全く新しい「ワインカクテル」
さて、興味津々のワインカクテルであるが、まさしく三人の英知と才覚が一つになって花開いたものといえる。その製作過程を後閑氏に聞いた。まず後閑氏が、米澤氏の料理を試食して、カクテルのイメージをふくらませる。そこに、メキシコシティ、アテネなど、料理の内容や思いから浮かぶ、都市の名前をつける。そして、その土地から得られるインスピレーションで“カクテル”――リキュールや濾過した素材やハーブなどを混ぜ合わせた液体――を作る。
メキシコシティであれば、テキーラを使用したり、エジンバラならスコッチを加えたり、といった具合だ。次に、大越氏が“カクテル”を一つ一つ試飲し、これにはNZのソーヴィニヨンブラン、フランスのシャルドネ、というように合わせるワインを決めていく。
そして最終的に、“カクテル”に加えてスワリングし、後閑氏と二人で試飲し、ワインカクテルとして採用か否かを決めていくのだそうだ。ちなみに、店名の「swrl.」はワインをテイスティングするときにグラスを回す仕草、このスワリング(swirling)からきているのだという。
「ワインと合わせてみて、ダメだったというものはほとんどありませんでした。それどころか、ワイン単体より料理に合うこともあるという、新たな発見もありました。“カクテル”とワインの比率により、ワイン寄りのものもあれば、カクテル寄りのものもあるのですが、そのどれもが、ワインの魅力をきちんと伝えながら、カクテルとして成立しています。大越さん、さすがだなと思いました。カクテルの世界観がぐっと広がりました」と、後閑さんもも手応えの大きさを語ってくれた。
ワクワクする大人の社交場
今後「swrl.」は、食べておいしく、飲んで楽しい、驚きと遊び心に満ちた、大人の社交場となるだろう。金曜、土曜はレイトナイトデイとして深夜3時まで営業するとのことで、東京の街の景気回復にも一役買いそうだ。
「日本では、バー好きの人と、ワイン好きの人が、真っ二つに分かれているのが現状です。この店の料理とワインカクテルのペアリングを楽しむことで、その垣根を取り払い、それぞれの世界に、興味を持つきっかけになってもらえたら、そんな気持ちもあって始めた店です。ぜひ、気軽に楽しんでもらいたいですね」と後閑氏は結んだ。
■テイスティングメニュー 7コース 6,380円 ペアリング 4,620円(共に税込)