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センスがいいとは、まさにこのこと。山本さんがすすめるワインのつまみ!
フレッシュな柑橘類が素材の味を引き締める!「酸味を利かせた魚介料理」
山本さん
私のイチオシはセビーチェなど、酸味を利かせた魚介料理です。マリネの感じのセンスがとてもいいなと思いました。これ以外の魚の料理の仕立ても、とても好み。やはりワインとあわせて、がおすすめです。
鮮度が良い魚は酢で軽く〆てマリネにしたり、柑橘類とあえてセビーチェにしたりするのが上松シェフの定番料理。今回の漬け込み酢はパクチーの茎と根で香りをつけたオリジナルのものだ。
フレッシュハーブのエキス抽出には「角がなくあっさりしている」という理由でタイ産のサトウキビ酢を使用。ほかにも洋風ならワインビネガー、和風なら米酢、インド風ならタマリンドと、酸味の利かせ方は実にバリエーション豊か。柑橘類もカボスだけでなく青レモン、スダチといった日本各地の良いものがカウンターに並んでいた。
薬味に北海道産山わさびを使うなど、ビストロの枠に収まらない大胆な発想によるマリネだが、味わいはきわめて繊細。穏やかな香りと酸味でイワシそのものの旨みがしっかりと引き立てられており、柑橘系の香りが漂う軽めのスパークリングワインとも絶妙に調和していた。
巧みなスパイス使いでバランスよく仕上げている「酸味を利かせた野菜料理」
日々、産直野菜を取り扱う八百屋に通う上松シェフ。厳選した質のいい野菜もマリネにすることが多いという。またカレー屋で働いていたこともあり、スパイスの扱いにも精通。今回の「キャロットラペ」の香りづけは、ローストしたクミンとコリアンダーを乳鉢で丁寧にすりつぶしたものだ。ニンジンはチーズグレーターでガリッと粗く削るのが味と食感のポイント。サトウキビ酢で酸味を調えて、ニンジンとスダチの見事な一体感を生み出している。
山本さん
以前いただいたネギのマリネもおいしかったです。シンプルながら、酸が利いててワインがすすむ一皿でした。
シンプルでなじみ深い味の「カラアゲ」なのに食感と旨味が全然違う!
「基本に忠実に作ってます」と上松シェフが話すカラアゲ。確かに味付けこそ酒、しょうゆ、にんにく、しょうがとオーソドックスなのだが、朝〆の新鮮な千葉県産総州古白鶏をソミュール液(塩をベースにスパイスとハーブを、酒や水で煮立てた液)に漬け込み、2〜3日かけて下味を染み込ませ、しっとり柔らかく仕上げる手の込みよう。
山本さん
どこにでもある感じの唐揚げというよりはちょっとシャレた調理。しかし味は奇をてらっていないおいしさ。
自家製ザワークラウトは刻んだオレンジ白菜を塩水だけで漬け込んだ素朴なもの。この天然発酵ならではのナチュラルな酸味とシャッキリした食感が、カラアゲのアクセントに最高なのだ。
上質な脂とシェフのセンスがキラリと光る! 幻の豚を使った「自家製スパイスソーセージ」
お待ちかねのメインディッシュは「幸福豚」を使用した手づくりソーセージ。腕肉などをミンチマシーンで粗挽きにし、ほろ苦くなるまでから煎りしたクミンとフェネグリークで香りをつけている。今回は自然な酸味を利かせるため、ネパール産の乾燥発酵青菜「グンドゥルック」も加えたという。
「幸福豚」の質のいい旨みと、その輪郭を際立たせる複雑かつ心地よい酸味が印象的だ。調味料から「自然なものを」と厳選を重ねているからこそ、これだけ素材の味を活かした料理が作れるのだろう。
上松シェフが手がける料理に共通して言えるのが「優しくておいしい」こと。派手な香りや味付けに頼らず、素材の本質的な魅力を引き出し、シンプルにおいしく、驚きもある、なおかつ自然派ワインにピッタリな料理に仕上げている。
スタンディングで手軽にハイセンスな料理と自然派ワインが楽しめる「キッチン かねじょう」の登場により、六号通り商店街の魅力も一段と高まった。遠方から足を運ぶ価値は十二分にあるが、予約はできないため「ぜひ週末の昼飲みで」商店街の散策と合わせて楽しんでいただきたい。