ラーメンマニアもうなる味の作り方とは

麺によって茹で時間を変えています

こちらの定番メニューは「塩そば」「醤油そば」「胡椒そば」「つけそば(塩・醤油)」でそれぞれ特製と味玉のオプションがあります。その他にも「ご飯もの」「和え玉」、そして大人気の「焼売」などがありどれも食欲をそそり選択に悩みます。本日は“初来店ならこれ”というメニューをご紹介しましょう。

黄金色のスープが映える青磁の器

一番人気は「塩そば」です。スープは「岩手鴨」「丹波黒どり」「甲州地どり」「国産豚の背骨」「真昆布」「干し野菜」などを7〜8時間煮込んでいます。そして「岩塩」「釜塩」「藻塩」「湖塩」「天日塩」をブレンドしたかえしと鶏油にこのうまみが凝縮されたスープを注ぎ入れます。

手もみ麺

こちらでは2種類の麺を選べますが「塩そば」には手もみ麺がおすすめとのこと。小麦は岩手「もち姫」と北海道「ゆめちから」、そして福岡「チクゴイズミ」をブレンド。高加水でもちもちとした食感に仕上げ、ゆでる前に手もみして溶けそうなくらいにゆで上げます。

丁寧に具材をのせていきます

「特製塩そば」の具材は「鶏胸肉」「鴨肉」「豚バラ」の3種のチャーシューに「シキンボ藁焼き」「親鶏と若鶏のつくね」「ワンタン」「穂先メンマ」「味玉」「ローストトマト」「九条ネギ」「自家製ネギ生姜」「生胡椒」と豪華絢爛。卵は昆布だしに漬け込み、メンマは乾燥から戻して作り、トマトは3時間かけてローストし、温かい具材は直前にスープの中で泳がせてから盛りつける手の込みよう。

「特製塩そば」1,650円

これだけ丁寧に盛りつけているのに麺をゆでることから着丼するまでにたったの5分ほど。手で置き台からカウンターへ移して上から見ると、本当にほれぼれする美しさです。丼一つで世界観を完結させるラーメン。日本料理、イタリアン、そば懐石で研鑽を積んだ黒木さんだからなせる業です。

人気No.1の貫禄

麺はもっちもちでぷりんぷりん。賛否両論あると言いますが、溶けるようで溶けない、この食感は唯一無二です。スープは麺の甘みを引き立たせながら時間が経つごとに具材から染み出る風味によって少しずつ変化し最後の一滴まで存分に楽しめます。なんという隙一つない完成度なのでしょう。

醤油は青白磁の器で

一方の醤油のかえしは小豆島「正金醤油」「ヤマヒサ醤油」「ヤマロク醤油」の生醤油をブレンドして黒木さんが火入れします。香味油は鴨油を使います。

「醤油そば」1,250円

具材は「豚肩ロース」「鶏胸肉」「豚のシキンボ」のチャーシューに「つみれ」「海苔」「大根」「白葱」「春菊」です。珍しいのは大根。「醤油は味がしっかりしているので大根でほっこりしてほしい」と黒木さん。「塩そば」に「ローストトマト」といい、野菜の使い方が本当に上手。

全粒粉を練り込んだ細麺

福岡「ミナミノカオリ」の全粒粉を練り込み香りとコシを重視した細麺は、手もみ麺と打って変わって香りが高くザクザクでパツパツとした食感。醤油のガツンとした味にもってこいの麺です。粗く切った白葱は大根の下に忍ばせてスープの中で火が通るように計算しているのです。こうすることにより香りが強すぎずにいいアクセントになります。大根を食べると白葱が現れるという仕掛けにはあっぱれ!

進化あるのみ! 来年からのスペシャルイベントを見逃すな!

「焼売2個」350円

名物の焼売はラーメンを待つ間に出してくれます。一口では入らないくらいボリューミーなのに、割ってみるとすんなり箸が通るほどのやわらかさ。「目指したのは“肉肉しい焼売”です。口の中を豚肉の味でいっぱいにしたかったので豚肉は粗挽きにして皮はかなり薄く作っています」と言うように頬張るとしっかりと“肉”を感じます。

みじん切りにした生姜の量も完璧!

味もきっちりついているのでそのままで十分。玉ねぎの甘みと豚肉のうまみと生姜の辛みが三位一体となって口中に広る口福感たるや! 

断言します! 名物にはうまいものあり!です。

「春菊めし」350円

ご飯ものも「白飯」「鴨と地鶏の油めし」など4〜5種類あり本当に悩ましいですが、黒木さんが「醤油そば」にはこれ!と言う「春菊めし」をチョイス。てっきり炒めた春菊がのっていると思って口にすると予想を反して冷たいので驚きます。ところが食べているうちに温かい白飯になじんで春菊が温まってくると香りや味わいが変わってくるのでおもしろい。ボイルした春菊にネギオイルと塩だれを和えていて、春菊のいい感じの苦みが醤油そばに合う。交互に食べるのもいいし、スープをかけてもいい!

黒木さんの進化は止まらない

ここに足繁く通う理由に“進化”があります。「和食をやっていたせいか味がきれいすぎることに悩んでいました。ラーメンは雑味が大切だと気がつきオープン3日前にスープを一から作り直しましたし、麺も5年前に『もち姫』に出会って大幅に変化させました」と言うように、今でもよりおいしくなるように日々考えて変化させています。

新店舗だから可能になったイベントも!

来年からは一旦休止している季節メニューを復活、前菜からラーメンまで一つの食材をフィーチャーした「限定メニューday」を作ったり、夜営業で水炊きも始めるそう。休業日には“おうちでラーメン”の料理教室を開き、コレクションの製麺機を使って麺から作ることにもチャレンジしたいと話します。ある日、食べたラーメンに感動してその日に総料理長という地位を捨て転職を決意。どこで修業するわけでもなく独学でこの味を作り上げてきた黒木さんは常に期待を超えてくれるのです。

※価格はすべて税込

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

文:高橋綾子、食べログマガジン編集部 撮影:溝口智彦