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【THEご褒美スイーツ 〜知っておきたい通な店〜】
「食事と同じくらい、スイーツにも絶対手を抜きたくない!」と、日々美味なるスイーツを探し求める甘いもの好きさんにお届けする本連載。スイーツの歴史研究のみならず、製菓にも精通するお菓子の歴史研究家・猫井登さんが太鼓判を押す、ご褒美スイーツを紹介します。
〈第12回〉「and parfait」(アンド パフェ)
「and parfait」は、京浜急行・大森海岸駅の近くに2023年2月にオープンした、パフェ専門店。ここでは、芸術的な美しさと味わいにストーリー性を持ったパフェを楽しむことができる。
【ご褒美スイーツその①】「マンゴーパフェ」
期間限定の、旬のマンゴーを使った「マンゴーパフェ」。いわゆる伝統的なパフェグラスではなく、スタイリッシュなワイングラスに、適度な空間を残しつつ構築されている。
崩さないように気をつけながら、ホワイトチョコ、ココナッツメレンゲを手でつまんでいただく。すかさず、フレッシュな完熟マンゴーの角切りもフォークで。柔らかなホワイトチョコの甘みと完熟マンゴーの重厚なうまみの重層的な味わい、マンゴーのねっとりとした柔らかさと、香ばしく焼かれたココナッツメレンゲのカリッとした食感のコントラストが素晴らしい。
マンゴーの右側はひんやりとしたマカデミアナッツアイス。中にはマカデミアナッツがゴロゴロ。異なった温度、味わい、食感が楽しめる。マンゴーの下に敷かれた、薄焼きのクッキーのラングドシャーで、ちょっと箸休めならぬスプーン休め。
いよいよ中盤戦に。 左下は、マンゴー&パンションのソルベ! マンゴーの濃厚な甘み・うまみとパッションフルーツの爽やかな酸味のバランスが素晴らしい。周辺には、フローズンマンゴー、パイナップルのコンポート、フランボワーズの赤が、彩りにアクセントを与えている。
終盤戦では、カルダモン、ジンジャー、クローブ、シナモンなどを加えたスパイシーなホワイトチョコチャイクリームが味わいを大きく変化させ、最後まで食べ手を飽きさせない。これに、にゅるっとした食感の白ワインのジュレ、アクセントにサクサクしたホワイトチョコのフィヤンティーヌ、そして最後は一番底の濃厚なマンゴーソースでシメ。
いろいろなパーツが溶け合った味わいも格別だ。見事な味わいと食感のストーリー構成!
【ご褒美スイーツその②】「4種のショコラとバナナのパフェ」
こちらは「チョコレートとバナナのパフェを作ってほしい」というお客さんの声から生まれた定番商品。
パフェに添えられた、キャラメルショコラのソースをかけていただく。ピュンと縦に伸びているのが、ルビーチョコ。ピンクカカオを原料とするピンク色のチョコレートで、やや酸味が感じられるフルーティーな味わい。
グラスのふちには、絶妙なバランスで、ホワイトチョコで作った網の上にスライスしたバナナと、小さくキュートなチョコレートのシューアイスがのせられている。バナナはいわゆる完熟系ではなく、あっさりとした味わい。
シューアイスは、やや塩味を利かせたシュー生地が濃厚なチョコアイスとベストマッチ。なんとシュー生地の底にホワイトチョコのサクサクを忍ばせるという細かい技が! これが食感にアクセントを加えている。
グラスの中央には、もう一つのシューアイスが鎮座。それを囲むように、フレッシュバナナのスライスとバナナチップ。彩にフランボワーズ。
ここで、大きく味わいに変化が!
レモンをソース状にしたレモンカードと甘さ控えめの黒糖のジュレ、そしてバニラアイスが登場! その下には、球状のパールクラッカーが忍ばせてあり、食感にも意外性を持たせている。
最後のシメは、バナナの角切りとチョコレートソースで。 一般的にチョコレートとバナナのパフェでは、チョコレートの味わいが前面に出て濃厚なイメージがあるが、こちらはあっさりと軽やかで、意外にもバナナを引き立てる構成となっている。
〆パフェの願いも叶う! じっくりパフェと向き合える空間を実現した営業スタイル
店名のand parfaitは、「~とパフェ」という意味だが、「一人とパフェ」「仕事とパフェ」のように、生活の一部にパフェを取り入れてほしいという思いが込められている。
いつでもパフェが食べられるようにと、お店の営業時間は、12:00〜17:00と18:00〜24:00の2部構成となっている。
仕事が辛かったときも、疲れたときも、一人でパフェと向き合って、自分時間を楽しんでリセットしてほしいとの考えから、店内はおひとりさま用のカウンター席がメイン(2人用のテーブル席も2つあり)。
いつでも自分時間でお店を出られるようにと、会計はお店の入り口にある自動注文機で先払い決済。パフェの詳細な構成を知りたい人は、席にある二次元コードを読み込めば、自分の携帯でチェックできるようになっている。お水もセルフ。
これらは、お店の運営をオーナー1人でやっているという理由にもよるが、すべてはストレスフリーにパフェを楽しむための設計となっている。
オーナーパティシエの杉田浩輔氏は、日本菓子専門学校を卒業後、15年以上、パティスリーのほかホテルで修業。ホテルではアシェットデセール、ウェディングケーキ、コースのデセール、ビュッフェのデセールと、さまざまな形態のお菓子作りを経験された。
最終的にパフェを専門にしたのは「パフェ」がフランス語の「parfait(完璧)」に由来するとおり、すべてのパーツを完璧に作り出せる技が必要とされる、スイーツの中のスイーツだという考えからだという。
以前、筆者はパフェの特集記事の中で、パフェの特質として以下の諸点を挙げた。
- 容器が必須の構成要素となっている(縦長、脚付き、透明など、それなりの容器に入れられなければならない)
- イートインが前提とされ、テイクアウトは想定されていない
- 食べる順番が規定されたスイーツである(上から下へ)
- 時間の経過とともに変化するスイーツである(溶ける、混じる)
- 崩れやすい素材でも積み上げることができ、多彩な断層の美を表現できる
上記の中でも、重要なのは後半の3点だと考えているが、こちらのお店では、お客さんが写真撮影をすることを念頭において、やや冷ための状態でパフェを提供。グラスの中に適度な間(空間)を設けた断層美を展開しつつ、味わい、食感ともに最後まで飽きさせないストーリーを展開。
是非、お店で「自分とパフェ」の時間を堪能してほしい。
※価格はすべて税込