「香川県産極上レモン(無農薬・有機栽培)とパルミジャーノ・レッジャーノのスパゲッティ」1,518円(ランチ価格)

〈 これが推し麺! 〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、食通が「これぞ! 」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、食にまつわるコンテンツも多数手がける放送作家、塩沢航さんがおすすめする横浜の隠れ家的イタリアン「ビオステリア コマキネ」。「具材も味変も必要ないほど隙がない」と絶賛する、レモンのスパゲッティをご紹介しよう。

教えてくれる人

塩沢 航

小山薫堂事務所「N35」の放送作家。1975年生まれ。師匠・小山薫堂の一番弟子にして、師匠譲りのグルメ作家としておなじみ。主な担当番組は「アナザースカイ」「オモウマい店」「有吉くんの正直さんぽ」など。「パレ・ド・Z」「リモートシェフ」など食にまつわるコンテンツも多数担当している。

高い志を持つ生産者から届く希少な食材で、五感が喜ぶ一皿を

横浜市南区に乗り入れる市営地下鉄ブルーライン蒔田駅。駅前の大通り、鎌倉街道を1本それると集合住宅が多く立ち並び、横浜のベッドタウンらしい閑静な住宅地が広がる。

蒔田駅から徒歩1分、静かな路地に「ビオステリア コマキネ」は佇む。「ビオステリア」は「オーガニック」「有機」などの意味をもつ「ビオ(Bio)」と、イタリア語で「食堂」「台所」という意味の「オステリア(Osteria)」を組み合わせた言葉だ。

レトロで洒落たデザインが目を引くウインドウ

店名が示すとおり、使用する食材のほとんどが有機や無農薬。肉や魚は、ホルモン剤などは極力使わず自然な形で育ったもの、炭は紀州の備長炭を、塩などの調味料も自然のものを選んで使う。

 

塩沢さん

食肉料理人集団「ELEZO」の代表である佐々木さんに、うちが肉を卸している素晴らしい店があるので、ぜひ食べに行ってほしいと言われたのが数年前。実際訪れると、肉だけでなく魚、野菜、すべての素材への敬意に満ちた志ある店でした。これだけの食材を集め、ていねいな仕事を積み上げる店が、横浜、それも繁華街ではなく住宅街でやっているということに驚かされました。

「両親が38年前に下北沢でイタリアンの店を出したのが始まりで、1984年から現在地で営業しています。時代の移り変わりもあり、少しでも体にいい、自分たちが本当においしいと感じるもの、五感が喜ぶような料理をお出ししたいと、無農薬や有機にこだわるスタイルに切り替えました」

こう話すのは、オーナーシェフの父・隆俊さんとともに厨房に立つシェフの駒木根一樹さんだ。

ライブ感のあるオープンキッチンに立つ駒木根さん親子。カウンターには全国各地の生産者直送の有機野菜や柑橘類などが並ぶ

そんなこだわりの食材に不可欠なのは、北海道や淡路島、瀬戸内など全国各地に広がる、高い志を持つ生産者とのつながりだ。

「人としていいお付き合いを重ねることで築き上げた信頼関係で、県内ではほとんどお目にかかれないような、数々の希少な食材が届きます。それらを使った料理をお客様に召し上がっていただくことで、生産者の思いを届けられれば」と一樹さん。

きっかけは香川県で丁寧に作られた無農薬・有機栽培レモンとの出合い

生産者から届いたもぎたてのレモン。農作物を育てる際に発生する害虫を引き寄せる植物、バンカープランツを組み合わせて有機栽培され、無農薬であっても色や見た目など品質に一切の妥協はないという

「ビオステリア コマキネ」のレモンのスパゲッティが誕生するきっかけとなったのが、10年以上前に香川県のタコ漁師から紹介された無農薬・有機栽培レモンの生産者だ。

「出合ったのは、酸味が強すぎず、香り豊かでジューシーで、世界一と言われるイタリア・アマルフィ産のレモンを超えるような極上のレモン。このレモンで何か作れないかと、イタリア・シチリア島で親しまれているレモンのパスタをコマキネ風にアレンジして提供したのが始まりです」(一樹さん)

気候などの関係もあり、国産レモンは通年生産できるわけではなく、どうしても収穫できない時期があるそうだが「生産者さんが“コマキネの木”を確保してくれ、無農薬のおいしいレモンがありがたいことに一年中手に入ります」と一樹さん。

 

塩沢さん

レモンは皮までおいしく、安心していただけるものとのこと。それが、酸味だけでなく苦味ももたらし、大味にならないよう皿を引き締めています。