「握り」はスペシャリテに向かって味をクレッシェンドさせていく!

「イクラの小丼」

つまみで空腹が少し満たされたところで「握り」がスタート。酢飯は米に十分な水分を含ませてしっとりしながらも歯応えがあり粒が立つように炊き、赤酢と米酢のブレンド酢を合わせています。さまざまな寿司ダネに合うように酢の酸も色も控えめ。さらに塩分にも配慮し、“食べ疲れしない寿司”を目指しています。

鈴木さんがタネの中でいちばん好き!と言う「鯵」

その酢飯が最高においしい状態で口に入るよう、きっちり3手で握ります。米粒と米粒の間に空気が含まれ、噛むとほろりとほどけて寿司ダネと共に喉を通ると訪れるのは至福の時間。しばらくその余韻に浸ってしまいます。種類を多く食べてもらいたいと“酢飯は小さめに握る”のも鈴木さんの流儀。

「中トロ」

夏は南半球の鮪がおいしくなるので本日はオーストラリア産の「インド鮪」を使います。爽やかな酸がこの季節にはピッタリ! 脂ののり具合や筋の入り方によって切りつけを変えています。

「穴子」

“穴子は大きめを使う”のも鈴木さんの流儀。一般的には350gほどの大きさが使われていますが、鈴木さんは500g前後と決めています。捌いた穴子はサッと煮てから骨がやわらかくなるまでじっくりと炭火で焼いています。身はふんわり、皮目は少しパリッとさせて仕上げる穴子は実家の味を引き継いでいます。

自身の寿司道に挑戦し続ける!

削りたての鰹節は食感も香りも断然いい!

握りの最後を飾るのは「鰹節巻き」です。海苔の上に酢飯、きゅうり、みょうがの順に置き、胡麻を振りかけ、最後に削りたての鰹の荒節をのせ海苔で挟むようにしていただきます。最初の職場が鰹節や出汁を製造販売しており、当時は日々鰹節と向き合ってきた鈴木さん、この店のスペシャリテを考えた時に真っ先に頭に浮かんだのが鰹節だったそう。

鰹節は水分を多く含む鹿児島県指宿産の荒節を使用

シャキシャキとふわふわの食感が同居したこの1貫は、後半に鮪や雲丹、穴子などのしっかりした味わいが続き濃厚になった口の中をさっぱりさせる、まさにコースを締めるに相応しい味わいです。

エールを送りたくなる素敵な笑顔

「鮨竹半 若槻」では技術的なことに加え、接客のいろはを学びしっかりと独り立ちできるよう鍛えてもらったそう。公式データはないけれど女性の寿司職人は10%未満ではないかと鈴木さんが推定するほど女性にとってはまだまだ厳しい世界。だからこそ誰の真似でもなく自分らしい寿司道を歩んでいきたいと話します。伝統的な江戸前で育った鈴木さんが女性ならではの発想で生みだす新しい寿司をぜひ味わってみて! 予約はInstagramのDMか公式LINEから。

文:高橋綾子
撮影:大西 尚明