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特に感動したのはこの4品!

赤いフルーツを使った新感覚のガスパチョ、「メニュスペチャーレ」

スイカ、イチゴ、フランボワーズといった赤い果実と、桃、フルーツトマト、バジル、赤玉ねぎ、しょうがなどで作った「ガスパチョ」。何がベースなのかわからないほどの複雑妙味がどれだけ舌を喜ばせてくれることか。こんなに多種多様な味わいをストラッチャテッラチーズで調和させ、「おいしい!」と言わせる杉本さんの腕前、お見事です。

最後に胡椒で味を引き締めます

フルーツのガスパチョというものがイタリア料理にあるのか尋ねると「イタリア修業時代にシェフから教わったレシピを日本のおいしいフルーツで作ってみました。日によってフルーツが替わるので、五味の足し引きで調整しています」と杉本さん。最初にイチゴの味がしたかと思えば甘みもあるし、最後にフワッと桃の香りがしました。その後、フルーツやチーズを一緒に食べると複雑に絡み合っていた味が一つにまとまる。なんてすごいガスパチョを作ってくれたものでしょう。

 

高橋さん

スープを口に入れた時に「なんじゃ、こりゃ〜」と目が覚めるようでした。食べるごとにいくつもの味と香りが広がります。とにかくわかることは“ただひたすらおいしい!”です。

「スズキ フリット ディルタルタル」。グリーンのタルタルが夏を感じさせるフリット

目にも鮮やかで心ときめくこの皿は「鱸のフリット」です。まずは何もつけずにひと口。切ってみると湯気が立ちのぼり、中から熱々でふわっとした身の厚い鱸が現れます。カリッとした衣との食感のコントラストが楽しい! タルタルはゆで卵とマヨネーズのまったり感から顔を出す酸味が心地よく、フリットにピッタリ!

 

高橋さん

カリッカリの衣が好きな私にとってこれはまさに完璧なフリット。前回の「サルサヴェルデソース」も秀逸でしたが、この「ディルマヨタルタル」は揚げ物好きにはたまらない組み合わせです。

「トロフィエ ジェノベーゼ」。チーズのソースを添えて、一皿で二度おいしい!

リグーリア州の郷土料理であるジェノベーゼにはインゲンとジャガイモが定番ですが、こちらはジャガイモではなくつぶ貝を入れた「杉本流ジェノベーゼ」です。「つぶ貝のクニュクニュした食感と弾力をトロフィエと合わせたらおもしろいかなと思って」と言うように、これは作りたてパスタの特性を存分に活かした料理です。トロフィエは作りたてだからこそのこの食感、咀嚼するのが楽しくなります。

 

高橋さん

手打ちパスタのおいしさもさることながら、さすがだなと思ったのがチーズソースを添えたこと。ジェノベーゼだけでも十分なのにこのソースで2種類のパスタを食べたくらいの“味変力”があります。

「タリオリーニ ブラウンマッシュルーム」。見た目のシンプルさとは真逆の複雑妙味

「トリュフじゃないパスタを作りたかった」という思いから完成したブラウンマッシュルームのパスタ。マッシュルームとブロードを75℃で3時間ほど煮込んだ出汁をギューッと搾ると、おいしいマッシュルームのエキスができます。そこに生クリームとほんの少しのバター、そしてすりおろしたマッシュルームを加えたソースにタリオリーニを絡め、仕上げは生のマッシュルームを削りかけました。

“ザ・イタリアン”がイノベーティブへ!

なんということでしょうか! ソースはマッシュルーム、生クリーム、バターだけというシンプルの極みなのに、この幾重にも広がる奥深い味わいと香りは! これは一瞬にして虜にさせるパワーがあります。

 

高橋さん

イタリア伝統料理にストーリーのあるマッシュルームの調理法という“杉本イズム”をプラスした新しいイタリア料理の誕生です! これこそが杉本さんの真骨頂と言えるでしょう。

その道のプロに「すごいね!」と言わせる店

杉本さんの料理に魅了されたプロフェッショナルたちがサインしていきます

「飯倉の『キャンティ』が当時、手に入る日本の食材でなんとかイタリア料理の入り口を作ってくれて、次は諸先輩方がイタリアで学んだ本場の料理を持ち帰り、日本で再現してくれました。これから僕たちは“+αのイタリア料理”を作っていかなければと思うんです」と話す杉本さんの料理を食して感じたのは、店名の意味通りの“職人魂”。

惚れ惚れするワインが揃うセラー

厳選した食材とそれらを作る生産者、完璧な味を提供するために整えられた厨房、料理を引き立てる空間とワイン……、この店には様々な職人たちが関わっています。

「ワインも食材もカトラリーも食器も、店舗デザインに至るまで来店してくれたそれぞれのプロから『すごいね』って言ってもらえます。だから料理を作る自分も永遠に職人であり続けたい」と言う杉本さんは、記憶にある味と未知の味を共存させた料理で魅了し続けるのです。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

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撮影:溝口智彦
文:高橋綾子、食べログマガジン編集部