【THEご褒美スイーツ 〜知っておきたい通な店〜】

「食事と同じくらい、むしろそれ以上にデザートやスイーツにも絶対手を抜きたくない!」と、日々おいしいスイーツを探し求めるスイーツガチ勢の皆さんにお届けする本連載。スイーツの歴史研究のみならず、製菓にも精通するお菓子の歴史研究家・猫井登さんが「これを食べるために出かける価値あり!」と太鼓判を押す、ご褒美スイーツを紹介します。

〈第5回〉「Signature(シグニチャー)」

GINZA SIXの地下2階にある「Signature」。昨年12月にオープンしたばかりで、白で統一された店内はモダンでスタイリッシュな雰囲気だ。

こちらのお店の母体は「金子コード」という1932年創業の電話線ケーブルやカテーテルチューブの製造販売を主業とする会社。同社は、環境や自然に配慮すると共に、食の安心、安全を守る事業を創っていきたいという思いから、2013年には、陸上養殖事業を立ち上げ、チョウザメの養殖及び国産キャビアの生産を開始。2022年には、これら自社生産のフレッシュキャビアとともに、希少価値の高い商品を紹介するアンテナショップ「HAL PREMIUM」を東京にオープン。キャビア、プレミアムワインのほか、英国王室「ロイヤルコレクション」のギフトブランドである「バッキンガムパレスティー」や英国バッキンガム宮殿の庭園で栽培された植物を原料に使ったジンなどの販売を行っている。今後は新たにスイーツも販売していく予定で「シグニチャー」のカフェスペースでは「アフタヌーンティー」もいただける。

今回ご紹介するのは、2023年4月末まで(予定)の期間限定「桜イースターアフタヌーンティー」。オープニングキャンペーンということもあり、お値段も1名で2,125円、2名で4,250円と銀座では破格の価格設定となっている(1日限定5食、予約必須)。

「桜イースターアフタヌーンティー」(写真は2名分)

2名分を注文し、紅茶をチョイスすると、3段のケーキスタンドの軽食・スイーツと紅茶がポットで供される。ちなみに1名からでも注文可能で、その場合ケーキスタンドは2段となる。

コーヒーの場合はカップにて提供。紅茶のポットとカップは、英国王室で実際に使われている、豪華な装飾が施された英国王室「ロイヤルコレクション」ブランドの陶器。ポットはゆうに4杯分は入りそうな大ぶりのものだ。

「ロイヤルコレクション」の陶器は、12世紀ごろから始まったといわれる、イギリスの陶器産業の里「ストーク・オン・トレント(Stoke-on-Trent)」の伝統的な技術で作られている。ストーク・オン・トレントは、陶器作りに適した豊かな土と気候に恵まれた地域で、英国陶磁器を代表する「ウェッジウッド」「ロイヤルドルトン」「バーレイ」「スポード」「ミントン」「エマブリッジウォーター」といった、数々の有名ブランドが誕生した場所として知られる。

もちろん、紅茶も「ロイヤルコレクション」ブランドの「バッキンガムパレスティー」だ。提供される種類は、時季や輸入状況によって異なるが、アールグレイ、ダージリンのほか、今後は、イングリッシュ・ブレックファースト、アフタヌーンティーブレンドも追加され、その中から1種類が時季により選定され提供される。今後はミルクティーの提供も考えているという。

この日提供されたのは、セイロンティー。穏やかな香りと味わいで、サンドイッチやスイーツとも相性が良さそうだ。期待が高まる。

さて、ケーキスタンドの内容に目を移そう。通常スコーンは、スタンドの2段目に入れられることが多いが、本日は別皿で供されているので、実質4段の豪華なラインアップとなっている。

まずはセオリー通り、下段の「サンドイッチ」からいただく。

最初は「エビマヨサンド」。ぷりぷりの小エビを甘酸っぱく濃厚なソースで和えたものに玉ねぎ、キャベツ、ブラックオリーブのスライスを合わせるという手の込んだ内容だ。さまざまな食材の食感が楽しく、あっさりといただける味わいに仕上げられている。

「サーモンサンド」は、スモークサーモンにクリームチーズを合わせたもの。実はこちらのスモークサーモン、お店でも販売されている商品だ。上質な身に爽やかな脂をまとったデンマーク産まれのDanish Salmon(ダニッシュサーモン)を使い、レストランクオリティーの生感を生かした冷燻スモークサーモン。クリームチーズとの相性も抜群で、大満足の味わいだ。

次に「スコーン」に手をのばす。

こちらのスコーンはアソシエート・パティシエと同社のスイーツクリエイターがタッグを組み考案したオリジナルレシピのスコーン。スコーンには、ふんわりとしたパンタイプのものと、ザックリとした食感のビスケットタイプのものがあるが、こちらのものは中間的なタイプで、外側はザックリ、けれども中はしっとりしたパウンドケーキのような食感だ。

さて、スコーンに「クロテッドクリーム」と「苺ジャム」のどちらを先に塗るべきか……。同じくクロテッドクリームの有名な産地である、イギリスのデヴォンとコーンウォールでは激しい論争がある。

デヴォンでは「クロテッドクリームが先」。これに対して、コーンウォールでは「ジャムが先」。

とりあえず、本日のクロテッドクリームは日本製だ。ここは日本なので、どちらでも問題はない。能書きはそれぐらいにして、今回はクロテッドクリームの上に苺ジャムをのせていただく。

甘さ控えめでしっとりとしたスコーンの内側の生地にミルキーなクリームがよくなじみ、スコーンの外側の香ばしい味わいと苺ジャムの甘味とが一体となる。紅茶とのマリアージュも楽しみつつ、しばし口福な時間を堪能。

さて、次はスイーツをどう攻めるか……中段から行くことに決定。

まず、「パンナコッタ」。パンナ=生クリーム、コッタ=煮るという意味のイタリア発祥のスイーツ。個人的にはアーモンドの風味も感じられ、ブランマンジェに近いかなとも感じる。

さて、こちらのパンナコッタには、下記の「3種類のシロップ」が用意されている。通常は好みのもの1種が提供されるが、今回は特別に全種類を試食させていただいた。

  • 「ロイヤルコレクション」バッキンガムティーのアールグレイティーから作られた「紅茶のシロップ」
  • 店舗で販売している高品質ワインから作った「赤ワインシロップ」
  • 赤ワイン同様、店舗で販売している白ワインから作った「白ワインシロップ」

せっかくなので、少しずつ試してみる。個人的には「白ワインシロップ」がおすすめ。まったりとクリーミーな味わいのパンナコッタと白ワインのほどよい酸味がベストマッチ。

次に「抹茶マフィン」。上にはたっぷりと「桜クリーム」が絞られている。今回は、桜がテーマということで、抹茶など和の要素も取り入れたものとなっている。マフィンは、春らしい色合いで、抹茶の香りがふわりと香る、軽やかであっさりとした味わい。やや濃い目の桜の風味豊かで上品な色合いのクリームと引き立て合う。

いよいよ上段へ。

まずは「マカロン」から。「さくら」「抹茶」「赤ワイン」「アールグレイ」と、4種類も味わえるのは楽しい。

小ぶりながらも、どのマカロンも表面はつるり、ピエ(生地の周囲のレース状の部分)もしっかりと立っており、美しい仕上がりだ。生地の内側は、ほどよくしっとりしており、それぞれのクリームともよくなじんでいる。

特に今回の季節限定の「さくら」は、桜の塩漬けを彷彿とさせるやや塩味を利かせた優しい味わいのクリームが挟まれていて、秀逸だ。

次に「ケーキ3種」。

まずは「桜のロールケーキ」。こちらも、さくらのマカロン同様、やや塩味の利いた優しい味わいのクリームを桜色のビスキュイで巻き込んでいる。中心には桜の花をイメージした花形のようかんが入れられ、小ぶりながらも精巧な仕事が施されている。全体としては、桜餅をイメージさせるような味わいの軽やかなプチフールだ。

「苺のカットケーキ」は、甘酸っぱい苺クリームとチョコレートのスポンジの組み合わせ。優しいながらも、くっきりと輪郭がわかる味わいに仕上げられており、紅茶の渋味ともよく合う。「抹茶ケーキ」は、宇治抹茶のムースのケーキ。やや苦味を利かせた大人の味わいに仕上げられている。ムースの中にしのばせた、かのこ豆の食感が楽しい。

さて、最後は、下段で残しておいた「ババロア」だ。国産苺をたっぷりと使った果肉感あふれる重厚な味わいは、〆を飾るにふさわしい逸品となっている。

軽食とスイーツを堪能し、ポットに残った紅茶をゆったりと楽しみながら店内を見回せば……

  • 「HAL PREMIUM」の国産フレッシュキャビア
  • SDGsを意識したチョウザメの身の佃煮(日本では身は廃棄することが多いが、欧米では食材として活用。日本人向けに佃煮に仕立てた)
  • イギリスのチャールズ国王が寄附を目的に設立したブランド「ハイグローブ」のワインや雑貨
  • 故イギリス女王エリザベス2世の紋章が映える「ロイヤルコレクション」の紅茶やお酒
  • アフタヌーンティーでも使用しているスモークサーモンやサーモングラタンなど、手軽に味わえる「CRAFT FISH」ブランドの冷凍のお惣菜

などなど、垂涎の高級食材が。今後、シグニチャーでは、キャビアやシャンパンなど、店頭で扱うこれらの高級食材を取り入れたメニュー開発も漸次進めていくということなので、これからも目が離せないお店となりそうだ。

※価格はすべて税込

撮影:佐藤潮

文:猫井登、食べログマガジン編集部