界隈のマダムが青山「紀ノ国屋」、広尾「明治屋」とともにしょっちゅう利用する「スーパー ナニワヤ」の隣ですから、気になってしょうがないわけですよ。清潔感のある白地に黒々と店名が記された暖簾がかかってるだけで「なんか、よさそう」なんですから。いざ、カラカラと引き戸を開けると、パーッと明るくて、カウンターがメインということもあって、和食の割烹のような凛と引き締まった感じです。奥には窓の外の緑を望むテーブル席も。
わたくし、生まれてこの方ずっと、ロース派だったのが、ここ1カ月ほど、急にヒレにハマっておりまして「上ヒレかつ」を定食で注文。その衣がとってもキメ細かくて薄い! お肉はやわらかく、味があるのにあっさり。暑い季節に向くタイプのとんかつです。で、調味料がトレーにいくつも並んでいるのですが、都特製ソースにフランス産ゲランドの塩、ボリビア産ウユニの塩にだし醤油なんてものまであり、工夫いろいろ今どきのお店だなあと思っていたら、なぜかメープルシロップが。しかもオーガニック。なにこれ?と思ってボトルを手に取ると「とんかつに是非お試し下さい」という札付き。せっかくなので試してみると、上品なかつに自然な甘みがやさしくマッチして、悪くありません。お塩を加えた方が甘じょっぱさのバランスがいいように感じました。
でも、おもしろいですよね。とんかつにオーガニックのメープルシロップ。「とんかつにメープルシロップかけるんだよ!」は、とんかつ史上、確実にセンセーショナルなできごと。こちら、どうやらお肉の卸がオーナーさんだとか。どうりでお肉がおいしいわけですが、お肉を知り尽くした専門家が「これだ!」というような独自路線のとんかつを揚げつつ、新しい味わいの提案をするというところに、プロフェッショナルな技術をもつビジネスパーソンならではの出世の秘策があるような。技術をベースに、ちょっとしたアイデアでイノベーション。なおかつ、押しつけがましさはなく。
おつまみもあって、軽く飲んだりも可。夜はここから飲みに繰り出す出世パーソンの拠点にもなりそうな、そんな一軒でございました。