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コース仕立てのメニューから渾身の3串をセレクト
「焼鳥 鶉」では、熟成を掛けた厳選鳥をメインに、季節の食材による和の一品料理を組み合わせた3つのコース料理を用意する。価格は「厳選鶏のプリフィックスコース」9,800円、「厳選鶏のフルコース」15,600円、「厳選鶏の食べ比べフルコース」22,000円。
今回は、梅園さんの技が余すところなく発揮された串の中から、森脇さんおすすめの3串をご紹介。
まるでマシュマロ!? な「ささみ焼き」
森脇さんが真っ先に挙げてくれたのが「ささみ焼き」だ。わさび、キャビアなどトッピングのバリエーションがいくつかあるが、この日出してくれたのはカラスミのせ。昆布だしに3時間ほど浸してから焼くので、程よいうまみと塩味があり、白くふっくらした見た目は、まるでマシュマロのよう。
昆布締めにして焼いたこともあるそうだが、それだと水分が抜けすぎておいしくない。「そこで思いついたのが、昆布塩水に浸す方法です。加水されているので強火で焼いてもしっとり仕上がり、昆布の塩味があるので焼くときに塩は打ちません」
森脇さん
昆布だしに浸しているせいか、たおやかなうまみを感じます。鳥は、比内地鶏、黒さつま地鶏、甲斐路軍鶏、ほろほろ鳥などを、その時々で使い分けるという鳥フェチぶりにもご注目。
1羽で1串しか作れない「うちももの熟成首皮巻き」
2串目のおすすめは、希少部位“アカ”を味わう「うちももの熟成首皮巻き」だ。アカとは内ももの肉厚な赤身の部分を指し、両脚に1つずつしかない。店ではこれを2個打ちにしているため、1羽から作れるのは1串のみ、まさに希少な一本だ。
「アカを首皮で巻いているのは、鶏肌の粒々感がとてもきれいなので。鶏皮を熟成させた方が、粒々がよく出ます。ここまでこだわる人はあまりいないかもしれませんね」と梅園さん。焼いているとパチパチという音がしてくるが、これは首皮でしか聞くことができないと教えてくれた。
森脇さん
パリッと焼き上がった皮とジューシーなもも肉のコントラストが美味。
希少部位の脂や肉汁をネギが受け止める「ソリレスのねぎま」
3串目に挙げてくれたのは、これまた希少部位のソリレスに江戸野菜の千寿ネギを組み合わせた一串。ソリレスは、もも肉の付け根のくぼみにあるポコッとした部分。こちらは1個打ちで提供するため1羽で作れるのはわずか2串ということになる。
「焼き場では、ソリレスのおいしい脂や肉汁をネギの断面で受け、皮目を焼いているときは、ネギの甘みを含んだ脂を肉にまとわせるように。これを交互に繰り返し焼いていくことで、鶏とネギのおいしさが渾然一体になります」と梅園さん。
皮は焼くと縮むため、串を打つ時点で鶏とネギの断面がきれいにそろう必要があり、焼いている間は塩を振って浸透圧でいらない脂を抜くなど、何気なく焼いているようで実は、この一串のために、いかに隅々まで気を配っているかを知れば、味わいもより深く濃くなっていく。
コラボイベントやコンペティションへの挑戦も
「鳥が好きで、焼き鳥職人として誰にも負けないという気持ちで、自信を持っておいしいと思ってもらえるものを提供し、それを喜んで食べてくださるお客様がいることは最高にしあわせ」としつつ、さまざまなことにチャレンジし、自分を知ってもらいたいとアグレッシブな思いを語る梅園さん。
自店で行われるカクテルとのペアリング、フレンチシェフとのコラボイベントを控える他、35歳以下の料理人が参加する日本最大級のコンペティション「RED U-35」への再挑戦、ゆくゆくはミシュランの星を取りたいなど、若者らしいチャレンジングな目標を明確に掲げ、実に頼もしい限りだ。
ちなみに「焼鳥 鶉」が入る大樹ビルには、「鮨 波残」、中華「鶫(つぐみ)」や、もんじゃ「萬雷(ばんらい)」と系列店が入っており、一つのビル内で“大人の横丁”のようにはしごをして、食事やお酒を楽しめるのも魅力的である。
ブルゴーニュを中心にそろえるワインは、ロンドンの星付きレストランで修業したソムリエでもあるオーナーがセレクト、中国政府認定の茶藝師が食事や体調に合わせたお茶を提案するなど、ここでの食事をより楽しく心地よいものにしてくれる。席は、空きがあれば当日予約も可能、まだあまり知られていない今のうちにぜひ足を運んでみてほしい。
※価格はすべて税込