【THEご褒美スイーツ 〜知っておきたい通な店〜】

「食事と同じくらい、むしろそれ以上にデザートやスイーツにも絶対手を抜きたくない!」と、日々おいしいスイーツを探し求めるスイーツガチ勢の皆さんにお届けする本連載。スイーツの歴史研究のみならず、製菓にも精通するお菓子の歴史研究家・猫井登さんが「これを食べるために出かける価値あり!」と太鼓判を押す、ご褒美スイーツを紹介します。

〈第6回〉「Slow Farm」

「Slow Farm」は2020年に川崎市麻生区早野に開園したいちご農園。いちご狩りもできるいちごハウスのほか、自家製いちごを使ったスイーツを販売する「農園パティスリー」も有している。

こちらの農園を立ち上げたのは、野菜農家の長男として生まれた安藤圭太氏。安藤氏は大学卒業後、約10年間旅行会社に勤務。アメリカやブラジルにも駐在歴のある国際派。国内外のさまざまな土地や暮らしを見てきた氏は、出身の川崎市麻生区が都心から近いにもかかわらず、自然豊かで、住宅地の近くにも野菜や果物を栽培する畑が広がっており、食生活も豊かであることに気づく。

安藤圭太氏

そうして始めたのが、こちらのいちご農園だ。いちごの栽培を選んだのは、いちごはデリケートで傷みが早く、遠方への輸送が難しいことから、消費者に近い場所で栽培する意義が大きいと考えたから。いちごは、一般的には流通の時間を考慮して未完熟の状態で収穫することが多いが、すぐに食べてもらえるならば、完熟するのを待って収穫することができ、鮮度も失われずにすむ。

一般的に「なりもの(生りもの=果物など)」は朝採りのものが、「葉もの(葉を食べる野菜)」は夕採りのものが一番おいしいという。これは、植物が日中に、葉で光合成した養分を陽が沈んでいる夜の間に果実などに分配するから。葉ものはまだ養分が葉にとどまっている夕方に、なりものは実に養分が運ばれ終わった朝に収穫するのが、一番新鮮で栄養価も高くおいしいというわけだ 。

「なりもの」であるいちごは、その日の朝収穫したばかりのものが一番おいしい。ベストな状態のいちごを味わってもらうには、ギリギリまで農園で熟成させ、当日の朝収穫したものを素早く届ける必要があるので、消費者の近くで栽培・販売するのが良いという。

こちらの農園では、以下の5種類を栽培・販売している。

  • 「紅ほっぺ」美しい紅色でほっぺが落ちるくらい食味が良い。甘味と酸味のバランスが良く、ジューシー。
  • 「とちおとめ」完熟は、糖度が高く、程よい酸味。果汁豊富だが、果肉はしっかりしている。
  • 「おいCベリー」ビタミンC豊富。7粒で1日分を摂取可能。香り高く、みずみずしい食味。
  • 「もういっこ」大粒で、果肉しっかり。甘味と酸味が広がる。つい、もういっこ食べたくなる。
  • 「よつぼし」2017年に登録された新しい品種。円錐形で美しく、甘味が強く、程よい酸味もある。
「おいCベリー」

こちらの農園ではいちご狩りを実施(40分食べ放題)しており、ハウスの中で自ら収穫することができる(営業日、料金、予約方法はお店のホームページで要確認)。

さて、せっかく丹精込めて栽培したいちごであっても、すべてが形良く大きくてそのまま商品になるとは限らない。外見は少し悪くても、完熟してへたの下まで真っ赤で、味わいは素晴らしいいちご。こちらの農園では、そういったいちごもさまざまな方法でスイーツに活用、農園内のパティスリー「SLOW SWEETS」にて販売を行っている。