店頭でも自宅でも、思い思いに懐かしの味を

製造所から運ばれてきたフライケーキは、店頭で次々と揚げられていきます。揚げる前に、生地を軽く潰すのがおいしさを生み出すポイント。平たくすることで火の通りが均一になり、よりカリッとした口当たりが生まれます。揚げ油に使うのは、加熱用として使われる白絞油(しらしめゆ)。サラダ油に比べ精製度が低いため、風味やコクがあるのだそう。ジュワジュワと目の前で揚げられていく様子に、なんとも言えずワクワクします。

1個だけ注文すると、包み紙に挟んだものを手渡してくれます。揚げてからちょっと時間をおいたものをくれるので、できたてだけれどちょうどいい熱さ! まずはその場で割ってみると、中からホクホクの餡子が顔をのぞかせます。ひと口かじると、カリッサクッの後にくるフワッと感。にじみ出てくる油とアツアツの餡子が混ざり合い、口いっぱいに甘さが広がります。冷たい牛乳や、ミルクたっぷりのカフェオレがよく合うそうです。

お土産用に購入するなら、5個入りや10個入りのまとめ買いがおすすめ。レトロな包み紙にくるんでくれるのも、昔ながらの趣があって楽しい気持ちに。常連さんは一度に数十個購入して、人に配ったり、冷凍庫で保管して少しずつ食べたりするのだそう。自宅で温め直すなら、レンジよりもトースターのほうがより揚げたてに近い食感が味わえます。
家族で一丸となり、受け継がれた味を守っていく

店頭で包装を担当するのは、修一さんと由美さんの長女・明子(あきこ)さん。印象に残っているお客さんについて尋ねると「“街にお酒を飲みに行ったお父さんが、お土産にいつもここのフライケーキを買って帰ってきてくれるのがうれしかった”と話してくれるお客さんがいましたね」と、にっこり。多くの人の心に色々な思い出とともに刻まれている味なんだなと、なんだかほっこりしました。

さらに14年前からは、3代目となる長男の悠介(ゆうすけ)さんが加わり、ますますの活気を見せています。「正直、最近の原料の値上がりがかなりつらいんですが、なんとか踏ん張っています。14年前に店を継ごうとここに帰ってきた時、常連さんの一人に“3代目が頑張ってくれるなら、私は死ぬまでここのフライケーキが食べられるわね”ってうれしそうに言ってもらったんです。その時の笑顔が忘れられないから、まだまだ頑張ろうって思えます」

目指すは「小さな子が100円玉を握りしめてフライケーキを買いに来ても、おつりを渡せるような価格で提供し続けること」。修一さん、由美さん、悠介さん、明子さんは、家族一丸となり、呉のローカルフードを守り続けています。
※価格はすべて税込です。
※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。
※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
撮影:岸副正樹
文:浅井ゆかり