目次
素材、技術、心意気……一流店に引けを取らない夜のコース
クリーミーさがたまらない! 夜限定の「うに」
ランチにはないネタの一つ。この日は青森県産の紫雲丹をたっぷりと。米酢のシャリを使用しており、口に含むと芳醇な香りと濃厚なコク、独特の甘味が口中に広がっていく。ちなみに海苔は巻物も含め、全て有明のものを使用している。
とろけるおいしさに思わずもう一貫?! 夜限定の「大トロ」
こちらもランチにはないネタの一つ。赤身は塩釜産だが、この大トロは勝浦で水揚げされた本マグロ。赤酢を使ったシャリが本マグロの旨みと香り、そして脂と絶妙に絡み合う。もう一貫と言いたくなる贅沢なおいしさだ。
手の込んだつまみが厳選日本酒を進ませる
仕入れによって内容が変わる、夜のコースのつまみ。取材日はもずく酢、のれそれ、茶碗蒸し、メヒカリの一夜干しのほか、平目の刺身も。ただし、味付けは醤油のなかった時代に重宝された煎り酒で。穏やかな塩味が平目の旨味を引き立て、日本酒に心地よく寄り添う仕上がりに。
武智さん
握りがおいしいんだもの、つまみだっておいしいに決まっています。なので、気になるのはそれに合わせる日本酒。「来福」「大信州」「花陽浴」「七本槍」など、寿司やつまみたちを邪魔することなく、その味わいを引き立てる辛口中心で日本酒を揃えています。しかも多くが飲みきりなので、通うたびに新しい味に出会える楽しさも◎です。
もはや立派な一品とも言えるこだわりの「ガリ」
同店くらいの価格帯のお店ではガリのみ完成品を仕入れる店も少なくない。しかし、同店は自家製のものを含め、数種用意している。新生姜を使ったものは歯触りよく、竹生姜を使ったものはしっかりとした味わい。さらに同店の名物でもあるザーサイのガリは穏やかな塩加減と生姜とは違う優しい歯触り。どれも箸休めを超えたおいしさだ。
いつでも“戻って来たい”と思える寿司店
カンテラだろうが、一軍のベテランだろうが関係ない。立地の面白さ、居心地のよさ、そしてよき仕事のなされた確かさなおいしさ。6,600円のランチも、16,500円の夜のコースもその3拍子がきちんと揃い、正直もっと高くても文句はない。また三軒茶屋という場所柄もあってか、接客はきちんとしつつもフランクで、小松さんをはじめスタッフとの会話も楽しい。笑顔で食べられる本格江戸前寿司のおいしさたるや。
普段使い、デート、カジュアルな接待……さまざまに使える寿司店だが、ネタやシャリ、作法などについて気軽に教えてくれる店だからこそ、ここで江戸前を覚え、銀座や西麻布にあるもっと高い店に羽ばたくのもいい。でもきっと、高い店を知れば知るほど、気どらず楽しめる「鮨 かんてら」に戻って来ることになるのだろうけれど。そう確信させる、いい寿司店なのである。