フードライター厳選。今、行っておくべき中国料理店はこの3軒!

食べログ 中国料理 TOKYO 百名店 2021」「食べログ 中国料理 EAST 百名店 2021」「食べログ 中国料理 WEST 百名店 2021」が発表された。 本稿では、連載「森脇慶子のココに注目」でお馴染み、フードライターの森脇慶子さんに、百名店選出店から今最も行っておくべき3軒を教えてもらった。

教えてくれる人

森脇慶子

「dancyu」や女性誌、グルメサイトなどで広く活躍するフードライター。感動の一皿との出合いを求めて、取材はもちろんプライベートでも食べ歩きを欠かさない。特に食指が動く料理はスープ。著書に「東京最高のレストラン(共著)」(ぴあ)、「行列レストランのまかないレシピ」(ぴあ)ほか。

1. 正宗北京料理を味わえる「北京遊膳」(荻窪)

今、最も行っておくべき一軒と言えば、まずここ。荻窪「北京遊膳」の名を挙げたい。オープンして30年、裏路地に佇む町中華の体ながら、昨今では絶滅危惧種とも言える正宗北京料理を味わえる一軒だ。オーナーシェフの斎藤永徳さんは、この道五十余年。山の上ホテルの「新北京」で10年間みっちりと北京料理を身につけ、料理長まで務めた経歴の持ち主だ。

宮廷料理としても発達してきた一面のある北京料理は、繊細で素材の持ち味を生かした淡白な味を特徴とする反面、寒さの厳しい北に位置するため、醤油や味噌を使った濃厚な味つけの料理も多い。また、米が育たないため餃子や万頭といった粉物を主食としているのも特色の一つだろう。

中でも有名な料理は“北京ダック”。ここ「北京遊膳」で名物の一つでもあり、予約をすれば、焼き色も見事な北京ダックの逸品を味わえる。特製の甘味噌をつけて食べるそれは、パリッとした皮も香ばしく、かみしめるほどにダックの脂と味噌が芳ばしさを伴って、口中で軽快な調和を見せる。

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「北京遊膳」の北京ダック   出典: K-BIGSTONEさん

また、北京の古典料理“賽螃蟹”(サイパンシェ)(白身魚と卵白のふわふわ炒め)も、ここに来たならぜひ食べておきたい一皿。低温からゆっくりと火を入れた卵白は、ふうわりとしていながらもねっとりとした舌触りが官能的。トロリとかけた卵黄ソースと共に味わえば、蟹を使っていないにもかかわらず、不思議に蟹の味を感じさせる。蟹に匹敵するという意味の“賽螃蟹”の名の由来でもある。冬の白菜料理や夏の醋滷麺(ツゥルゥメン)など季節の味も楽しみだ。

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「北京遊膳」の賽螃蟹   出典: mobarano-torakichiさん

2. “今の香港の味”を提供「赤坂璃宮」(銀座)

今年で25周年を迎える「赤坂璃宮」。日本にあって、香港の味を楽しめる数少ない一軒と言えるだろう。それも、中華料理界の重鎮にしてオーナーシェフである譚彦彬氏のたゆまぬ努力の賜物だ。

新型コロナ流行前までは年に数回香港まで足を運び、常に“今の香港の味”を体感。また、現地でしか手に入らない調味料や食材を、自らの目で選んで調達。今では稀少な魚の浮袋やアオザメのフカヒレなど高級乾貨を用いた煮込み料理や煲仔飯(ボウジャイハン・香港風炊き込みご飯)等々、現地さながらの味を楽しませてくれる。

中でも、金華ハムの旨味が深みのある味わいを醸し出す上湯は、譚シェフ肝入りの逸品。そのスープで煮込むフカヒレの煮込みは、まさに「赤坂璃宮」のスペシャリテと言ってもいいだろう。雲井窯・中川一辺陶氏に特注した陶版で登場するそれは、一度は食べてみたい銘品だ。

「赤坂璃宮」のフカヒレの姿煮 撮影:森脇慶子

また、焼き物名人、梁偉康シェフの手になる叉焼や豚バラ肉のクリスピー焼き、乳バトの唐揚げといった“焼味”も、本場を凌ぐおいしさ。フレンチやイタリアンのシェフ達にもファンの多い人気メニューだ。

辣油は飲み物
「赤坂璃宮」豚バラ肉のクリスピー焼き   出典:辣油は飲み物さん

広東料理の伝統料理はしっかりと踏襲しつつも、古い料理にだけ固執するのではなく、常に新しい味を求めていこうと考えるのが譚シェフのスタンス。寿司屋の蒸し鮑にヒントを得た“鮮鮑の煮込み”や、発酵バターで風味とコクをプラスした“冬瓜と海老団子の煮込み”など、古くて新しいオリジナルの味が楽しみだ。

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「赤坂璃宮」璃宮特製蝦夷アワビの濃厚ソース煮込み   出典:asama1948さん

3. フレンチや和の要素を取り入れた中国料理「ShinoiS」(白金台)

“現代だから、今だから、私だからできる料理を”との思いを込め、店名を「ShinoiS(シノワ)」(「中国の」を意味する「シノワ」、「Shino is」「篠原の料理は」)にしたと語るオーナーシェフの篠原裕幸氏。

広東料理と香港が大好きで、19歳でこの世界に入ってからは広東料理ばかりを追いかけてきた篠原シェフだが、2016年、上海のレストランのエグゼクティブシェフに就任した折、大陸の各地方料理を体験。その奥深さにインスパイアされたとか。

それゆえ、ここでは伝統の中国料理に敬意を払いつつ、これまで培ってきた中華のテクニックに加えフレンチや和の手法もさりげなく取り入れた篠原流の新しい中国料理を提供している。

全9品ほどから成るコースでは、時に各地方のクロスオーバーあり、時に古典料理の再構築ありと変幻自在。中でも、篠原シェフならではのシグネチャーメニューは“真味干鮑”、干し鮑の煮込みだろう。本来は、オイスターソースや上湯で煮込むところを、篠原シェフは調味料を一切使わず干し鮑を戻した水のみで煮込むことで、鮑本来のピュアな旨味をストレートに引き出している。

凝縮した昆布を思わせる滋味がじんわり味蕾に染み渡っていく。清らかな水に恵まれた日本だからこそ生まれた逸品だろう。

 藤崎まり子
「ShinoiS」の真味干鮑   出典: 藤崎まり子さん

また、前菜に登場する“芝士春巻”も、同店の名刺代わりの一皿。テクスチャーの異なる2種のフカヒレだけを包んで揚げた贅沢さに加え、燻製にかけたキャビアとコンテチーズをあしらった一捻りも心憎いばかりだ。場所は白金台。路地を入ったビルの2階に潜む隠れ家のような佇まいも興をそそる、食通垂涎の一軒だ。

カフェモカ男
「ShinoiS」の芝士春巻   出典:カフェモカ男さん

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文:森脇慶子