「北京ダックマニア」の北京ダックがおいしい理由を教えます
それではこちらの北京ダックの作り方を公開しましょう。臭みを抜いた北京ダックは飴糖水を塗り乾燥させてした焼きをします。水分が抜けたら仕上げにひたすら油をかけて焼き上げます。2kg近い重さの北京ダックを持ちながら何度も油を回しかける作業は至難ですが、こうすることで皮目がパリッと焼き上がるのです。
高温の油は皮目がキャッチするので、身の部分にはゆっくりと火が入ります。するとパリッパリの皮目とは逆に身はしっとりジューシーに仕上がるというわけ。
焼き上がったら皮と身に切り分けます。まだ熱い状態でも躊躇することなく包丁を入れていく料理長の峰村さん。
切り分けたら器に並べます。このアヒルの器も中国で購入したもの。使わなかった手羽や骨はお通しのスープやジャーキーに使い、1羽余すところなく料理します。
「まずは一番おいしい部位を食べてください」と出されたのは胸とお尻の皮にグラニュー糖をまぶしたもの。脂の甘みと旨みが格別の皮は中国でも主賓が食べるそう。しっとりとジューシーな皮裏の脂をグラニュー糖の甘さが引き立てます。
こちらが名物「北京ダック」1人前2,500円(※写真は2人前)です。蒸籠の中にはカオヤーピン、トッピングは揚げた春巻の皮、きゅうり、白髪ネギ、胡麻です。おいしさの秘密は「皮と一緒に肉も巻くこと」「自家製甜麺醤」「自家製ニンニクペースト」の3つ。
メニューに記載された巻き方を見ると、皿の上に蒸したてのカオヤーピンをおき、甜麺醤を塗り、その上に胡麻、北京ダックの皮と身、きゅうり、白髪ネギ、揚げた春巻の皮を重ね、ニンニクペーストをのせます。コツは甜麺醤と胡麻をカオヤーピンの一面に塗ることと、野菜も肉も多めに入れること。
すべての具材をのせたらカオヤーピンを半月状に折り、両端同士を真ん中に重ねます。北京ダックの皮も身も入るし、きゅうりも大きめに切ってあるので見た目はちょっと太巻きのようです。このくらいボリューミーにするのが「北京ダックマニア」流なのです。
まずは一口。肉のやわらかさとパリッ、カリッとした皮やきゅうりや揚げ春巻の皮との食感のコントラストがいい! おいしさは甜麺醤で決まると言うだけあって、中国の味噌に豆豉を加え1週間熟成させた甜麺醤は甘さ控えめでまろやかさと深みがあり、他に類をみません。また、ニンニクの臭みを抜きうまみだけを残したクリーミーなニンニクペーストがさまざまな食材の味をさらにふくらませ、胡麻が最後に余韻を残すのです。なんという北京ダック! 専門店の名に恥じぬ完璧さに、しばし陶酔してしまいます。
北京ダックだけじゃない、見逃せないつまみの数々!
旬の青菜をガーリックと炒めるおなじみの一皿。本日は青梗菜を使っています。シャキシャキとした青菜の食感が存分に感じられる絶妙な炒め加減、箸休めになるくらいの優しい味わいは必食メニューです。
北京ダックと人気を分けるのが「焼豚とブルーチーズ」。自家製焼豚の見事な照りに食指が動きます。食べてみるとやわらかくも歯ごたえはしっかりと感じ、蜂蜜を塗ったちょっぴり甘めの味付けは、クリアな味わいでプリンプリンの脂になじみます。
“味変”には天野さんが食べ歩きでヒントを得たブルーチーズをのせましょう。ブルーチーズの塩味と蜂蜜の甘みという最強コンビの威力が発揮され、この上ない“おいしい化学変化”を遂げるのです。これにはぜひイタリアの陰干し葡萄赤ワイン「Antale Veneto Rosso」を合わせてみて!
こちらも中華料理ではポピュラーな「ピータン豆腐」ですが、豆腐の上にピータンをのせたよくあるスタイルとはまったく異なります。食材をすべて細かく刻んで混ぜることで、どこを食べてもピータンの味と香りを感じるオリジナルスタイル。オーガニックの甘口タイプのとろみ醤油「甘露油膏」ベースのソースがピッタリ!
中国と日本の“北京ダック文化”のギャップを正したい、もっと北京ダックのおいしさをたくさんの人に知ってほしいと、この店をオープンしました。今後はペアリング付きコース料理が新メニューに加わる予定で「〆の炒飯にペアリングさせるドリンクにちょっとした秘策があるんです。めちゃくちゃおいしくてどこにもないドリンクです」という天野さんの言葉に楽しみが尽きません。