【現役若手パティシエのスイーツフィールドワーク】
Vol.1 トシ・ヨロイヅカ 東京
SHO(以下S):皆さん初めまして。都内でパティシエをしているSHOです。KANAとは調理系の専門学校時代の同級生で、お店は別ですが二人とも現在修行中です。毎月休みを合わせて気になるお店のスイーツを食べ歩いています。単においしいまずいだけでなく、パティシエならではの視点でお店を見ているのでそれをレポートさせていただきます。お店選びの参考になればうれしいです!
KANA(以下K):今日は京橋エドグランに昨年オープンしたトシ・ヨロイヅカ 東京に行ってきました。昨年オープンなのになぜ今?と思う方もいると思いますが、オープン直後のお店は混雑による忙しさからオペレーションが安定してなかったりするんです。
S:自分たちもオープン時はバタバタしているからわかるよね。どこのお店にも言えることだと思うけど、このお店のようなカウンター・デザートのお店は一つ一つ作るのに集中力が要るから、客数が落ち着いている曜日や時間帯に行ったほうが安定したサービスを受けられることが多いんだよね。
K:今日オーダーしたのは3,000円のグランドメニュー。アミューズ(前菜)が「ローズマリー風味のマッシュポテト」で、アヴァンデセール(メインのデザートの前の一皿)が「フルーツトマトとオレンジのカッペリーニ」(※現在は終了)、グランデセール(メインのデザート)はSHOが「パイナップルのスフレ」で私が「すいかのミルフィーユ」(※現在は終了)。
S:前菜はしょっぱくてパスタは甘酸っぱくて、スイーツがしっかり甘いという構成。他のお店によくある甘いものだけのコースじゃないのがいいよね。コースが食べられるのはこの旗艦店だけなんだって。コースのメインのデザートは一階で出されるケーキよりも大きめだから、たいていの人はコースで十分おなかいっぱいになると思う。
K:私がメインデザートで頼んだ「すいかのミルフィーユ」は本当においしかった! すいかをつかったスイーツって今ではかなりメジャーになってきたけど、やっぱりすいか自体の味が薄いのでぼんやりしてしまいがち。こちらのは、すいかの美味しさを存分に引き出している上にいろんな食感が楽しめて、さすがという感じ。
S:和梨など日本の果物は基本的にそのまま食べて美味しいように品種改良されているので、水分が多くて香りが強くないからケーキには使いにくいんだよね。ケーキに使ったとしても、結局そのフルーツをメインにしたタルトなどにすることが多いよね。その点このすいかのミルフィーユは、もちろんメインの食材なんだけど、きちんと構成の一部として、全体を食べた時のバランスを取るためのパーツとしても成り立っているのがすごいと思った! ミルフィーユの生地がすいかの汁を吸って溶けて、それが違和感なく口の中に広がっていったよね。上に雪塩のアイスクリームがのっているんだけど、それが上手にコクも出してる!
K:雪塩のアイスそのものもすいかもちゃんとおいしいし、すいかの種が全部取ってあってわずらわしい手間がなく食べられるのも気が利いてる。
S:僕が頼んだパイナップルのスフレは、目の前でスフレを立ててくれて、キウイとチアシードのソースを好みでかけていただくもの。
K:スフレっていつも期待して食べるんだけど甘すぎるものが多くて、当たりが少ないんだよね。でもこれは甘すぎなくて食べやすいし、ココット皿にクレームパティシエール(カスタードクリーム)とパイナップルの果肉が入っていて、最後まで食べる前に飽きてしまうことが多かったスフレに一工夫してあるのがいいよね! オーブンで焼く前にココット部分を湯煎で温めていて、なぜ?と思
S:調理するスタッフの人員が足りないとつい省略しがちな、最も良い状態でお客様に提供するためのひと手間を
K:2階でコースをしっかり食べたのに、1階のケーキも気になって“追いデザート”しちゃった(笑)。
S:タルトのようなこちらは、トシ・ヨロイヅカ 東京限定の「ピュイダムール」。これは愛の泉っていう意味なんだって。クラシックなフランス菓子だけど手間がかかるわりに、
トシ・ヨロヅカ 東京では、1Fでクリームの絞りや、
K:たいていのお店ではそこまで手間をかける余力がなかったり、
S:真摯なお店づくりをしているとすごく感じた。トシ・ヨロイヅカはいろいろな業種をもっているけれど、本質的なところをちゃんと丁寧にやっている感じがした。すごく勉強になりました! 土日は混みそうだから、また平日の午後にゆっくり来ようかな。