世界の食シーンを変えたnomaのDNAを引き継いだレストランが誕生

あのnomaが東京へ? そんな噂が駆け巡り、東京だけでなく世界中のグルメたちから注目を集めていたレストラン「INUA(イヌア)」が、ついに6月29日オープンした。

「世界で最も予約のとれないレストラン」の異名を取り、「世界のベストレストラン」では4回のNo.1を取った実績を誇る、デンマーク「noma」。そのDNAを引き継いだレストランは東京でどんなアプローチを見せてくれるのだろうか。

どんな食材を使っているのか? nomaとの相違点は? どんな内装なのか?

そんな多くの好奇心を掻き立てるまさにブランニューなレストランの魅力と注目ポイントをレポートする。

まずは基礎知識。nomaとは?

2003年、デンマーク・コペンハーゲンで誕生して以来、ローカルの食材を駆使した創造性と革新性に富んだ料理はもちろん、インテリアや器、カトラリーに至るまでオリジナリティを貫くnoma。「ここにしかない」体験を求めに世界中から多くの人が訪れ、デンマークの経済を変えたとも言われ、その経済効果に「Nomanomics(ノマノミクス)」という言葉まで誕生したほど。

nomaのヘッドシェフ、レネ・レゼピ氏は食におけるイノベイターとして、世界中のシェフたちからリスペクトされる存在だ。

なぜ東京に?

そのレゼピ氏の右腕として腕をふるい、リサーチ&開発の担当者としても活躍してきたのが、今回INUAでヘッドシェフに就任したトーマス・フレベル氏だ。

伝説のポップアップイベント、「ノーマ・アット・マンダリン・オリエンタル・東京」(2015年開催)で来日した際、日本の食材や風土に魅了されたという。以来、日本に何度となく訪れ、全国の生産者や食材を見て回ったというフレベル氏は東京でレストランを開くことを熱望していたとか。

その熱意が形になるきっかけとなったのが、KADOKAWAとnomaのパートナーシップの実現である。出版・コンテンツ事業で知られるKADOKAWAがなぜ?と思う人も少なくないだろうが、インバウンド事業推進の取り組みにおいて「食」もコンテンツの一つと捉えたからだという。デンマークでのnoma目当ての観光客の増加を見ても、その判断は至極真っ当と言えるだろう。

INUA初日をレポート

さて、ここからはレポート。偶然にも(というか完全に棚ボタ)知人に誘ってもらい行けることとなった初日の席。どんな料理なのか、インテリアはどんなテイストなのか期待はマックスに膨らむ。

ノルディックスタイルの居心地のいい空間

 

60席あるテーブルは、ゆったりとした配置でくつろげる雰囲気。グレーを基調とした北欧らしいモダンで居心地のいい空間だ。スタッフのユニフォームもグレー。ヘッドシェフ自らもスタッフに混じってテーブルにサーブするなど、フレンドリーでカジュアルな雰囲気だ。

オープンキッチンからはスタッフたちのキビキビした動作が見られ、活気ある掛け声が聞こえてくる。

13皿全て完走して感じる世界観

料理は全部で13皿。アルコールペアリングはワイン、ビール、日本酒など多彩なラインナップで6種類という内容。そのなかの数皿をピックアップして紹介しよう。

沖縄のスナックパインと柑橘類を使った一皿からスタート。甘さと酸味に加え、自家製の七味が強いアクセントとなっている。

その後もヤリイカの出汁に焼いた枝豆とロケットの花をあわせた料理、島バナナと味噌のクリスプのパイなど、日本の食材を使いながら、スパイスやハーブをふんだんに使った皿が続く。どれも鮮烈で独創性にあふれているけれど、これみよがしに奇をてらっているようなものでは一切ない。日本国内を渡り歩き、出会った食材に対する情熱とリスペクトがひしひしと伝わってくるような、丁寧で滋味にあふれた料理ばかり。

 

野菜やフルーツを使った軽やかで多層な味わいの皿が続いた後、コース中盤はほっくりと温かみがあり旨みを押し出した、少し和食を彷彿とさせるような料理に変化。舞茸を5日間熟成させてから3日間燻製したというなんとも時間も手間もかかった料理や、野菜の花を湯葉で包んだものなど、そこかしこに日本の風土を感じさせる。

そして、デザート前の最後の一品に。

テーブルまで持ってこられた土鍋の蓋が開かれると、そこには一面の……

蜂の子が。

炊き立ての白米の上に、彩りも美しいハマナスの花びらとともに、蜂の子がふんだんに盛り付けられている。

白米とともに炊かれた柔らかい蜂の子と、揚げてサクサクとした蜂の子、2種類の食感が楽しめる趣向だ。日本の郷土色豊かなこの食材が、見事に独自のスタイルに仕立て上げられ、その底力を見せ付けられた一品だ。

デザートは豆乳を使った冷たい一皿と、餅。

最初から最後まで一貫して、日本の食材を使い、そのポテンシャルを最大限に引き上げる仕事をした皿で構成された13皿。

間違いなく、「ここにしかない」体験があるレストランが誕生したようだ。

 

 

料理はコースのみ29,000円、アルコールペアリング16,000円~、ノンアルコールペアリング10,000円(税、サービス料別)

 

*予約はINUAホームページのみ(電話での予約は不可)

inua.jp