南麻布に新星現る!

店主の深坂勇輔さん

3月27日、南麻布にオープンした「深坂」が高感度な客たちで賑わいを見せています。店主の深坂勇輔さんは高校卒業後、「服部栄養専門学校」へ入学。料理の道へ進みます。担任教師からの紹介で「食べログ 寿司 TOKYO 百名店」にも選出された「鮨 たかはし」でアルバイトを始め、その後、こちらも百名店選出の「鮨 はしもと」へ。3年間、裏方できっちり基礎を学び「創和堂」のオープニングスタッフとして転職。メニューにはこだわりの酒の肴が毎日50〜60品ほど並び、かなり鍛えられたと話します。独立準備期間は「鮨 崚」を間借りして寿司を握っていました。

珍しい形のカウンター

働き始めた時から「寿司が食べたい人もつまみが食べたい人もお酒が飲みたい人も、満足できる店を作る」という将来のビジョンを定めていた深坂さん。おまかせコース料理(22,000円、30,000円)は20時半が最終入店、席が空き次第アラカルトになります。営業時間は火・水・木・金が17:00〜0:00、土・日・祝が12:00〜14:30/17:00〜22:30で一斉スタートもなし、当日入れるように10席のうち2席はフリーで空けておき、バー使いできるように3席を用意するという自由なスタイルです。

つまみの域を超えたつまみ

福岡県うきは市の「日月窯」で作陶している福村龍太氏作の器

おまかせコースは初めにつまみが3品、珍味盛り合わせ、握り10貫、間に名物の季節の餡掛け酢飯を挟み味噌汁という流れ。このつまみは鮑の肝とウニを酢飯に混ぜ、蒸した鮑とグリーンピースをのせた贅沢な一品。一粒ずつ丁寧に薄皮を剥き半分に切ったグリーンピースは主張しすぎず、蒸したての鮑の温度でほんのり温まった酢飯と交わり深い満足感を与えてくれます。

ホタルイカの春巻

ホタルイカはミンチにしたものとそのままのものを使い、とろんとした食感の中に歯応えも感じさせます。それにしてもホタルイカと行者ニンニクがこんなに合うなんて! 仕上げに振りかけた山椒の風味もアクセントになり、この組み合わせの妙はまさに深坂さんらしい。

左から「牡蠣のオイル漬け」「生しらすのキムチ」、その上が「鮎のパテ」右隣が「あん肝」

本日の「珍味盛り合わせ」は、北海道余市の「あん肝」、静岡の「鮎のパテ」、静岡の「生しらすのキムチ」、三陸の「燻製牡蠣のオイル漬け」の4種。さまざまな料理を作ってきた経験を生かした、工夫ある珍味にどうにも酒が進んでしまいます。

砂糖と醤油、みりん、水のみで味を入れている

つまみの定番である「あん肝」は店ごとに味や食感が異なる、いわば“店の顔”。低温でゆっくりと火を入れた深坂さんの「あん肝」は、やわらかさ、コク、風味、すべて申し分のない仕上がりです。

鮎のパテ

オリーブオイルでじっくり焼いた鮎を丸ごとペースト状にした「鮎のパテ」は、捨てられてしまう中骨や尻尾ごと塩漬けにした鰯をニンニクと共にオイル漬けした自家製アンチョビが隠し味。信州味噌でコクをつけ、鮎らしい苦みが心地よい一品です。この後はいよいよ握りが始まります。珍味はお代わりができるので箸休めに傍に置いておけるのもいい!