センスがいいとは、まさにこのこと。山本さんがすすめるワインのつまみ!

フレッシュな柑橘類が素材の味を引き締める!「酸味を利かせた魚介料理」

「金太郎イワシのパクチービネガーマリネ」700円
 

山本さん

私のイチオシはセビーチェなど、酸味を利かせた魚介料理です。マリネの感じのセンスがとてもいいなと思いました。これ以外の魚の料理の仕立ても、とても好み。やはりワインとあわせて、がおすすめです。

グラスワインは常時7種ほどで1,000円から。すべて自然派のもので統一している

鮮度が良い魚は酢で軽く〆てマリネにしたり、柑橘類とあえてセビーチェにしたりするのが上松シェフの定番料理。今回の漬け込み酢はパクチーの茎と根で香りをつけたオリジナルのものだ。

仕上げは自然環境で育てられた完全無農薬のカボス。皮までおいしく味わえる

フレッシュハーブのエキス抽出には「角がなくあっさりしている」という理由でタイ産のサトウキビ酢を使用。ほかにも洋風ならワインビネガー、和風なら米酢、インド風ならタマリンドと、酸味の利かせ方は実にバリエーション豊か。柑橘類もカボスだけでなく青レモン、スダチといった日本各地の良いものがカウンターに並んでいた。

シェフのお気に入りをあちこちから仕入れているワイン。ラインアップはコロコロ変わる

薬味に北海道産山わさびを使うなど、ビストロの枠に収まらない大胆な発想によるマリネだが、味わいはきわめて繊細。穏やかな香りと酸味でイワシそのものの旨みがしっかりと引き立てられており、柑橘系の香りが漂う軽めのスパークリングワインとも絶妙に調和していた。

巧みなスパイス使いでバランスよく仕上げている「酸味を利かせた野菜料理」

徳島産のスダチをスライスしてなじませた「キャロットラペ」250円

日々、産直野菜を取り扱う八百屋に通う上松シェフ。厳選した質のいい野菜もマリネにすることが多いという。またカレー屋で働いていたこともあり、スパイスの扱いにも精通。今回の「キャロットラペ」の香りづけは、ローストしたクミンとコリアンダーを乳鉢で丁寧にすりつぶしたものだ。ニンジンはチーズグレーターでガリッと粗く削るのが味と食感のポイント。サトウキビ酢で酸味を調えて、ニンジンとスダチの見事な一体感を生み出している。

ニンジンは凹凸を感じる楽しい食感。酸味と香りはスダチが主役だ
 

山本さん

以前いただいたネギのマリネもおいしかったです。シンプルながら、酸が利いててワインがすすむ一皿でした。

シンプルでなじみ深い味の「カラアゲ」なのに食感と旨味が全然違う!

「カラアゲとザワークラウト」750円。鹿児島産の芋焼酎と合わせるのもいい

「基本に忠実に作ってます」と上松シェフが話すカラアゲ。確かに味付けこそ酒、しょうゆ、にんにく、しょうがとオーソドックスなのだが、朝〆の新鮮な千葉県産総州古白鶏をソミュール液(塩をベースにスパイスとハーブを、酒や水で煮立てた液)に漬け込み、2〜3日かけて下味を染み込ませ、しっとり柔らかく仕上げる手の込みよう。

低温の油でじっくり火を入れてから2度揚げで表面をパリッと仕上げている
 

山本さん

どこにでもある感じの唐揚げというよりはちょっとシャレた調理。しかし味は奇をてらっていないおいしさ。

こちらも素材の旨味を活かす優しい味付け。胸肉とは思えないほどジューシー

自家製ザワークラウトは刻んだオレンジ白菜を塩水だけで漬け込んだ素朴なもの。この天然発酵ならではのナチュラルな酸味とシャッキリした食感が、カラアゲのアクセントに最高なのだ。

上質な脂とシェフのセンスがキラリと光る! 幻の豚を使った「自家製スパイスソーセージ」

170度のオーブンでじっくり火を入れた「自家製スパイスソーセージ」1,100円

お待ちかねのメインディッシュは「幸福豚」を使用した手づくりソーセージ。腕肉などをミンチマシーンで粗挽きにし、ほろ苦くなるまでから煎りしたクミンとフェネグリークで香りをつけている。今回は自然な酸味を利かせるため、ネパール産の乾燥発酵青菜「グンドゥルック」も加えたという。

添え物は火を加えずワインで練り上げている芥子屋四郎のネイキッド・マスタード

「幸福豚」の質のいい旨みと、その輪郭を際立たせる複雑かつ心地よい酸味が印象的だ。調味料から「自然なものを」と厳選を重ねているからこそ、これだけ素材の味を活かした料理が作れるのだろう。

肉からあふれ出している上質な脂もからめて味わってほしい

上松シェフが手がける料理に共通して言えるのが「優しくておいしい」こと。派手な香りや味付けに頼らず、素材の本質的な魅力を引き出し、シンプルにおいしく、驚きもある、なおかつ自然派ワインにピッタリな料理に仕上げている。

スタンディングで手軽にハイセンスな料理と自然派ワインが楽しめる「キッチン かねじょう」の登場により、六号通り商店街の魅力も一段と高まった。遠方から足を運ぶ価値は十二分にあるが、予約はできないため「ぜひ週末の昼飲みで」商店街の散策と合わせて楽しんでいただきたい。

※価格は税込。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認ください。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

撮影:佐藤潮
文:佐藤潮、食べログマガジン編集部