裏メニューの「平打ちちぢれ麺」、自家製チャーシューの切り落としも見逃せない

左が中細ストレート麺で右が平打ちちぢれ麺

通常のオーダーでは、三河屋製麺特注の切り刃20番の中細ストレート麺が使われている。しかしこの麺は、1年ほど前から同じく三河屋製麺の平打ちちぢれ麺に変更が可能となった。平打ちちぢれ麺は、ちぢれを残すために茹でている間は動かさず、茹で時間も中細ストレート麺が1分に対し1分15秒ほどと少し長い。

 

秋山さん

最近は、食券を渡す時にお店の方に「平打ちちぢれ麺にしてください」と言うと、通常の麺から無料で変更できるので、もっぱらそれを食べています。ソバージュのようなきれいなウェーブがかかっている麺で、箸あげすると、麺がスープを持ち上げてくれます。小麦の味を感じる、満足感が高いおいしい麺です。

ラーメン丼に「ミックス」のタレを入れ、特製スープと魚の風味をつけた豚油と鶏油を合わせた特製油を加え、茹でた「平打ちちぢれ麺」150グラムを入れる。最後に自家製チャーシュー、ワンタン2種を2個ずつ、福岡にあるタケマンのメンマ、九条ネギ、海苔をトッピングしたら具義さんカスタムの完成だ。

「八雲」のワンタン麺は、王道の支那そばらしいどこか懐かしい味わいのスープでありながら、細部まで洗練されている。舌の感覚を研ぎ澄ませていくと、豚や鶏、魚介節の味がだんだんとキャッチできるようになっていき、その奥深い味わいに魅せられていく。この王道で滋味深いスープが、小麦の味わい豊かな平打ちちぢれ麺によく絡む。

券売機で見つけたらラッキーな「切り落としチャーシュー」200円

ラーメンにトッピングするチャーシューももちろん自家製だ。国産豚のモモとロースの塊肉を水、そして水に対して5%の量の塩と砂糖で作ったブライン液に丸一日漬け込み肉をやわらかくする。その後醤油や砂糖で作った特製ダレに絡めて、130℃のオーブンで焼き、仕上げに、表面にハチミツを塗ってからさらに火入れしたらチャーシューの完成だ。トロトロ系のチャーシューではなく、しっかり豚の食感と味わいが残り、清廉な味わいのワンタン麺に寄り添う。

 

秋山さん

こちらの赤みのあるチャーシューが大好きで、切り落としチャーシューが券売機に残っている時は必ず追加します。

ラーメンにトッピングするチャーシューをカットする際に出てしまう、端の部分も「切り落としチャーシュー」としてオーダーできる。ただし、チャーシューを新たに切り落とすタイミングが重ならないとメニューにならないので、出合えるかどうかは運次第。具義さんは切り落としチャーシューが残っている場合はエビスの生ビールと一緒に楽しむそうだ。

連日120〜130食を売り上げる行列必至の人気店だが、平日15時ごろであれば比較的スムーズに入店できるという。気をてらわない王道の支那そばでありながら、一つひとつの仕事がひたすらに丁寧で、味の追求に余念のない「八雲」。プリプリのワンタンを頬張り、ツルツルの麺をすする喜びを感じてみてほしい。

※価格は税込。

文:中森りほ、食べログマガジン編集部
撮影:佐藤潮