毎日食べているお米の魅力を再発見できる、お米が主役の新割烹
中目黒の予約が取れない焼鳥店として知られる、「中目黒いぐち」が和食店を恵比寿にオープン。最近の和食店は、どこのお店も最後に炊き込みごはん。おまかせで色々な味覚を堪能しながらも最後まで味が「強い」、炊き込みごはんを〆で頑張りすぎるお店が多過ぎるとの声をよく耳にします。こちらでは、お料理のメインディッシュは、お米。「お米を最高においしい状態で提供する」をコンセプトに掲げ、オープン直後から注目を集めています。
選ぶのは5種類のブランド米。どの銘柄にする?
恵比寿の路地裏にあるビルの地下。階段を下りると、扉の先には看板がわりの稲穂のオブジェが。ダウンライトに包まれた店内は静けさに満ち、まさに大人の隠れ家といった趣。黒と白の漆喰壁が、スタイリッシュな空間にしっとりとした和の情緒を与えています。
ここ「恵比寿 米ル」の主役はお米。5980円のおまかせコースをオーダーすると、まず選ぶのはお米の銘柄。お米は月替わりで常時5種類を用意。例えば、島根県おおち地区産の「きぬむすめ」に、秋田県美郷町産の「ゆめおばこ」、北海道砂川市産の「ゆめぴりか」、新潟県北魚沼産の「新之助」、岐阜県下呂市産の「龍の瞳」と、全国各地から選りすぐった銘柄米が揃います。
今回選んだのは水稲品種の中でも最高ランクを誇る岐阜県のブランド米「龍の瞳」。他品種の1.5倍もの大きさを持ち、実際に比べてみるとその差は歴然。コシヒカリの中から奇跡的に発見された品種で、甘さ、香り、粘りともに優れた今注目の銘柄です。
炊き上がりを楽しみに、まずはコースを堪能。前菜、八寸、お造り、茶碗蒸し、和サラダ、汁椀、煮花、季節のかき揚げ、焼き魚と続き、いよいよ土鍋ごはんの登場です。
ハ寸。蓮根せんべいと翡翠銀杏のトリュフ塩がけ、タコの柔らか煮、裏白しいたけ、松笠くわい、なまこみぞれ和え。内容は季節によって変更。
にんじんのかき揚げ。にんじんをせん切りしてかき揚げに。さくさくと軽い食感が美味。ヒマラヤの岩塩でいただきます。
おこげがうれしい土鍋ご飯に、ご飯のお供も充実!
お米は玄米から仕入れ、その日使う分だけ店で自家精米。銘柄により水分量や時間を微妙に変えて炊き上げているそう。炊き上げる釜に使用されるのは、品薄だという創業天保三年の伊賀焼の窯元・長谷園の「かまどさん」。蓋を開けると、おこげの香ばしい薫りがふわりとのぼります。
土鍋ご飯には、お味噌汁と香の物、大根おろし、天然塩をセットで提供。さらに、出汁巻き玉子、鶏しぐれ煮、ちりめん山椒、海苔佃煮をお供に用意。いずれも白米に似合いの逸品ばかりで、これでご飯がすすまないわけがありません!
ご飯をより贅沢に楽しみたいなら、追加メニューの人気者「本日のスペシャル」をプラスするのがおすすめ。牛肉をさっと炙った焼きしゃぶに、黒トリュフをこれでもかとスライスした、文字通りのスペシャルメニュー。甘めのタレに黒トリュフの芳醇な風味が絡まり合い、おかわり必至のおいしさです。
銘柄によりこうも違うものかと、ご飯の魅力を再発見。普段何気なく口にしているお米の力、その奥深さに改めて驚かされること間違いありません。
取材・文:小野寺悦子
撮影:森山祐子