食べ方1 かけうどんをそのまま食べる
まずはかけうどんをそのまま素うどんの状態でいただこう。キンキンに冷えたかけつゆは出汁のうま味がしっかりと立っていることに驚く。麺には弾力があり、口の中で跳ねながらモチモチと心地よい。噛むたびにじわじわと甘みを増し、つるりとなめらかにのどを通っていく。
塩沢さん
この透き通った琥珀色の液体には魔物が棲んでいる。いりこ、真昆布、かつお節、さば節が手を取り合って、うま味の底なし沼に引きずり込む。温と冷、両方いただいたが、冷の方が、うま味をよりシャープに感じられるような気がします。常温に戻るにつれ、香りがさらに立つのも秀逸。エッジが立った美しい麺は、しっかりとコシがあり、噛めば噛むほど独特の甘みが広がります。
食べ方2 特製のつけだれで食べる
かけうどんを数口ほど堪能したら、次は麺を器からひっぱり、つけだれにつけていただくのが第二の食べ方。いりこ醤油がベースのつけだれには、ねぎ、かつお節、のり、しょうが、ごま、しそといった薬味類、そして温泉卵とかしわ天が入り、盛りだくさんの内容だ。中でも注目したいのは一風変わった薬味の「いりこ揚げ」。
「いりこ揚げとは、いりこを揚げて細かく砕いたオリジナルの薬味です。うま味が強く、ザクザクとした食感に仕上げています」(山縣さん)
塩沢さん
シグネチャーの「AGATAうどん」は、出汁に浸った状態のまま食べても、十二分においしいのですが、いりこ醤油に、揚げたいりこ(これが素晴らしい)、かしわ天、温泉卵からなるつけだれにくぐらせると、うま味が爆発。混ぜ方とバランスによって味が変わるので、食べる側にも想像力が求められます。
つけだれを豪快に混ぜてから食すのもよし、少しずつ混ぜながら味わいを変化させていくのもよし。最後は食す客の手で味が決まることになるが、これがどう食べても美味! パンチのあるいりこ揚げのうま味が際立ちつつ、さまざまな食材が麺とからみ、複雑なおいしさを保ちながらも口内で調和していくのがたまらない。
食べ方3 ご飯を投入して〆る
麺を完食すると、少しつけだれが残るようになっている。そこで、一口サイズのご飯を入れてフィニッシュだ。ほんのりゆず酢がかかったご飯とつけだれが混ざりあい、これもまた病みつきになる。
塩さわさん
余ったつけ汁用に一口ご飯を用意しているというのも心憎い。隙がない。
絶品うどんから立ちのぼるのは店主の哲学
「うどんAGATA」は駅から離れた場所にありながら、ここでしか食べられないオリジナルのうどんを求める客が行列をなす店となっている。店主・山縣さんはどこかの有名店に入り、修業をしたわけではない。だが、それが功を奏した。この独創性あふれる「AGATAうどん」は師匠ありきのうどん道ではたどり着かない逸品なのだ。
「塩沢さんにクリエイティブなうどんとほめられたのがうれしかったなぁ」と山縣さんは言う。食材も、作り方も、食べ方も、すべてが唯一無二。それは誰に頼ることもなく、おいしいうどんを究めるという一本の正義を追求した結果なのだ。大磯「うどんAGATA」でその誇りと美学に触れてみてはいかがだろう。