TOKYO HIP BAR

Vol.11 今年生まれた、未来につづく“定番”となるカクテル。

その時代の想いが込められて

愛され続ける定番カクテル

 

新しいものを作ることはできても、定番を作るというのは難しいもの。カクテルの世界も同様で、人々に愛されているカクテルは古き良き時代に作られたものが多いものです。でもそのカクテルも誕生のときは、その時代の誰かの熱い想いやきっかけから作られていたはず。例えば、マルガリータはLAのバーテンダー、ジャン・デュレッサーが、流れ弾で亡くなった若き日の恋人を想って作ったもので、ダイキリはキューバのダイキリ鉱山で暑さをしのぐために飲んでいたカクテルを、同鉱山で働くアメリカ人、ジェニングス・コックスが命名したものと言われています。

 

 

今からでもそうした今後100年に渡って愛されるような定番カクテルは作れないか。そんな想いを形にしようとしているカクテルの大会が、バカルディ主催のカクテルコンペティションです。そして次世代の定番となるべく、今年の世界大会の日本代表に選ばれたカクテルが、横浜「BAR Day Cocktail」の佐藤健太郎氏による「マリエル」でした。

 

 

マリエルはキューバの港町の名前であり、アメリカ国交回復に向けて、世界からの期待を担う場所。そこに同様に大きな変革の地であった横浜を重ね合わせ、クラシックカクテル「ヨコハマ」へのオマージュとしてこのカクテルは生まれました。

 

 

自身も横浜生まれ横浜育ちである佐藤氏にとっても、「ヨコハマ」は大切なカクテルのひとつ。ジンとウォッカを使うという横浜らしいミーハーさのある「ヨコハマ」を、キューバのお酒、ラムに変換し、今の時代に好まれる味わいに調整されました。バカルディラムにココナッツウォーター、オレンジジュース、蜂蜜、アブサン、シナモンパウダー。世界のどこでも材料が手に入り、味が決まりやすいので、定番として世界中で愛される要素を備えています。

 

 

“日本代表カクテル”が

熱い想いとともに世界へ

 

世界大会までの準備期間中、佐藤氏は日本各地や上海など港町でゲストバーテンダーとしてバーに入り、ひとりひとりのバーテンダーを通じて、カクテルを広めていきました。その想いが届き、世界大会前には多くのバーテンダーがマリエルを作り、世界ではベスト3という成績に。世界優勝には至らなかったものの、大会前にはすでに多くのバーテンダーを通じて「マリエル」は定番カクテルとなっていたのでした。

 

 

佐藤さんのお店には、世界大会の経験を聞きに多くのバーファンや、バーテンダーが集まり、マリエルのあるこのバーはさながら世界へ開ける港のような存在になっています。同時代のバーテンダーが生み出した、未来へつづく定番カクテルをどうぞお楽しみください。