【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレー#139】「カリー プンジェ」

カレーと言えば昔は小麦粉のルウを使って作った洋食系のカレーライスか、インドカレーくらいだったのですが、今は洋食系と言っても欧風カレーもあればイタリアンのシェフが作る創作カレーもあり、インドカレーと言っても北と南では全然違うものだという認識も広まりました。それ以外にも創作系はスパイスカレーが認知され、進化し続けていて多様性がありすぎるくらいですし、現地系もインドのみならずネパール、パキスタン、スリランカ、バングラデシュと、近隣諸国をはじめ、タイやミャンマーなど東南アジアのカレーもあるとなると、既にカレーというくくりでジャンル分けすることの意味があまり無くなってきているのではないかとすら思うのです。

今回ご紹介するのはまさにそのジャンル分けの意味がないという以上に、そもそもこれはカレーなのかどうなのかという部分まで分からなくなってくるような、しかし、味は確実にカレーであり、最高においしい料理を出すお店。要町の「カリープンジェ」です。

メニューはその時々で違うのですが、今月(11月)の限定メニューである「ビリヤニ風ポロウ」1,200円がとんでもなく個性的なのです。ビリヤニとはインド亜大陸の料理で、スパイスやカレーのグレイビーを使って作った炊き込みご飯のこと。つまりはカレー炊き込みご飯とも言える料理なのですが、ポロウというのは中東版のビリヤニ的な料理のこと。インドの言葉でいうとプラオ(こちらもスパイス炊き込みご飯)に近い発音なので、その近似性が語感からもわかります。

「ビリヤニ風ポロウ」

ではビリヤニとプラオの違いは何かというとこれは諸説ありすぎて、インド人に聞いても言うことがそれぞれ違いすぎて分かりません。そもそもインドにはカレーという料理は元々なく、コルマだったりサブジだったりサンバルだったりという料理がすべて同じように見えるということで、外国人が便宜上「カレー」としたものだとも言われています。

ここまで説明しておいてなんですが、結局は結論がありません。人それぞれの感じ方で捉えれば良いのです。それがカレーなのか、はたまたカレーではないのか。自分の感覚に自信がないのであれば、お店がカレーと言っていればカレーですし、カレーではありませんと言うならカレーではないのでしょう。ちなみこのビリヤニ風ポロウ、店内のメニュー看板に「カリー」とあったのでカレーということにしておきましょうか。

前置きが長くなりましたが、このポロウがとにかくおいしいのです。長粒種のお米をビリヤニのように味付け、キーマカレーやフルーツをのせ、焼き目をつけたもの。周りには副菜が彩られています。東洋医学的考えでは、食事は五味、すなわち酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(塩味)の調和が大切といわれていますが、この料理にはそのすべてがあります。

それがバランスが良いというわけではなく、部分部分非常に尖った状態でありながら、何故か重心はしっかりと取れていて安定感があるというような絶妙さ。味だけではなく食感もバリエーションがあります。お米は「フワ」、キーマは「ムギュ」、フルーツは「ジュワ」、スパイスは「ジャリ」、焦げ目のついた部分は「サク」っと、味も食感も変化しまくり、情報量がとにかく多いのです。

食べていると「これは何なんだ?」と分からなくなり、また食べたくなる。食べれば食べるほど「結局何?」と分からなくなり、最終的には「おいしいから何でも良いか」と思えてしまうような力を持った料理なのです。どのように文章で説明しても人によって捉え方が変わってくるような料理。カレー好き、スパイス好きなら是非とも一度食べてみてほしいです。

「キーマ&スープ」

ポロウも突出していますが、以前食べた「キーマ&スープ」1,200円も非常においしいカレーでした。こちらはポロウよりはかなり分かりやすく、キーマカレーとラッサム的なスープカレーを合わせて食べるスタイルでしたが、やはり副菜の個性は突出しており、唯一無二のカレーだと言えるでしょう。

「チャイ」

こちらのお店、カレーも凄いのですがそれだけで満足して帰るのはもったいないです。「チャイ」200円がとにかくおいしいのですから。カレーのお店でチャイを出す所は数多くありますが、個人的に今まで飲んだチャイの中でも五指に確実に入るおいしさです。しっかりとしていながら単調ではない奥深い甘味は、個性豊かすぎて混乱した脳内を整理してくれるような役割を果たします。

「あぁ、おいしい」

最終的にはそれに包まれるのです。このチャイに添えられたドライのレモンがまた素晴らしい。レモンをかじれば程良い酸味と、レモン自体にも甘味がついているので違う角度の甘味。そしてほのかな苦味。チャイもやはり情報量が多いのです。

マスターはこのカレーを独学で身に着けたというのですから恐れ入ります。いや、独学だからこそ自由な発想とセンスでここに辿りついたとも言えるかもしれません。カレーを作り始めたのは20年程前から。好きなお店やアジアを旅行した際に食べておいしかった料理から影響を受けて7年前に札幌から上京。イベントなどでカレーを出していたのをきっかけに今のお店をオープンし、ちょうど1周年を迎えたところ。今後は単一メニューで、今まで出したカレーを2週間くらいごとにローテーションしていく予定だそうです。

駅から近いわけでもない場所ですが、既にマニアの間では話題となっていて土日は行列もできる程。ひとつひとつ丁寧に作っているので回転が早いわけではありません。時間に余裕を持って行ってみてください。カレーの概念に変化が出てくるかもしれないくらいの衝撃が、ここにあります!

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2020年11月16日)時点の情報をもとに作成しています。