目次
心地よくておいしい。鎌倉パンをのんびり楽しめる3軒
パンのためなら全国津々浦々、どこへでも出かけて行く。そんなパンラバーたちを夢中にさせる、パン激戦区のひとつが鎌倉。舌の肥えた大人が集まる鎌倉は、新鮮な魚介類や鎌倉野菜など、関東近郊では指折りの食材の宝庫としても知られる場所。だからこそ、日々の食卓を彩るパンにも逸品が求められるのかも。
そんな、数多ある鎌倉の名店のなかで、鎌倉ならではのパンを楽しめるところとは? 「食べログ パン 百名店 2018」の特集でも、その幅広い知識とパン愛を語ってくれた、〈こんがりパンだパンクラブ〉のひのようこさんをナビゲーターに迎え、厳選の5軒をお届け。第1回は「イートイン編」として、カフェも兼ねた3つの人気店を紹介する。
麹酵母に魅せられた店主が作る、体に沁み入るパンやスープ
1. kamakura 24sekki
鎌倉駅から鎌倉山方面に向かって歩いて約20分。北条氏常盤亭跡の向かいの、木々が生い茂る一帯の小道沿いにひっそりと佇む、築46年の古民家をリノベーションした店が「kamakura 24sekki」。2011年にオープンしたこの店は、パンそのものの魅力もさることながら、和の要素と北欧の家具などがうまく調和するカフェスペースも人気の理由のひとつ。古代小麦や蔵つき麹酵母を使って丁寧に作られたパンが並ぶ棚には、オーナーシェフの瀧澤智美さんが選び抜いたオーガニックの調味料やお茶なども置かれている。
原材料や酵母の説明が丁寧に書かれたポップを読んでいるだけでも勉強になる。どのパンも売り切れ必至なので予約が賢明
「居心地が良すぎて、読書でもしながらのんびりと長居したくなる。訪れるだけで体にいいことをした!という気持ちになれるんです」とひのさん。「瀧澤さんが体調を崩されたことをきっかけに食材や調理法に気を配るようになったとのことも関係しているのかもしれませんが、何を食べても体に優しい気がします」とも話してくれました。実際、パンにもカフェメニューにも、肉・魚・乳製品・卵・砂糖などは使っていないとのこと。
このパンが食べたくて
ベジタリアンやヴィーガンの人も安心して食事が楽しめると評判。県内の農家から届けられる、固定種・在来種の種から無農薬・無施肥で自然栽培された野菜がたっぷり!
野菜が主役!旬を丸ごと味わうスープセット
「ベジサンドイッチ&自然栽培やさいのスープ」シノワサンド 1,270円
カフェの人気メニュー「ベジサンドイッチ&自然栽培やさいのスープ」は、季節の野菜をぎっしり挟んだサンドイッチと、同じく季節の野菜やハーブのだしだけで作るスープのセット。野菜は神奈川県内の農家から届けてもらっているそう。「サンドイッチシノワはパンの間に揚げた小麦ミートが挟んであるのですが、肉じゃないの?と思うような、しっかりした味で、ボリューム的にも満足。スープも薄味なんですが、野菜そのものの味がしっかりわかるもので、普段自分がどれだけ濃い味つけに慣れているかに気づきます。記憶に残るスープです」
ほんのり甘酒が香る、じわりと優しい人気の甘酒パン
「甘酒カンパーニュ」L 490円、M 270円
自然栽培玄米の蔵つき麹のみで作った自家製甘酒を、麹酵母のパン生地に練りこんで発酵、焼き上げる「甘酒カンパーニュ」は、この店の人気者。「優しい甘さと食感が楽しめる、香りのいいパン。そのまま、もしくはオリーブオイルをつけて、シンプルに食べるのがいいのではないでしょうか。素朴なおいしさを噛みしめて味わってもらいたいですね。パンクラブに集まる人たちにもファンが多くて、みなさん予約して購入されているそうです」
鎌倉で38年。父子で守るドイツパン&菓子一筋の名店
2. ベルグフェルド 本店
鎌倉駅東口から徒歩約20分のところにある、鎌倉パンを代表する名店。神戸のフロインドリーブで修行した現会長の山田明さん、妻の和子さんが1980年にオープンした。清潔感溢れるウッディな店内で食べる、焼きたてのパンを使ったシンプルなサンドイッチや、ドイツビールと一緒に楽しむブレッツェルなどが人気。ひのさんは「カフェはアットホームな雰囲気が素敵。休みの日にゆっくりしたい店です」と話す。
店舗で購入したパンをカフェで食べることも可能
「ベーカリーには有名なブレッツェルからどっしり系のライ麦パンまで、さまざまなタイプのドイツパンがずらり。スライスの仕方や食べ方なども色々教えてもらえるので、ドイツパンに慣れていない人でも安心です」とひのさんも太鼓判。パンの下のショーケースにはお菓子が並んでる。
このパンが食べたくて
ドイツパンのおいしさをシンプルに味わえる、ハムやソーセージを挟んだサンドイッチなどのランチメニューが評判。休日にはドイツビールと一緒に楽しみたい。
パンと相性抜群!隣のデリカテッセンのハムやソーセージをドイツ流サンドイッチに
「ベルグサンド (スープ+コーヒーor紅茶orハウスワイン(赤or白)+デザート付)」 1,296円
隣の店舗が空いた時に「どうせなら自分が好きな店に入ってほしい」と山田会長が呼び寄せたという、手作りハム・ソーセージを売るデリカテッセン「アルトシュタット」のハムやソーセージがランチのメニューに登場。看板の「ベルグサンド」はもともと、山田家の休日のブランチメニューだったそう。ひのさんも「これを食べるとドイツに行った時のことを思い出します。ビールと一緒に食べるとなおおいしい! ここで食べて気に入ったハムなどは、帰りにお土産にするのがお決まりの流れですね」とうれしそう。
隣接する手作りハム・ソーセージ店「アルトシュタット」。国産の良質な豚肉や牛肉を使い、添加物を最小限に抑えて作ったハムやソーセージは、ぜひパンと一緒に買って帰って。
ベーカリーで購入したパンを、カフェでも味わえる喜び
「塩ツノ」130円、「レーズンライ」1/2本 265円、1本 530円、「ザルツブレッツェル」150円
カフェではメニューにあるものだけでなく、ベーカリーで購入したパンを食べることも可能。もちろん、塊のパンをカットしてもらうこともできるので、せっかくならリクエストを。「南ドイツ名物『ザルツブレッツェル』もおいしいのですが、北ドイツで食べられるという『塩ツノ』は、岩塩とキャラウェイシードがたっぷりのせられていて、ビールのおつまみにぴったりです」。甘いパンとコーヒーの組み合わせもおすすめ。
和モダンな空間でプレミアム食パン&極上パンスイーツを堪能
3. café recette 鎌倉
「お店の中に流れる空気がまさに鎌倉! 友達とおしゃべりしながらまったり過ごすには最高です」とひのさんが話す、パンスイーツ専門カフェ。隣接するプレミアム食パン専門店「Bread Code by recette」と、パン好きにはおなじみの通販専門店「recette」のパンをさまざまな形で楽しめると評判になり、オープンするやいなや、行列必至の人気店となった。
長谷寺や由比ヶ浜の海水浴場からも歩いて10分程度という絶好のスポットにありながら、大正時代に作られたという古民家をリノベーションした店舗はとても静か。パンを食べるシーンを考えながら作られたという家具工房KOMAの木工家具が、くつろぎの空間を見事に演出しています。器や小物なども、パンのおいしさを引き立てるために選び抜かれたものだそう。
このパンが食べたくて
そのまま食べても絶品の最高級食パンをもっとおいしく、バラエティ豊かに。フレンチトーストが有名ながら、その他のメニューも一度は試してみたいものばかり。
ハムとチーズの塩気が食パンの風味を引き立てるクロックマダム
「平飼卵で作る“クロックマダム”」1,100円
厚めにスライスしたrecetteの「@shokupan(アット食パン)」に、桜のチップでスモークしたロースハムとカマンベールチーズ、それに平飼卵の目玉焼きを挟み込み、上からモッツァレラチーズをトッピングした、ゴージャスを極めたクロックマダム。「パン+αのおいしさが楽しめるのがここのカフェの魅力。このクロックマダムも、家では絶対に作れない、絶妙の焼き具合です」とひのさん。
食パン好きなら必食!高級食パンを最高の状態で食べ比べ
「トースト3種類食べ比べセット」(自家製ジャムとバター付き)1,000円 ※「Bread Code by recette」の山型プレーン・角型プレーン・角型リッチのプレミアム食パンを薄切り(2cm)で提供/+200円で1枚をrecetteの食パンに変更可
「東京の高級食パン通販の先駆け、recetteが出したカフェだけあって、トーストの味わい、香り、食感ともに格別。粉の香りやクラムの食感などもしっかり楽しめる食パンは、こうやってシンプルに食べるのが一番! 蒸気でトーストがベチャっとしないよう、金網に置かれているのもいいですね」とひのさん。ちなみに、この「パンが冷めないプレート」も販売している。
三浦生まれの高級卵とパンがコラボ。独特の食感のオリジナルパンケーキ
「姫様のパンケーキ(ベリー)」980円、「自家製ジンジャーエール」630円
三浦半島発の高級卵「姫様のたまご」を贅沢に使い、Bread Codeの食パンを粉状にしたものを生地の中に混ぜ込んだ、新しいタイプのパンケーキ。「パン粉をパンケーキにするという発想がユニーク。香ばしい香りと、スフレとパンケーキの間くらいの不思議な食感がたまりません」。パンケーキのメニューは4種類で、毎週木曜日と金曜日だけ登場、しかも1日15食限定という希少性もあり、今やフレンチトーストと並ぶ人気メニューになりつつある。生姜スライスがたっぷり入った自家製ジンジャーエールもひのさんのお気に入り。
次回は、テイクアウト編。こちらもお楽しみに!
PROFILE
ひの・ようこ
〈こんがりパンだパンクラブ〉主宰。〈ベッカライ徳多朗〉
写真:安彦幸枝
取材・文:山下紫陽